呪術 | ナノ
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「………、名前さん」
「うん?」
「そういう仕事はしなくていいから」
「でもやることないし?暇だし?」
「うーん」
「だってゲトー様、私が就職とかバイトとかパートとかするの駄目って言うじゃない」

帽子をかぶり、手には軍手、首にはタオルを引っ掻けている。
構内の草取りをしていたその格好。
言えば業者を呼べば終わる様な雑用を何が面白くてやっているのか。
ああ、違う。暇だから、やる事がないからやっているのか。
「あつー」と言いながら首にひっかけたタオルで額を拭う名前さん。
私は別に名前さんに労働をしてほしいわけでもなければ草取りをお願いしたわけでもない。

「なに?そのゲトー様って」
「だって教祖様でしょ?私が夏油くん、とか傑くんて呼べないでしょ」
「あ、今の良いね。もう一度」
「教祖様?」
「すぐるくん」
「ああ、傑くん?」
「それ!」
「こんな小汚い恰好した人間が教祖様とお話するなんて恐れ多い」
「あ、そっち行く?」

毎日毎日外に出たい。と何度も何度も言われていた。
確かに外でに出ないと体に悪いし、気分転換も必要だ。
私をその気にさせるために名前さんはあの手この手と考えて、私はやっと「仕方がないな」という素振りで名前さんを教団の施設に招待した。
数日は施設内を散歩して満足していたと思っていたけど、まさか草むしりを始めるとは。
確かに今日は荷物が多いとは思っていた。でも草むしりをするためだなんて誰が思う?私は思わない。

「本当にいいんだよ、業者に連絡すればいいんだ」
「でもゲトー様、ここにそういう人来るの嫌いでしょ?」
「ま、まあ…そうだけど。でも」
「私は暇だし。あ、じゃあ私に草むしりのバイト代だして」
「え…まあ、いいけど」
「そうしたら労働になるでしょ?ゲトー様も少しは気がまぎれるのでは」
「そういう、事じゃあ…ないんだよなー…」
「違うの?」
「それならその汗を拭いたタオルを言値で買おう」
「変態」
「というのは冗談だけど」
「えー……ゲトー様学生の時と違いすぎて恐い」

そうかな?と頭を傾げれば名前さんは即刻頷く。
少し傷ついた。
でも、名前さんに労働をしてほしくないというのは本心でもないけど、してほしいわけでもない。
名前さん本人としては本気で暇なんだろうなとは思うけれど。

「じゃあ家事でお給料払おうか」
「えー?ゲトー様の家に掃除洗濯しに行くの?、今でもしてるし、それに関してお金はいらないよ。私達の生活費だしてくれてるんだし」
「それとは別に、だよ。名前さんだって個人的に欲しいものだってあるだろ?」
「それならここでの雑用バイトの方がありがたいよ」

ていうか、なんで家事?と汗を拭きつつ名前さんは頭を傾げる。
最初こそ一緒のアパートで生活していたけど今となっては名前さんは美々子と菜々子と生活をしている。そこに私が顔を出したり出さなかったり。基本的によく出しているのだけれど。美々子と菜々子は教団所属の子として猿には知れているけど名前さんは別だ。
困る事はないが名前さんが雑用の人間だと思わるのも癪、というだけの話なのだが。

「じゃあさ、役員やろうよ」
「えー…そういうのはちょっと…」
「どうして?良いと思うけど、それに名前さんにぴったりだと思う」
「だって、そうしたら私騙されたフリ続けられないし…」
「あ…うーん、じゃあ今の無し」
「了解」

そうだった。と冷や汗をかく。
名前さんは騙されているという体で私と一緒に居るのだから、私が呪詛師であると名前さんがわかってしまう様な事はいけないのだ。
こうして一緒に居てくれるというのは、まあ一応はアレなんだと思ってはいる。聞いた事はないけど。

「ゲトー様、私バイトがしたいです」
「却下」
「美々菜々と一緒に行くスーパーとかコンビニとか募集してるんだけど」
「だめ」
「ゲトー様は私のお願いきいてくれない…」
「う…ん、じゃあ、保留」
「希望は」
「ないと思う」
「じゃ駄目じゃん。じゃあやっぱりここの雑用アルバイトしかないねゲトー様」
「うーん。私としては家で待っていてくれるパターンがいいんだけど」
「美々子も菜々子も学校終わればここくるんだから、ここから一緒に帰れば同じじゃない?」

確かに。
美々子と菜々子は学校が終わるとここにやってきて、それから二人を連れて名前さんが居るアパートに送っていた。
でもそうなれば私があのアパートに行く理由がなくなってしまう。
別に理由がなくても困りはしないんだけど。理由が無くても部屋に行けるし、名前さんも理由は聞かない。そういう関係、何だと思う。
私が行けば美々子も菜々子も喜ぶし、名前さんも歓迎してくれる。

「あ」
「ん?」
「そうだ、名前さん。一緒に暮らそう、それがいい」
「………ちょっと前みたいに?」
「そう!そんな感じで」
「それ今の話と関係ある?私はないと思うんだけど」

ジトーっと、文句がありありな目で睨まれた。
名前さんからしたら関係はないだろう、でも私にはおおいにある。
家に帰れば名前さんがいて美々子と菜々子がいる。会いに行かなくても居るのだ。
それは素晴らし事だと思わないだろうか、私は思う。

「あ、私に家政婦として働けって事か!それもアリ、なのか?」

うーん、と悩み始める名前さん。
そうじゃないんだけど、と私が笑えば「じゃあ…なに?」とまた汗をぬぐった。

/