「おー、朔弥かえってき、た…」
「た、ただいま…」
「よお、孫市」
孫市の目の前にいるのは朔弥と慶次と子供。
確かここに戻ってくるのは朔弥一人のはずだ。
送り出したのは朔弥だけだったから。
慶次が何故居る。
それよりその子供はなんだ。
いいたい事は沢山あるのだが、なんとも朔弥がバツの悪そうにしているのを見て聞くに聞けない。
「何故慶次までおるのだ」
「よ、政宗久しぶりだな」
「ん?その子供はなんだ」
「こっ、こんにちは…」
政宗に声を掛けられた子供はまさに飛び跳ねた。
しかし挨拶するあたり教育がされているようだ。
ただ、朔弥の尻にくっついて離れはしないが。
「んで、その子供。どうしたんだ?俺は仕事やらせにやったんだけど」
「あーっと…」
「もしや慶次との子供か?手が早いのう、しかも順序が違わぬか?まず挨拶が先じゃろう」
「いや残念だが違う。こいつは幸村なんだってよ」
「…は?」
「慶次、嘘か冗談を言うならもっと笑えるやつにせんか」
それがよ。と話す慶次。
説明はもう慶次に全て任せることにしょうと朔弥はだんまりを決め込んだ。
次は後ろに隠れる子供をどうするか、だ。
なんとか呼び方を母上から朔弥殿に変えさせたものの、やはり幸村は朔弥を母と思っている様子だっだ。
「…ってなわけよ。で、俺が朔弥と幸村を送り届けたってとこさね」
「……その話、信じてよい…の、か?」
「ついでに幸村は朔弥の事を「わー!わー!わー!!」」
「?」
「なに叫んでんだ?幸村びびってんだろ」
「いーの、いいの。慶次殿も余計な事言わないでください」
慶次はそうかい?別に悪かないだろ。と言いたそうにしていたが、朔弥が睨みつけて黙らせた。
この二人に幸村が朔弥の事を母だと思っていると言ったらからかう事は目に見えている。
その二人は今は幸村に興味が向いている。
「では幸村、ちいと顔を見せてみよ」
「朔弥の後ろなんか隠れてんな、出てこい」
「………」
「はい、行く」
「なんじゃ人見知りか」
「慣れればすぐに賑やかになる、あっちでもそうだったもんな幸村」
朔弥に背中を押されるようにして前にでた幸村は大きな声で「ゆきむらです」と答えると、素早く朔弥の後ろに隠れた。
「なんじゃ、いつもの覇気はどうした」
「いや、子供なんだし…」
「政宗の顔が怖いんじゃねえか?」
「いや、孫市の厭らしい顔が原因じゃな」
からかうように政宗に声をかけた孫市であったが、それ以上に政宗のほうが上であった。
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