呪術 | ナノ
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「#エロ」のBL小説を読む
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「名前さん、次の土曜日か日曜日暇?」
「どうしたの」
「映画のチケットあるんだけど、一緒に行かね?」
「友達と行きなよ」
「伏黒も釘崎も先輩たちもさ、興味ないって。懸賞で当たったんだけどさ」
「じゃあ一人で二回行けば?それか五条くん」
「名前さん、俺と映画、嫌?」
「嫌というより、学生は学生で楽しんだらいいと思う派の人間なので。まして倍近く年違うし」
「え!?あ、そっか…名前さん五条先生の先輩だっけ」

その驚きはどうリアクションしたらいいんだ。と顔には出さないが名前は思った。
書類が少々溜まってしまったのでそれを提出するために高専に来ていた名前。
それが終わったので帰ろうとしていた時に声を掛けられた。
普段からよく話したりしていたので別段不振だとは思わないが、話していると「あのー」だの「そのー」だの、なんだか話のキレが悪い。
不思議に思った名前が「どうかしたの?私に何か用事?相談?なんでもこい」と言ったらそんな誘いだった。

「……バトルアクションでさ」
「あー…この業界に居るとそういうの自身が体験しちゃうからね」
「そーなの!でさ、名前さん」
「んー」
「あ、嫌いなタイプの映画だった?」
「いや、好きなんだけど…学生さんと一緒に行くってのが」
「俺気にしない!」
「私がするの。他にお友達いないの?七海くんとか…は、行かないか」
「うん…」
「仕方ない。名前さんが一緒に行きましょう、土曜は駄目だけど日曜ならいけるよ」
「マジ!?じゃあ日曜の11時からの映画でいい?場所はさ」

ここの映画館!とポケットからスマホを取り出して映画館の情報を出す虎杖。
そこであれば交通の便も良いし現地集合の現地解散でも問題なさそうだ。時間的にも虎杖にごはんを食べさせてあげられるし、急な任務でも対応がしやすい。
今まで誘っては断られを何度か繰り返していたのだろう、実に嬉しそうにしている。
虎杖も名前に懐いているし、これくらいしても悪い事はないだろう。
特に宿儺の器と言われているから外出には面倒かもしれないが、若いのだから楽しんだ方が良いに決まっている。その手伝いが出来るのであれば、と思い名前は誘いに乗った。


日曜日、待ち合わせの時間通りに集まり、映画館に入る。
五条から「悠仁は映画にはポップコーンとコーラでしょ!って言ってたよ」という前情報を仕入れていたのでポップコーンとコーラを買い、指定された座席に座る。

「なんか買ってもらってすみません」
「いいよ、気にしないで。私がしたくてしてるだけだから」
「名前さんも食べません?」
「私はいいや、見ながら食べるの上手くいかないから」
「……ありがとうございます」
「うん?」
「いや、映画と、コレ。俺から誘ったのに…」
「子供は気にしないの」

律儀だな。と思う名前。
基本的に悪い子ではないのはわかっている。宿儺の件がなければこんな呪術師の世界とはまったく関わりの無かった子供なのだ。
まあ唯一の家族の祖父が死んでしまったという時点で前途多難ではあるが、宿儺の器として処刑されるよりは未来がある。
そんな事をぼんやりと考えていると館内が暗くなり予告が始まった。



「っ面白かったー!」
「案外良かったね、爆発シーンなんて良い迫力」
「主人公のアクションも良かったと思わん?いいな、俺もあれくらい動けたらな」
「動けてるよ、十分動けてる」
「え、そう?」
「そうそう。ところでごはん食べる?」
「食べる!」
「どこがいいかな、食べたいものある?」
「俺パンケーキ食べたいんすよ」
「…パンケーキ?」

男子高校生がパンケーキだ?と名前はあからさまに驚いた様子で一瞬止まる。
このくらいの年の男の子は勝手に肉が好きですぐに「焼肉だー!」と喜ぶと思っていたからだ。そしてこの体格だ、どうみてもパンケーキという体格ではない。

「五条先生とか釘崎がさ、色々見せてくるんだけど…ほら、ちょっと恥ずかしいじゃん」
「そういうことか。興味はあっても恥ずかしくてってことね」
「うん、まあ…名前さん、大人だし、女の人だし」
「よし。じゃあそこに案内せよ!名前さんが付き合ってやる!」
「応!」

流石現代っ子。スマホをすぱぱぱぱと使いこなし、パンケーキ屋さんを探し上げ、ついでに混み状況を見て「じゃあここ!」と示してくる。
名前も仕事でスマホを使う事はあるがここまで素早くできる自信はない。
虎杖に案内されるままについて行けば、まあ外観はそれなりに可愛い。あからさまに女性向け!という感じではないが、女性が好みそうな外観、そして内装である。
そこに入り、「2人で」と言えば店員が案内してくれてそこに座る。
メニューを開けば筆記体でさらさらとメニューと綴ってある。

「…決めた?」
「名前さんは?」
「私はこの季節限定にしようかな、アイスも美味しそうだし」
「じゃあ、俺もそれにする」
「飲み物はどうする?」
「んー…名前さんは」
「コーヒーかな」
「コーヒーか」
「コーラ頼む?」
「んんんん…」
「カフェオレにしたら?」
「んー、じゃあ」

こういう店が初めてなのだろう。どうしていいのかわからないという風である。
だから名前が注文する物と同じにしているのだろう。わからなくはない。名前も逆の立場であれば同じようにしているだろう。
店員に声をかけ、パンケーキの注文とドリンクの注文を入れる。
パンケーキが来るまでの間、ソワソワしている虎杖に名前が「映画今度何観る予定?」と聞けばスマホを取り出して「コレとか面白そうだなって」と画面を見せてくれる。
そんな事をしているとふわふわのパンケーキにドリンクを持った店員が「お待たせしました」と運んできた。

「ほー」
「写真、撮らないの?」
「あ、こういうの撮るんだっけ」
「よく五条くん撮ってたから。虎杖くんもするのかなって」
「名前さん五条先生とも来るの?こういうとこ」
「たまにね。五条くんの仕事もあるからね」
「先生どんなの頼む?」
「ドリンクだとメロンソーダとか?たまにコーヒー頼んだと思ったら砂糖地獄だったけど」
「うわ」

あれ見てるだけで口の中甘くなっちゃった。と名前が笑えば虎杖もつられて笑う。
二人で仲良く小さな声で「いただきます」と手を合わせて食べ始める。
温かくふわりとしているパンケーキに冷たいアイスがよく合う。温かい物と冷たい物の組み合わせを考えた人は恐らく天才だろう。
二人で「んー」と美味しさをかみしめる。

「すげえ、美味い」
「ね。さすが若い女の子が集うはずだわ」
「名前さんだって若いじゃん」
「はははは、思うより若くないけどね」

二人で食べながら「これ二人で別だったらシェアできたね」や「俺これだとコーヒーもいけるかも」と楽しく会話をしながら笑う。
仕方ない、付き合いだ。と思ってやってきたが、名前自身案外楽しかったなと思った休日だった。

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