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三国無双7からの文鴦が登場してます。
大丈夫な方はどうぞ





小さな子供が夏候覇の手元を真剣に見ている。その姿は実に微笑ましい。そこは綺麗な蓮華の花が群生しているのだ。

「ほら、できた」
「かこうは、すごい!」
「凄いっても、これ朔弥に教えてもらったんだぜ」
「夏候覇殿、何をされているのですか?」
「!」
「おう、文鴦。なに、子守だよ。知り合いの雑賀の」

夏候覇の手には蓮華の花で出来た花の冠。大きさを見るとそれほど大きくはなく、小ぶりだ。この子供の為に作ったのだろうというのは一目でわかる。
それにしても何故花の冠を作っているのだろうか。子守だとしても、到底花の冠を作るという遊びには結びつかない。それが王元姫や弓腰姫と名高い孫尚香という姫方や女性陣ならわかる。まずどうして花冠の作り方を知っているのだろうかという疑問さえ残る。
ふと子供を見ると、怯えて様に文鴦を見つめている。

「朔弥、そんなビビんなって。コイツは文鴦。ちょっと背が高くてびっくりしただろうが悪い奴じゃない。いい奴だよ。文鴦、コイツは雑賀の朔弥ってんだ」
「確か夏候淵将軍に居たという銃の方が雑賀だと聞いたことがあります。その繋がりですか?」
「まあそんな感じだな。俺も孫市さんには世話になったし、まあそんなこんなで」

まあ座れよ。とすすめられるままに腰を下ろした文鴦。腰を下ろしてもなお夏候覇よりも大きく、もちろん夏候覇よりも小さい朔弥には巨人のようにしか見えない。
ただ声色は至極優しく、威圧的ではないのも幸いして朔弥は必要以上にビクビクすることはなく、多少恐がってはいるが後ずさりはしていない。最近では人になれたということもあるのだろう。隠れるということはしなくなったが、はるかに大きい人には慣れていない。

「あ、そうだ朔弥。挨拶しろよ。今のうちエイギョウしておけ」
「こ、ここ…こんに、ち…は」
「これはご丁寧に、こんにちは。エイギョウとは?」
「さあ、俺もよく知らないが…朔弥がよく言ってたんだよ。『営業は大切です。次の仕事に繋がります』ってな」
「…雑賀独特のモノなのでしょうか」
「多分な」

手に持っていた花の冠をひょいと投げて朔弥の頭に乗せる。実に愛らしいではないかと二人は眺める。小さな子供はそれだけで愛らしいのに、そこにまた花が華を添える。
朔弥がその花冠に手を添えて存在を確認している姿も実に愛らしい。

「ありがとう」
「おう」
「夏候覇殿は器用なのですね」
「いやいや、これ、朔弥に散々教わってできるようになったんだよ」
「なぜ?」
「朔弥が暇つぶしに作ってて、面白そうだから。女々しいかと思ったけど、いい暇つぶしになってさー。郭准にやったらすんげぇ喜んでた」
「それはいいですね、さぞかしお喜びになられたと思います」

ここにいつもの朔弥がいたのならば「郭准殿に花の冠…?」と眉をひそめていたに違いない。最後まで言わないのは朔弥なりの優しさだとしても、他の人間がいたなら「それはちょっといただけない」と誰しもが思うか口にしている。
天然だからか、細かい事を気にしていない二人だからなのか。
朔弥は子供で難しい話はわかっていないだろうから、聞いているフリだけをしている。

「かくわい…どの?」
「そうそう。朔弥もあったことあるよな」
「しろと、くろの?」
「そうそう」
「ぐあいわるいひと…」
「あー、まあその人だな」
「よく咳き込んでらっしゃいますからね」

軽く話しているが、朔弥にとってみたら郭准は正直恐い人だ。あれだけ顔色が悪くて隈があって、咳き込んでゼーハーゼーハーいって、凄い勢いで近づいてくる。それ以上の恐怖があるだろうか。前に一度、夏候淵のところで会ったことがあるが、あれは軽く朔弥のトラウマになっている。「こわい」といわないのは少しだけ空気を読んでいるだけだ。

