「悟空ー」
「あー?」
「散歩行こう、散歩」
「行けよ、勝手に」
「誘ってるの、おわかり?」
「とかいって俺をパシらせんだろ」
「うん」
それはもうすんなり肯定された日には、流石に悟空も溜め息をつくしかできない。
妲己の所に居た頃からだが、朔弥は悟空を使おうとする。
悟空もそれに嫌な態度をするが、断る事はない。
お互いその距離感が丁度よくて、楽なのだ。
「ったくよお、馬くらい乗れるようになれよ」
「なんか馬乗る気が起きないんだよね…馬可愛いから好きなんだけど」
「俺は馬代わりかっ」
「うん」
「ウキー!!」
「まあまあ、落ち着けお猿」
「悟空だっつうの!!」
文句を言いながらも足を運ぶあたり、悟空も優しい。
朔弥が遠乗りに出掛けたいと言わずとも通じるのは、それ以外で悟空を呼ばないからだ。
それが悪いわけではない。
それ以外で呼ぶとしたら茶が入っただの、菓子があるといったくらいだ。
「まあ、悟空がいるかぎり馬乗れなくても不自由しないし。しばらく乗馬練習しないくていいか」
「あのな…」
見えない優しさに甘えたい(甘えるなっ)
(さあ、甘えてるのはどっちかなあ)
(!)
御題提供:濁声
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