「…ははうえ?」
「違う!断じて違うから」
朔弥は珍しく息を荒くして子供に向かって強く言葉を口にした。
その子供はキョトンとして、なんとなく朔弥の言うことに頷いてみせたが、実のところは分かっていないだろう。
その子供は真紅の鎧に六文銭の鉢巻。
どことなくある武将を連想させる。
「で、これはお前の子供か?何時の間にかこんな子供作っていた、父親は誰だ、孫市か?いや、六文銭となると幸村…いつのまに」
「ち が う っ つ う の。私の子供ではありません」
「しかしお前の事を母と言ったではないか」
「だから違うって言ってるじゃありませんか、お二人とも」
子供を見てなんだなんだと朔弥に問い掛ける三成と兼続。
子供は朔弥を母と呼ぶし、二人はその子供を朔弥の子供だと勝手に思い込んでいる。
それは朔弥がうっかりタメ口になってしまうほどに朔弥をイラつかせた。
「…多分、ではありますが、幸村殿…本人、かと」
「馬鹿も休み休み言え」
「三成、朔弥は休み休み言ったぞ」
「そういう意味ではない。で、根拠を言ってみろ。出来次第で誉めてやろう」
「…ははうえを、いじめないで、ください」
「だから母上じゃないってば」
三成が朔弥に詰め寄り、困っている姿が虐めているように子供には見えたらしく、子供は子供なりに朔弥を庇おうと必死だ。
小さな体で三成ね朔弥の間に分け入り、小さな体を精一杯大きく見せようと両手をころでもかと広げている。
「あー、もう…。正直といいますか、私の見たままを申し上げますと、私の目の前で幸村殿が縮みました」
「よし、舌をだせ。引き抜いてやろう」
「もう少しマシな嘘か気の利いた冗談はなかったのか朔弥」
「ははうえの、したをぬかないでください!」
「だから、母上じゃないって…」
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