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「朔弥ちょっと怪我しすぎじゃない?そんなにヘマしてたっけ」
「…ヘマしてるつもりはないけど、護衛…ここで護衛し始めたら多くなった」

確かに前まで戦にでたとしてもここまで怪我をしたことは最初こそあったが最近はあまりなかった。
接近戦を主にしていなかったし、遠距離戦、言えば狙撃を主にしていたので全然に出ること自体がなかった。
自身の体を見れば久々に包帯でおおわれている箇所が目立つ。

「接近戦は苦手だから…」
「朔弥は狙撃手だもんね」
「直政殿に護衛から外してもらおうか、でも給金下がると困るな…いやしかし」
「傭兵なんだから文句言うなって言われるの?」
「いや、ただ直政殿に付いてこれるって理由から護衛任務を言いつかってる」
「へー朔弥意外と根性あるのね、見直したわ。じゃあ今度の戦は私が代わろうか。朔弥はそもそも雑賀なんだし狙撃の方が本領発揮ってやつでしょ?」

確かに狙撃の方が本業である。代わってもらえるなら一番だ。
しかしここには孫市がいて、本家本元の雑賀だ。その孫市がいて狙撃を行っていて元雑賀が出る幕があるだろうか。
腕を評価してくれる人がいて狙撃手として推してくている。しかし本家本元がいてそこから出た人間をそこにわざわざ配置するだろうか。

「でもその場合、その相談は誰にするのかしら」
「軍師の小十郎殿…でも直政殿との個人契約だから直政殿になるのかも」

恐らく小十郎殿に申し出ても「失礼ながらそれを私におっしゃってもお嬢様方の要望には応えられません」というのがオチだろう。
甲斐姫も「さすがに直接は言いにくいわね…」と悩み始めた。
悩むのは勝手だが、こちらにしてみれば別にどうでもいい事と言えばどうでもいい事だ。
確かに狙撃手の方がいいが、仕事には変わりない。苦手だろうが得意だろうが依頼されたことをこなすだけの傭兵だ。

「おや、女の子二人でおしゃべりかな?」
「毛利殿」
「前みたいに大殿でもいいよ朔弥」
「もう大殿ではないですが」
「あはは、そうだったね。でもそこまで他人行儀にならなくていいよ朔弥、元就殿でも私は構わないけど」
「…朔弥と元就殿は仲が良い感じだけど、どういう知り合いなんです?」
「朔弥は前毛利に出稼ぎの様な感じでいたんだよ」
「へーじゃあ朔弥って顔広いの?傭兵だし」
「それほど広くはないと思う。愛想がないし」
「腕はいいんだけどね、でも私はそんな朔弥もいいと思うよ。腕は確かだし」

なんだか含みのある物言いだが黙ってそれを受け流す。いちいち反応する事でもないし、なにより反論するつもりはない。
甲斐姫と話していた内容を甲斐姫が元就殿に話すと「私もそれは良い考えだと思うよ」同調する。なにより狙撃手の方がいいと直政殿の前で言ってた本人なので反対する理由もないのは確かだ。

「さっそく井伊殿に提案に行こうか」
「却下されると思います」
「私を誰だと思っているのかな?」
「………それ、私抜きでできませんか?」
「何言ってるの、朔弥がいなきゃ始まらないでしょ」
「嫌な予感しかない」
「嫌なら私達だけで行こうか。朔弥がいなくても私が居るから大抵の事はどうにかなると思うよ」
「うーん、朔弥の事だから朔弥がいないと…でもそれもそうよね、朔弥んも自分の口から言いにくいのは仕方がないか。だってそうやって評価されているんですもの。ようし、ここは私がいっちょやってやるわ!」

これはあまりいい予感がしないなと思いながら二人を見送る。
それが上手くいっても雑賀は孫市がいるわけだし、何よりあちらの方が大所帯だ。戦力で言えば格段で上なのは明白だ。雑賀にいた頃はそれこそ可愛がってもらった人達であり、今もまた同じ仕事が出来て嬉しいと可愛がってもらっている。

どちらに転ぶにせよ、あまり高望みはしないでおいた方がよさそうだ。

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