呪術 | ナノ
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「#エロ」のBL小説を読む
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「名前さん、悠仁とデート楽しかった?」
「デート?」

うん?と名前は頭を傾げる。
心当たりはある。つい先日の事だ、虎杖悠仁に誘われて映画に行った事だろう。
しかしあれはデートではない。名前にはそんなつもりはないし、虎杖にだってないだろう。他に行く人がいないからと頼まれて行ったようなものだ。

「この前の日曜の話?」
「そ」
「別にデートじゃないよ。虎杖くんに誰も付き合ってくれないからって言われて行っただけだし」
「映画の後パンケーキ食べたのに?」
「よく知ってるね」
「悠仁がパンケーキの写真見せてくれたからさ」

ふーん。と興味なさ気に名前は返事をする。
実際映画に行ったしパンケーキも食べた。なにも間違いはない。まあデートだと言われれば否定はするが。
片やニヤニヤとして甘そうなサイダーのペットボトルをゆっくり揺らしながら名前に寄ってくる五条。まあこの手の話が嫌いでもないが好きでもない、ただ話のネタとして楽しんでいるのだろうというのは名前にもわかる。

「喜んでたよ」
「映画?パンケーキ?」
「どっちも。僕が行っても良いんだけどさ、やっぱり青春に僕は要らないでしょ?先生だし」
「私も言っておくけど断ったからね?でも誰も乗ってくれないっていうから行ったの。私だって若い子は若いと遊んだ方が良いと思うし」
「青春してほしいよね…映画くらい行ってあげればいいのにねー」
「本当よねー。で、本題は」

ニイ。と実に悪そうな笑い、いや、悪巧みをしていますというような笑顔だ。
どうせこの顔の時にする話は碌な物ではない。それは名前がなにより体験している。正直この状態で話をしたくはないが、これも仕方がない。五条家によって助けられているのも事実、名前には拒否権はないのだ。

「今度は悠仁を誘ってくれない?」
「………は?」
「いいからさ、チケットはこっちで用意してあるからさ」
「…いや、意味分からんのだが」
「悠仁には沢山思い出作ってあげたいんだよ」
「じゃあ野薔薇ちゃんとか恵くんとか、真希ちゃんでも狗巻くん、乙骨くんは…今居ないか。わざわざ私に言わなくていいでしょ」
「わかってないなー。映画に誘ってのってくらの名前さんだけじゃん」
「じゃあ五条くん誘いなよ」
「僕先生なの!休みまで先生と一緒じゃ楽しくないでしょ」
「一応先生の自覚はあるんだ…」

名前さんまで!と怒る素振りをする五条に名前は「あーはいはい」と適当に返事をする。
半強制的にチケットを握らされ、「頼んだからね!」と名前がやるもやらないも言わない間に行ってしまった。
見れば今若い子で人気の俳優が出ている、とCMで謳っていた映画である。確かSF物だった気がするが、定かではない。
そもそもテレビ自体もあまり見ないのだから仕方ない。俳優の顔を見てもピンとこないし、どれも同じように見えてしまうあたり興味が無い。
さて、渡されてしまったからにはどうにかしないといけない。
我ながら真面目だな。と名前は思うが仕事と割り切るしかない。

「あれ、名前さん。どうしたんですか」
「お!恵くん良いところに!」
「はい?」

チケットをピラピラと振りながら「さてと?」と思っていた矢先の事だ。
もっと幼い時から知る伏黒恵がやってきたわけだ。
渡りに船。有難い、と名前はニコニコと自分でもわかるくらい上機嫌に伏黒に話しかける。

「ね。このチケットあげるから虎杖くんと映画行ってくれない?」
「え」
「実はさ、チケット貰ったんだけど…まあ色々あって。この前虎杖くんに映画のチケット貰ったから、そのお礼に」
「じゃあ名前さんが虎杖にあげれば…」
「私これから任務なの。だから代わりに一緒に行ってよ、ご飯代くらいは私出すからさ」
「………は、はあ」
「ありがとう、助かる。楽しんできてね、あとこれご飯代」
「あ、いや、ご飯代は別に」
「じゃあねー」

財布から五千円札を出してチケットと一緒に渡す名前。
正直五千円も要らないかもしれないが、多くて困る事はないだろう。どちらも両親が居ないのだから、こうしてお金を出してくれる人間は……いるな、一人。と思ったがあえて気づかないふりをして名前は任務に向かった。



「あ、名前さん」
「おー虎杖くん」
「この前伏黒から聞いたけど、チケットと飯代ありがとね」
「楽しかった?」
「おう!名前さんも懸賞送るの?」
「ああ、あれ?あれは五条くんがくれたの」
「横流しじゃん…」
「まあ私と虎杖くんでって言われたけど。恵くんがちょうどそこに居たから渡しちゃった」

数日後、夜蛾学長に呼び出されて来た高専。呼出しと言っても大事ではなく、言えばちょっとした雑務を頼まれただけだ。万年人手不足のこの世界、何かあればこうしてすぐ駆り出されてしまうのが面倒だが、名前にはここ以外の世界は知らないしここが名前の世界だ。
そこで虎杖が名前を見つけたのだ。

「釘崎も一緒に行ってくれてさ、名前さんから貰った飯代で観て、んで飯食ってきた」
「野薔薇ちゃんも?」
「うん。なんか出てる俳優が好きなんだって」
「そっか、良かったね」

若い子に人気。という謳い文句は伊達じゃなかったらしい。
名前は知らないが釘崎が知っているのであれば間違いないだろう。さほど興味はない映画だが、楽しんでくれたのならばチケットくれた本人である五条もさぞ満足しているだろう。これにて名前のお役目は御免となるはず。
言えば名前ではなく若者同士の青春を果たせたのだ。チケットの横流しなど些細な事過ぎる。

「名前さん、悠仁となに話してんの」
「あ、先生。あの映画のチケット先生がくれたんだって?」
「あ、観た?楽しかった?」
「おう!てっきり名前さんがくれたのかと思ってた」
「もう名前さんてば、そんな事言わなくていいのにー」
「伏黒も釘崎も面白かったって」
「……ん?」
「私が恵くんに渡して虎杖くんと観ておいでって、そしたら1年生で観に行ったんだって」
「え!」
「今若い子に人気の俳優の力よ!」
「ミーハーが過ぎない!?」
「先生たち何言ってんの…?」

大人よくわからん。と言った雰囲気で虎杖は引いていたが、まあこれも大人と子供の差だな、と名前は諦めていたが28歳児がよくわからない事で怒りだす前に名前は「じゃあね」と去ることした。

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