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※Orochi世界/名手続き

「朔弥、ちょっと護衛を頼みたいんだ」

そう毛利元就に声をかけられた朔弥はその依頼を受けた。一応は孫市にその旨を伝え、許可は貰った。雑賀の仕事ではなく、個人の仕事なので取り分は全て朔弥になるので、この手の依頼を朔弥は快く受けるのだ。

「今日はどちらに?」
「これといって予定と言うものはないんだが、折角過去の偉人がいるんだ。会いに行こうと思ってね」
「お目当ての方はいらっしゃるのですか?」
「んー、行き当たりばったりかな。そういえば朔弥は夏候淵将軍と一緒にいたんだって?」
「はい。将軍には色々とお世話になりました」
「では夏候淵将軍に会いに行ってみようか」
「…はあ。でも私お世話になっていたというだけで、コネとかは持っていませんよ」
「大丈夫。噂は聞いているから会ってくれるよ」

夏候淵将軍といえば。と嬉々と話始める元就の後ろ半歩から適当に相槌を打つ朔弥。
正直なところ、話が長いのだ。自分の興味あること、知っている事になると話が長く、しかも聞いていないと不機嫌になる。それを知っているので適当なところで相槌を打ち、たまに質問をすると喜んで答える。それを知っていればそれほど苦ではない。仕事だと思えば。
元就が陣を敷いているところから魏の陣までは少しばかり距離があり、その途中で様々な将達が声をかけてくれる。勿論元就に向かってだ。朔弥にも何人か挨拶をしてくれる者はいるが、将ではない朔弥は元就のオマケでしかない。

「あれ、えーっと、そうそう、朔弥。朔弥だよな」
「夏候覇殿、お久しぶりです」
「堅苦しいなー。もっと肩の力抜けって。どうしたんだ?こんな所に」
「朔弥、この方は?」
「夏候覇殿です。大殿がお会いしたいと仰っていた夏候淵将軍の御子息で」
「ああ、そうなんだね。私は毛利元就だ、よろしくね」
「こちらこそ。で、朔弥は今その毛利軍にいるのか?」
「いえ、今日は護衛の依頼で」
「それなのに大殿って呼ぶのか?」
「朔弥は以前私のところにいてね。その名残だよ。あと私の名前は噛んでしまうらしいから」
「意外とドジだな」

噛むと可愛いんだけどね。と元就が笑うとつられたのか愛想なのか、少しばかり演技がかった笑い方をする夏候覇。警戒しているのかしていないのかよくわからないが、何事もなく穏便にいけばいいなと朔弥はぼんやりと思う。こんな敵とまでいかないが、他陣地の中で、護衛といえども雇いの護衛一人をつれているのだから無理はしないだろう。
とりあえず、朔弥は二人の会話が終わるのを黙って待つ。

「父さんに会いに来たんですか?」
「ああ、朔弥が以前お世話になったと聞いてね。あの有名な将軍に会えるかもと思ってね」
「へえ…でも、すみません。今父さん孫市さんのとこ行っていて」
「え、孫市のところに?」
「そうなんだよ。腕が鈍るから勝負しにって言っていたな、確か」
「うーん、入れ違いか…残念だけど仕方がない」

どうします?と朔弥が伺えば「戻ろうか」と素直に帰ろうとする元就。これには朔弥は顔に出さずに驚いた。何かしら理由をつけて夏候覇に案内させるのではないかと内心心配していたのだ。それが実際はあっさり帰る事選択してくれた。

「なあなあ、それ、俺も付いていっていいですか?」
「ああ、いいとも。行きたいところでもあるのかい?」
「父さんと孫市さんの勝負が気になって」
「実は私も気になってね。朔弥がいるから場所だってすぐわかるだろうし」
「そ、それが狙いでしたか…」

朔弥にとってまさかの展開だった。素直に帰ると言った裏側にそんな思惑があったとは。よくよく考えればわかりそうだが、朔弥にとっては素直に帰るといった元就に安心して疑う事をしなかったのだ。それに夏候覇まで元就と同じ事を考えているのだ。
朔弥は一応は雑賀の人間なので雑賀の者に聞けば頭領である孫市の居場所はすぐわかる。だが、依頼の範疇で聞くとなると話は別だろう。

「で、ですが…」
「大丈夫。今は敵対しているわけじゃないから」
「なんでわかるんですか、私の考えていた事」
「顔に書いてあったからね。それに朔弥はわかりやすいから」
「そうそう。それに父さんも一緒だし、俺が一緒なら嫌な顔もされにくいって」
「私なんて、下っ端の下っ端なので…」
「朔弥は下っ端なんかじゃないよ。もし孫市殿が朔弥をそんな風にいうなら私が雇ってあげるから」
「そうそう。あれだけ父さんが褒めてたんだし、自信持てよ」
「夏候淵将軍も朔弥を褒めていたのかい?なら安心だ」
「一体何が安心なんですか…」
「私以外に夏候淵将軍も認めてなさるんだ」

だから大丈夫。行こう。となんだか言いくるめられて二人は雑賀がいるところに向かい始める。
それをぽかんと朔弥は見つめていたが、さっと我に返り二人の後を追う。
どうやって言い訳をしようか。確かに夏候淵将軍の息子がいるけど、それとこれとでは話が別ではないか。と。
また余計な事をして。と孫市に嫌味を言われるのではないかと、朔弥は大きな溜息をついた。

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