現パロ
「え?真田君、くれるの?」
今日は乙女が浮き足立つバレンタインデーというやつには幾分はやい。
最近では逆チョコなるものも出てきている。
本来は男女関係なく愛を伝える日だったと思うのだが。
しかもチョコレートはお菓子業界の策略だ。
「あ、もしかしてご迷惑でしたか?」
「ううん、嬉しい、ありがとう。私、逆チョコって言うんだっけ?そういうの貰うの初めて」
「買いに行くの恥ずかしかったんですよ、周りはみんな女性で」
「男の人がそこに一人ってなんか想像すると変だもんね」
孫市とガラシャなんてくれしかいわないんだよ、私に。と笑って話すと幸村は困った様に相槌をうっていた。
しかし意外にも貰ったチョコを見てキャッキャッとはしゃいでいる。
「でもなんで今日?」
「当日はご迷惑かと思いまして」
「え?なんで?」
「…渡すに、渡せないと嫌なので」
「あーはいはい。真田君人気だもんね。せっかく買ったの渡せないと勿体無いもんねー。私で最後?」
「最後…とは?」
「えー?真田君の事だから皆に配ってたんじゃないの?あ、最初か途中だったかな」
ぴたりと動きを止めた幸村。
まさかその様に返されるとは思っていなかった。
仕事の関係でこういったイベントでプレゼントをもらう機会の多い幸村。
そのお返し大変である、それを少しでも軽くする為の行為にとられたようだ。
幸村にしてみたら他に上げる予定はない。
「あ、いや…」
「おっと、これは聞いちゃいけなかったかな」
「あ、あははは…」
「しっかしお菓子業界も迷惑なことしてくれたよねー。義理とかさ。配んなきゃいけない女の身にもなれっての」
「義理…ですか」
「そうだよ、だいたい本来は恋人とか夫婦のイベントでしょ?チョコ関係ないし」
「そ、そうですよね。女性は大変ですよね」
今年もある程度の人にあげないとだから大変だよ。バレンタイン特別手当てあればいいのに。と心底嫌そうにしてうなだれた。
それを見た幸村はもう笑うしかない。
あんなに恥ずかしい思いをして女性達に紛れ買ったチョコレート。
渡した本人には義理と勘違いされるし。
踏んだり蹴ったりとはこの事か。
これなら雑誌に書いてあったように本命にはコレ!というのをちゃんと参考にしたらよかった。
じゃあまだ仕事あるから、ありがとね。と行ってしまった後ろ姿を虚しくて幸村は見送った。
(やはり義理と思われたな幸村)
(あやつは鈍感だからな!)
(お二人とも覗き見はやめてください!)
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