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「おい、そこの子供」

「……こんにちは」

「あ、ああ。こんにちは」


秀吉様の屋敷の庭の一角。
庭にある池を覗き込む一人の幼女と、その隣には大きな猫。
子供が小さいから猫が大きく見えるのか、はたまたその反対か。
それは今はどうでもいいが、その子供の正体を知るために清正は声を掛けた。
それが民の子であれば、屋敷から出さねばならないし、武家の子であれば親を探してやらねばなあない。
見るに武家の子とはいえないが、着物はそれなりにいい物を着ている。
商人の子かとも思ったが、それにしても身なりが少々粗末だ。


「何をしている」

「鯉がいたので、見てました」

「その猫はお前の猫か?」

「違います」


それにしてもしっかりしている。
そう思いながら清正は幼女の横にしゃがみ込んだ。
このくらいの子供ならば、まとまらない言葉をやいのやいのと言うものばかりだと思っていた。
これでは正則よりも、頭がいい。


「両親はどこだ」

「…いません」

「にゃー」

「…では、兄弟は」

「いません」

「にゃー」

「…家は」

「……たぶん、ないです」

「にゃー」


何かと割り込んでくる猫に清正は殴りたくなったが、子供の見ている前でそれは流石にマズイと思いとどまった。
子供は猫をツンツンつつくと、猫は子供にじゃれつくようにすり寄り、子供はそれで遊んでいる。


「おや、清正じゃないか」

「おねね様、この…」

「ここに居たのかい朔弥」

「はい。鯉を猫と眺めてました」

「朔弥…?」

「はい、なんですか清正殿」


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