呪術 | ナノ
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「聞けよ七海!名前さん酷いんだぞ!」
「本家に護送してくれただけ温情でしょう」

名前が五条悟を五条本家に送り届けて2日後。
無事高専に戻ってきた五条は任務の関係で高専に来ていた七海を見つけると、その無駄に大きな体で体当たりする勢いで迫って名前の愚痴を吐いた。

「……なに?知ってんの、お前」
「ええ」
「つーか、僕の頼み断った癖に知ってんの?なんで?」
「名前さんに連絡したんですよ。名前さんの事だから五条さんの為に動いているだろうと思って」
「そのおかげで本家に送られたけどな」
「名前さんの判断です。私はいい案で最善だと思いましたが」

あからさまに面倒だと言わんばかりに大きな溜息をつく七海。
五条家は一枚岩ではないが、名前や七海が五条を守るよりも手堅く守ってくれるだろう。腐っても当主で、何より六眼を持っている。それだけの切り札を持っているのだから五条家は本気で守りに入るのは誰が考えても当然である。
それが悪魔の様な子供であっても、だ。

「あれ、五条くん復帰?」
「名前さん!酷いよ、僕のこと五条家に投げるなんて!」
「2日間ほどお世話した料金は現金でお願いね」
「名前さん…あまりにも、現金…」
「お金で解決できることはお金で解決しようね!」
「名前さん、五条さん恨み節言ってましたよ」
「五条くん守るためだから仕方がないよね、私悪くないと思います」

むしろ1日遊べた日があっただけ感謝してほしいです。と名前は続ける。
実際あんなトンチキ呪いにかかった最強が悪いと誰もが言うだろう。最強である訳だからあんな呪いにはかからない。むしろワザとかかったのだろうと誰もが言うはずだ。
勿論名前も七海の同じである。そして名前が仕方なしに相手をしてくれていたのだ。
感謝されても恨まれるような事は絶対にない!と名前は胸を張るだろう。

「でも!名前さんが実家に送るからあれからお見合い4件もあったんだよ!?」
「わーお!で、結婚はいつ?式の日取りは?任務入らないといいな、行きたーい」
「子供の姿したんですか?お相手は気の毒ですね」
「ああ子供の姿でしたさ!大人の僕の写真を横にな!!ぜーんぶ、ぜーんぶ破談にしたけど!!」
「なんだ面白くない。はい解散解散。七海くん、明日の任務一緒なんだけど打ち合わせしよー」
「待って!待って!!置いていかないで!」
「1級が2人でやるのは珍しいですね、難しい案件で?」
「無視すんな!!」

一拍おいてから名前は五条の顔を見て、再度また七海に向き直って資料を渡す。
どうやら名前は五条の相手が面倒だと判断して適当にあしらう事にしたらしい。
七海は思うが、構って欲しい一心なのだろうがあまりにしつこいからこうなる。実際そうなのだが。

「任務でーす。どこかの特級様がお子様になったので周ってきた任務でーす、おかげさまで1級術師が2人で行くことになってまーす」
「何が言う事は?」
「僕悪くないもん!」
「そーね。じゃあ七海くん、補助監督が待ってる部屋で打ち合わせしようね」
「そうですね。では」
「なんだよー!!名前さん酷い!七海なんてヘンテコグラサンのくせに!」

なんだその子供の口喧嘩のような悪口は。と二人は思ったが、お子様特級呪術師を相手にしている暇はないとさっさと打ち合わせに向かう。
こう見えて1級も暇ではない。休暇が無いわけではないが、まあまとめてとる事には多少なりとも苦労はある。万年人手不足のこの業界、上に行くたびに負担が多くなる。




「…五条家に名前さんも滞在してあげてもよかったのでは?」
「お、五条くんに同情?でも虎杖くんいたからね、良い子だけど宿儺の器ってだけで五条家に居づらいでしょ?」
「ああ、虎杖くんも一緒でしたね」
「虎杖くんは五条くんの捕獲要員だけど、高専に1人にさせるわけにもいかないし?」
「優しいですね」
「結果的にそうなっただけ。優しくなんてないよ、私は」

明日の打ち合わせも終わり、補助監督は次の任務があるからと部屋を出て行った。
今日の任務は2人にはなく、明日に備えろということらしい。
特級の仕事ではないが厄介だというのは資料をみて十分理解している。そのために1級が2人も派遣されるのだ。これは骨が折れそうではある。

「明日行く所の近くで美味しい物ないかな」
「海の近くですから海鮮でしょうか、単純に考えれば」
「海鮮か……」
「お嫌いでしたか?」
「今の気分は海鮮じゃないだけ」
「ではこれから何か食べに行きますか?何がいいのです」
「僕パフェ食べたい!」

バンと勢いよく開いた扉。そこには不貞腐れていた気がする五条が立っている。
仕事しろ。と2人は思ったが、勢いが良すぎてその言葉さえ出る暇がなかった。

「……な、なんで?」
「パンケーキもいいよね!」
「授業中では?」
「僕の担当授業じゃないもーん。てか、2人だけで食べに行くなんて僕が許さないよ!」
「なんで五条さんの許しが必要なんですか…」
「名前さんは僕のだから!」
「私は私のだよ!」
「だって名前さんは僕に恩があるでしょ!同じ穴のムジナでしょ!」
「それとこれとでは話が別でしょう…」
「また変な事言ってる…」

はあ。と名前の大きな溜息。普段かなり構われているとは名前自身思っているが今日は一段と凄い。
こんな風に構われるのはいつ振りだろうかと名前は内心呆れ、ちらりと見た七海も大きく溜息をついてサングラスをいじっている。

「任務は?」
「ない!」
「授業は」
「最後!」
「よし、じゃあ行こうか!」
「うん!」
「て言うと思った?」
「え…」

ちゃんと先生をしなさい。と名前にぴしゃりと言われ、七海には「では失礼します、行きましょう名前さん」と2人は部屋を出ていく。
復帰で祝ってくれると思っていた五条ではあったが、まさか逆に怒られるとは思っていなかったらしい。むしろどうして祝ってくれると思ったのかは知らないが、特級が居なかったおかげであちらこちらで調整の負担がかかっていたのだ。
それだけ特級の任務は大変だという事だが、あの性格だから余計タチが悪い。

「なんでぇ!!??」
「うるさいぞ悟」

ガツンと五条は後ろから夜蛾学長に殴られたが、「名前さんと七海が仲間外れにする!」と訴えはじめ、またガツンと殴られていた。

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