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「おい、朔弥」


政宗が手招きをして呼んでいる。
朔弥は呼ばれるままに手入れをしていた銃を丁寧に下ろし、政宗の元に向かった。


「はい、なんでしょうか」

「堅苦しくしなくてよい、いつも通りにせぬか」

「…何?」


一応は雇い主で大名の政宗。
何故か朔弥が敬語を使うのを嫌がる。
孫市は最初からそんな言葉遣いはしなかったが、朔弥は最初こと抵抗したが今では敬語は最初と客人がいるときにか使わなくなっていた。
そして朔弥がいつものように応対したことに満足したのか、政宗はそこに座れと指し示した。


「朔弥、お前甘味が好きじゃったな」

「うん、好き」

「ちょうどよく材料が手に入ったのでな、作ってみたんじゃ」


ほれ。と出す政宗の手には小皿にのったずんだ餅。
それは朔弥が現代で食べたことのあるモノとは少々ちがっていたが、それがずんだ餅だとは分かった。


「ああっ!それ…」

「ずんだ…枝豆を煮て、薄皮をむいて潰して砂糖で味付けして、餅にまぶしただけのモノじゃ」

「食べて…いい?」

「その為に呼んだのだ馬鹿め」


馬鹿発言には少々腑に落ちないが、それは政宗の口癖に近いので気にするのはもうやめた。
それに朔弥はもうずんだ餅が気になって仕方がないのだ。
まるで犬がお預けをさせられているかようだ。
もし尻尾と犬のような耳があれば、尻尾は盛大に振り、耳は主のよしという合図を聞き逃さぬように大きく張っている事だろう。
政宗が「まだ試作段階だから朔弥、お前の意見を聞かせろ」と小皿を手渡した。


「んぅー。美味しい」

「そうか、それはよかった」

「これ、ちょっと、ほんの少し塩入れてみたら?」

「塩…か?」

「隠し味程度にほんの少し、ね。味が引き締まると思う」


にしても美味しい…。と普段見せない笑顔でずんだ餅を頬張る朔弥。
普段素っ気ない態度で、無愛想だがこういう一面を見るとなんとも考え深い。
確かに雇い主である政宗には支障のない程度に交流はするが、孫市の様に親密にはしない。
呼べば来るが、呼ばねば自ら来ない。
しかし少し前に孫市にやった甘味を孫市が朔弥に与えていたところをたまたま見たら印象がまるっきり変わった。
孫市から甘味を貰ったら凄く喜んだ顔をしたのだ。
それは孫市から朔弥は女だと聞かされていたが、疑っていた事を打ち砕く勢いだった。
無愛想な朔弥が笑い、女の様に喜んだのだ。
それから政宗は朔弥も呼びつけて甘味を与える様になり、次第に朔弥にだけ与えるようになった。


「うまー…」

「しかし、お前は本当そうしておると」

「…?」

「おなごじゃのう」


黙っていれば


(もう少し愛想がよくならんか)
(私が愛想よくしたら気持ち悪いだけだと思う(むぐむぐ))
(…(いや、それなりに可愛らしいが))


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