「文鴦も作ってみるか?意外と面白いぞ」
「ですが…」
「暇つぶしにな。女性陣に渡せば評判もいいんだぜ?」
「その様なことにお使いに?」
「朔弥がよくやってたんだよ。作った花の冠を人にやってたんだ」
「まあ、朔弥は器用で、他の花も混ぜて作ってたから見栄えがすごくいいからな…。呂布殿と一緒に居る貂蝉殿知ってるか?あの貂蝉殿に渡して呂布殿が怒らないくらいだ」
「そ、それは凄い…!」
「くだらない物を!って怒ると思えば、貂蝉殿の方がその冠を気に入って欲しがったそうだ。そうして付けたら思った以上に似合ってて、呂布殿も感心したとか」
「お会いしてみたい、その朔弥殿に…」

朔弥と呼ばれ、朔弥が反応したが夏候覇は手を振って違う違うと朔弥に示す。本当は朔弥=朔弥だが、ややこしいからというか候覇の配慮だ。説明したところで「は?」といわれるのがオチだ。文鴦はそうは言わないかもしれないが、元々朔弥を知っている人間には「妲己が」の一言で終わるが、そうでない者にはこれくらいでいいのだ。

「それもあって、女性陣は朔弥の作った花冠を喜ぶんだよ」
「でもそれは夏候覇殿が作られて物ですよね」
「…まあな」
「かこうは、じょうずだよ」
「ありがとなー。まあ、花をやって嫌われないって朔弥が言ってたんだけど」

手持ちぶたさからか、夏候覇は花を摘んではせっせと編み始めている。確かになれた感じとは少しだけ言い辛く、たどたどしい。しかし不器用ながらもそれなりの出来栄えだ。
朔弥がちょこちょこっと辺りを走っていると、「どっか行くなよ朔弥」と夏候覇が声をかけると朔弥も頷いているのが見える。
ちょろちょろとしていた朔弥が夏候覇の前に立ち、蓮華ではない小さな花を摘んだ手を出している。

「なんだ?」
「これも。これもいれて」
「お、混ぜて使う作戦か。なかなかだな」
「子供の発送は柔軟ですね」
「これが女性陣に喜ばれる理由か…」

確かに同じ花だけでは味気ないのも事実。朔弥はそれだけではなく、確かに色々と花を織り交ぜていた。大きな花があればそれを中心に。細々とした花があればちりばめる様に。同系色だけではなく、たまに違う色を入れてみたり。今思うと実に女性らしい作り方をしていたと夏候覇は思った。普段女性らしいと思うことの少ない朔弥だ、それだけで十分もしかしたら女性らしい。そういえば前に「どうやったらそんな喜ばれる花の冠が作れるんだ?」と聞いたことがあったが、答えは「適当なので、どうしてと聞かれても…」と本気で答えらたのも事実だ。

「素敵な感性をお持ちですね」
「か…?」
「朔弥に感性だとか柔軟だとか言ってもわかんねえよ。よかったな、文鴦が褒めてくれたぞ」
「あ、ありが…とう、ございま、す」
「あははは、朔弥が照れてる。文鴦、これ貴重だぞー」

恥ずかしそうに朔弥は自分の手元を見ている。確かに普通の朔弥であればそんな風に照れる事はない。というより、朔弥が照れているのが想像できない。
ケラケラと笑う夏候覇に文鴦は頭を傾げるが、その笑う理由が文鴦にわかるはずもなくだたみているだけだ。何より文鴦と朔弥では面識がないのだ。知らない人間の姿など想像する他ないのだ。
朔弥は朔弥でそんなに笑う夏候覇を見飽きたのか、自分でまた他の花を探しては摘み始める。朔弥は朔弥で楽しむことにしたらしい。文鴦は朔弥についていくべきか悩んだが、朔弥が自分を見て少なからず恐がったので付いていくのはやめて、目を離さない事に徹した。

「悪いな、見てもらってて」
「いえ、子供の姿は見ていて飽きませんから」
「あいつ、俺に作れって言ったくせにこれだからな」
「子供とはその様なものです」
「そうだけど…よっと。出来た、こんなもんか」

少し元気のない花の冠。朔弥のに比べると大きい気がする。

「ほら朔弥、もう一つ作ったぞ」
「かこうはがつけてー!」
「嫌だよ。俺が付けたら童顔がもっと童顔になるだろー」
「童顔がもっと童顔に…?幼顔?」
「なあ文鴦、それどういう意味?」

夏候覇の手に持っていた花の冠は綺麗に文鴦の頭に着地した。

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