呪術 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

「うわあ!」
「た、かな……」

高専に報告、または任務で来いたのだろう。
廊下に立つ名前を見つけた。ゆっくり、こっそりと名前に気付かれないように背後から近寄り、膝カックンを仕掛ける。
名前の正面には五条悟が居て一緒に資料らしき書類を見ていて狗巻が「しー」とジェスチャーで伝えていたのを気づいて黙っていた。
五条が目の前にいる、高専である。という油断が名前にあったのだろう。
名前は思いっきりバランスを崩して五条の懐に入ってしまったのだ。

「わー!名前さんてば大胆!」
「え、あ!?な、なんで!?あ、狗巻くん!」
「明太子、こんぶ」
「あっはは、棘が『名前さん、ごめんね』だって」
「ごめんね。じゃないよ、危ないでしょ」

もう。と崩していたバランスを立て直して狗巻に向き直る。
夏油名前は五条悟の高専時代のひとう上の先輩で、色々あって呪術師をしつつ高専で五条の我儘で学生の指導をしたりすることもある。
他の呪術師に比べて学生との関わりが多いせいか、学生達からもある程度人気というか認知度がある。だからこうしてイタズラを受ける場面も出てきてしまうのだ。

「五条くんもいたずらに加担しないの!」
「えー。僕の可愛い生徒がどんなことするのかなーって思って」
「狗巻くん、いたずらは時と場合によります」
「しゃけ…」
「この場合はしてはいけない場面です」
「しゃけ」

見るからにショボンとして反省しているをいう風にしている狗巻。
普段から真面目というには茶目っ気と言うか、年相応のノリがいい彼である。名前はそれを加味して反省していると判断して「もうしちゃためだからね」と注意して終わる事にした。

「いくら?」
「任務の打ち合わせだよ。僕でも名前さんのでもない、生徒のね。名前さんにサポートしてもらう打ち合わせ」
「高菜」
「生徒が安全にできる任務っていうのはないけど、それでも1級の呪術師がサポートしているのは有難いでしょ?卒業したら上級のサポート入るわけだし」
「…いつも思うけど狗巻くんのおにぎりの具だけでよくここまで理解できるね」
「え?そう?」

真希ちゃんとか、パンダちゃんとかの会話聞いてても私その二人がいるとわかるけど、ワンツーマンだと雰囲気的にしかわならない。と書類に目を通し始める名前。
呪言師という家系柄、言葉をうっかり口にできない。その代案でしかないオニギリの具縛りは確かに難易度は高い。良く見れば、とか仲良くなれば、というが学生同士ならまだしも、学生と呪術師では時間が違いすぎる。
すると狗巻はすすすと再び名前の背後に忍び寄り、名前が見ている資料を覗き込む。

「背後やめてよー」
「棘、資料気になるの?別に面白いもんじゃないよ?」
「おかか」
「野薔薇の実習任務だよ、名前さんがサポートする資料。厄介ではまだないから1年の任務ってわけ」
「そういえば狗巻くんとは任務サポートも一緒もなかったね」
「しゃけ!」
「棘はサポートすることもされることも少ないからね。確かに名前さんに頼んだことないかも」
「高菜、こんぶ、明太子」
「えー、棘のサポートは補助監督で十分じゃない?」
「お、か、か!」
「凄い否定してるのはわかる」

名前の肩に手を置いて軽く飛び上がって「おかか」と繰り返す。
抗議しているのはわかるが、わざわざ私を挟まなくても良いだろうというのが名前の心中である。
でもまあ名前も狗巻の気持ちもわからないでもない。実際名前が学生の時は上級の呪術師のサポートなどはあまりなかったからだ。今思えば術式の相性のあるだろうが。

「どうする?棘、名前さんのサポートが欲しいって」
「………。私、狗巻くんのサポートするのもされるのも、ちょっと想像できないかな…」
「まあ名前さんの術式だと棘と相性云々じゃないからね、まったく違うタイプだし」
「おかか!」
「まあ、そういう訓練だと思って組んでみるか。名前さん、今度お願いね」
「えええー……、うん、まあ、実習訓練だし、いいか。難易度低めにね」
「しゃけー!明太子、高菜ー」

そのままぎゅーっと名前を抱きしめる狗巻に名前は持っていた書類で頭を軽く叩く。
ふざけて抱き着いてくることが多々あったが、その度に注意しているのだが治らない。
同じ学生の気分なのか、それとも仲間意識からなのか、ただのコミュニケーションとしてなのか。どうであれ人に抱き着くのは感心しないのは確かである。

「棘ぇ、名前さんに抱き着くなって」
「そうだよ、五条くんもっと先生らしく指導して」
「僕だって抱き着きたいんだからさー」
「明太子、たらこー」
「指導しなさい!狗巻くん、人にそうやって簡単に抱き着かない!前も言ったでしょ」
「おかか」
「簡単じゃないって」
「どうでもいいけど、抱き着かない!パーソナルスペースとかセクハラとか色々ご存じ?」
「しゃけ」
「……わかるならちゃんとしようね」

大きな溜息をついた名前はまた書類に目を落としながら狗巻の手の甲をギュウっとつねり上げる。飾りっ気のない短い爪なので然程痛くはないが、それでも名前が辞めるようにと促す様につねるので狗巻は渋々手を放した。

「棘、棘。名前さん、どうだった?」
「とろろこんぶ〜」
「うっわマジで」
「おいコラ教師!」
「だって〜僕も名前さんハグしたーい」
「明太子」
「さっきのはノーカンでしょ」
「おかか!」

五条のレベルが高校生なのか、もうなんなのかよくわからない名前。
先ほどのは別に名前はまた大きく溜息をひとつついた。

/