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三国無双4の立志モードが懐かしいと思って書いたはいいけど、リアルタイムのノリとあまりに違いすぎたのでぼつったネタです。





あの徐庶に仕官した女がいるらしい。
そんな噂話がほんの数日だけ出回った事がある。噂と言っても事実なので、話題と言った方が適切なのかもしれない。
誰かが仕官することは珍しい事ではないが、あの徐庶に。と言われるほど、徐庶という武将には誰も仕官してこなかった。
その徐庶に仕官してきたのが女だというのだから少しだけ話題に上ったのだ。
興味本位で徐庶の執務室に用がないのに立ち寄る者も居た。しかしパッとしない徐庶に似あった地味な女がいて、なんの面白みも無くすぐさま誰もが立ち去る。

「…今日は誰もいらっしゃいませんね」
「そう…だね。普段、ここに立ち寄る人はあまりいないから」
「…そうですか」
「うん…」

陽の高さから見てそろそろ昼なのだろう。近くの部屋からは昼食の為に切り上げていく気配がする。朔弥が徐庶に「そろそろ御昼食の時間のようです」と告げると、「まだ少しかかるから先に食べておいでよ。俺に構う必要なんて無いから」といつものように言われる。
徐庶と朔弥の関係が良好かと聞かれれば、恐らく悪くは無い。だが良好でもない。
朔弥が仕官してきたときには酷く怯えた、いや、戸惑っていた様子だったのだ。
それが今でも続き、もう朔弥は諦めている。一人で昼食にする事にして執務室を離れた。


だからと言って一人だけ、しかも仕官した相手を差し置いて先に食べるのは誰しも気がひけるだろう。厨房に行って二人分の食事を分けてもらい、それを持って朔弥は執務室に戻る。
もうこれも慣れたのもだ。途中すれ違う武将に「また徐庶の世話か?」とか「仕官する相手を間違えたな」と笑われるのも慣れている。

「昼をお持ちしました」
「え…!」
「温かい食べ物があるのですから、食べた方がよろしいと思います」
「で、でも…」
「後片付けは私が致しますので、どうぞ召し上がってください」

部屋を出る前にきれいにした朔弥の机の上に持ってきた昼を並べ、徐庶は戸惑いながらも自分の机に昼が乗るだけの面積を確保する。
温かい料理はほのかに湯気をあげ、器は熱を持っている。温かいからか、食欲をそそる香りが鼻をかすめ、徐庶の腹の虫が鳴いて空腹だと告げている。

「あ、ありがとう…」
「いえ、持ってきただけなので」
「君が来てくれてから、温かい料理にありつける頻度が上がったよ」
「………私は、仕官してからご飯にありつけるようになりました」

ありがとう。と言おうと思っていたのか、徐庶は開いた口を黙って閉じる。
徐庶が自分の事をあまり話さないように、朔弥も話さない。何処の出身か聞いたことがないからか、朔弥は何処の生まれだとか兄弟の話は全く持って話さない。


―――――
以上

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