無双 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

三国と戦国混ぜこぜたので、OROCHiっぽい?
エンパみないな感じ。



「……気が付きましたか?」
「っ!」
「急に起き上がらないほうがいいですよ、頭怪我していますから」

急に起き上がろうとしていた男に朔弥は声をかける。気が付いた男の傍に腰をおろして「水飲みますか?」と特に心配する様子もなく、普通に聞くと男は「いや…」と理解が出来ないような面持ちで答える。
男が自分の頭に手をやって何かを確認している。恐らくは朔弥が怪我をしているといったのでその確認だろう。ちょうど傷口に触ったのか、小さく呻いて痛そうにしている。

「…君が、助けてくれたのか?」
「ええ、まあ」
「ありがとう。手当までしてくれて」
「…どうしたしまして」

風が吹いて、樹が枝と葉を揺らす。
朔弥が日銭稼ぎにと依頼を受けた仕事をした帰りの事だ。盗賊にでもあったのか、若しくは朔弥と同じく日銭稼ぎをして失敗したか。男が物陰に隠れるようにして倒れていた。この御時勢だ、誰かに恨まれる事をしなくても殺されたり殺したりする。その被害者の1人なのだと朔弥は悟り、金品類は既にないだろうが弔うくらいの時間はあると寄ってみると生きているではないか。頭に怪我があるものの、気を失っている程度だ。手早く手当をして意識が戻るのを待っていたのだ。
そして男はゆっくりと身体を起こしてあたりを見回す。

「君、1人なのか」
「ええ、言えば日銭稼ぎの帰りでして。どこかに宿でも探すか野宿です」
「それはすまない…俺なんか助けて」
「いえ、気にしないで下さい」
「だが…ああ、そうだすまない。俺は徐庶だ、君は」
「…朔弥、です」

改めてありがとう、朔弥。徐庶と名乗った男は小さく頭を下げる。
恐らくは悪い人ではないのだろう。誰とも知らず、ただ助けたというだけで頭を下げるのだから。いや、それが普通なのかもしれない。朔弥が今まで見てきた依頼者は基本的にお高くとまった嫌味な金持ちだ。朔弥が受けた依頼の中でもそれ以外の人物は嫌な感じは全くしなかった。

「日銭稼ぎってことは、下野した将か何か?」
「ええ、そんなところでしょうか。師に修行だと追い出されまして」
「主を探しているとか?」
「まさか。師には一応主がいるので。帰れば私も一緒にそこに。でも契約という関係の主従なので、切れてしまえばそれまでです」
「忠誠心は、なさそうだ」
「師にはある程度ありますけど」
「師は主ではないからね」
「主も師も友人みたいな関係です。忠誠心よりも仲間意識のほうが高いので」
「そうか、いいね。そうだ朔弥、少し頼まれてくれないか」

日銭稼ぎで民ではないという関連性に少し疑問を持った朔弥だが、あまり気にしないことにする。ここで依頼が入れば今日の稼ぎはいつもより多くなるという事だ。
朔弥は少しだけ考えて「内容を」といえば徐庶は安心したようにその依頼を話し始める。

「実は護衛をして欲しいんだ」
「護衛ですか?どちらまで、予算は、誰かに狙われているということですか」
「手持ちは今なくて…それに狙われてはいない、ただ盗賊だと思うんだけど、襲われてしまって…それに手負いになってしまって。護衛と言っても俺が帰るのを手伝うって…どう、だろう」

どれだけ間抜けなのかと朔弥は正直思った。
一応は武器だって持っている。朔弥は武器に詳しいわけではないのでその剣のような物が武器だとわかるくらいでしかない。それを持っていて襲われているのだから救いようがない。
しかも山賊だ、山賊である。金品がどうこう知らないが、あまりにお粗末だ。
それを考慮して朔弥は黙る。むしろ逆にこれが罠で、善意の人間を貶める策略かもしれないと。

「あ、別に騙そうとか思ってないから安心して欲しい。わざわざ頭怪我してまで騙さないよ、それよりももっと手っ取り早くできるから」
「………何気に恐い事言っていますけど、それ素ですか?」
「え?だって…朔弥が、そんな事思ってそうな顔していたから…違った、かな」
「いえ、その通りですが…」
「朔弥は結構わかりやすいね」
「そんな事言われたのは初めてです」

朔弥があからさまに嫌な顔をすると徐庶は「ごめんよ、悪気は…」と言葉を濁す。あるのかないのかハッキリしろ。とまで口にはしないが、朔弥は警戒しておいて悪い事はなさそうだと気を引き締める。どのような人物かは知らないが、頭は良さそうだ。

「気を悪くされたならすまない…」
「わかりました」
「そうか…駄目、か」
「その依頼お請けします。荷物はそれで全部ですか」
「…え、」
「騙されるのも経験です」
「違う、そんな騙してなんて…信用されないのは、仕方ないけど…」
「目的地はどこですか。料金は後払いで結構です」
「………請けて、くれるのか?」
「私、言っておきますけど高いですよ。御存知か知りませんが、雑賀なもので」

ここで諦めるならそれでもいいかと朔弥は雑賀の人間だと言う。雑賀は依頼料金が少々高いのだ、それは朔弥が設定したわけではないが、何かと金持ちには優遇される。勿論それほど高い料金でなくとも朔弥は仕事を請ける。朔弥にとって今は日々を生きるための金が必要なのだ。

「そうか、君、朔弥は雑賀なのか…」
「雑賀を知っているのですか?」
「ああ、知っている。いつか出会ってみたいと思っていたんだ」
「それほど珍しいわけではないと思いますが」
「でも傭兵としては良い腕だと聞いているから…じゃあ朔弥も銃を?」
「一応は雑賀の人間です、銃が扱えなくては。奪ってもそう簡単に扱える代物ではありませんし、売ってもそれほど金には」
「武器も人間も扱う者によって変わってくるから、そうか…」

それじゃあ護衛頼んだよ。と徐庶は笑った。


/