呪術 | ナノ
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「はい五条くん虎杖くん。今日はお出かけをします」

五条が小さくなった翌日。
調度休日だったこともあり、名前は朝早くからこの高専にやってきて二人に声高らかに宣言した。
「おでかけをします」と。
まだ寝ぼけ眼であった二人を叩き起こし、名前は早く準備をしろとせっつく。
「おでかけ」というワードが効いたのか、虎杖はささっと準備を済ますが五条がなかなか終わらない。確かに子供の身体だという事もがあるが半分は甘えだろう、あと性格。
名前が強制的に着替えさせ、顔を洗わせてから名前が準備した車に乗り込む。

「ねえねえどこ行くんですか!」
「ついてからのお楽しみですよ。そこにコンビニで買ったオニギリとお茶あるから適当に食べて」
「おやつは?」
「後でね」

エンジンをかけて早々に出発をする。
名前にはなれた道であるし、背の低い五条は風景がなかなか見えない。虎杖については、まあ恐らくではあるが初めての道のりだろう。
何を隠そう、名前の目的地は五条家の本家である。
昨晩名前は思い立ったのだ、「あ、これ本家に投げればよくない?」と。
虎杖を置いていくのもなんだか可哀…じゃなくて、高専に一人置いてはいけないからと連れてきたし、そのお蔭で五条も何も不審に思っていないのだから結果的には成功だろう。
車内で二人で何気ない話で盛り上がっている。
ちなみに本家には思い立った時に電話で連絡済である。名前が何度も五条の件で叱られ怒られ苦情を言われた電話だったが、この時ばかりは別である。
良い声で「大旦那様に取り次いでください!」と今までにない清涼感があったに違いない。まあ時間を考えればかなり失礼ではあるが、名前にとっては知ったこっちゃない。

「げ!!」
「うわ、すげーお屋敷」
「名前さん!」
「ふっふーん」
「なんで!なんでここなの!!」
「え、先生?」
「なんで本家連れて来てんの!!」
「え、本家って、五条家?」
「そ。五条くんの実家。昨日先代に連絡して連れてくるように言われたので」

ギャアギャア喚く五条を虎杖に抱かせ、名前は簡単な五条の荷物を持つ。
暫く歩けば使用人がずらりと並んで頭を深々と下げている。名前には何度か見た光景ではあるが、虎杖は初めての事。
小さな声で「おお…ドラマの世界じゃん」と呟いていたのが聞こえて名前は笑うのを我慢した。

「おかえりなさいませ、悟さま。いらっしゃいませ夏油名前さま、虎杖悠仁さま」
「昨夜の電話の件です。ご在宅ですか」
「はい、伺っております。客間へご案内いたします」
「やだー!!帰るー!!かーえーるー!!」
「五条くん、ここが君の家だからもう帰ってるよ」
「やだー!名前さんのばかー!」
「馬鹿で結構。虎杖くん行くよ」
「うっす…でも、名前さん、先生可哀想じゃ…」
「どちらかと言えばこの家の人が可哀想。まあそうするけど」
「…え?」
「五条くん置いていくから、お世話する人大変だよー。まあ私達には関係ないけど」

ははははは。と心がない笑いで名前は迷いなく屋敷に入って行く。
暫く進んだところで名前が「ほら、虎杖くん」と手招きをするので虎杖も喚く五条に気を使いながらゆっくりと屋敷に入る。
客間に入る間に人がいれば皆が皆頭を深々と下げている。
気おくれをしているだろうと名前は「五条くん当主だからね、一応」というと虎杖も自分が抱っこしている人物に向けてなのかと納得した。
名前も学生の時にここに世話になった時は虎杖と同じように戸惑ったが、今では慣れたものだ。

「しばらくお待ちください」
「いーやーだー!!」
「騒いでも無駄だよ、観念なさい」
「やーだー!!本家嫌!!高専にかーえーるー!」
「でも名前さん、先生置いて帰るの?」
「その体じゃ最強でもなければ教師でもないんだから妥当でしょ。まして五条家の御当主様。私達が守るより密度高いよ、ここ」
「うーん」
「ねえ悠仁もっと言って!名前さんに!」
「名前さん、先生が居ないのに俺高専戻って平気?」
「じゃあ一緒に五条家に居ても良いよ」
「え、それは…帰ります」

うわー!と暴れるが名前が虎杖に「捕まえておけ」と言われれば虎杖はしっかりと五条を抱え込む。普段であれば一番体型が良くて人を抱える側だが、今は抱えられる側となってしまっている。それに抱えているのがあの虎杖だ、基本的な体格や体力に筋力。どれをとっても今の五条に勝てる要素はない。

「夏油名前様、こちらへ」
「俺は?」
「虎杖くんはここで五条くん捕まえておいて、逃がさない事。大旦那様とは私が話をしてくるから」
「うっす」
「やだー!!帰るー!!」
「先生、もう諦めなよ…」
「あきらめない!」
「大丈夫だよ、五条くん」
「名前さん…?」
「ちゃーんと乳母のばあやも付けてもらえるように交渉するから」

じゃあねー。と名前は使用人の後ろを歩いて部屋から出ていく。
和室なので五条の駄々をこねる声も音も広く聞こえるが使用人も名前も気にしている様子はない。

「先生、良い子にしてよ」
「悠仁はここがどれだけクズな家か知らないから言うんだ!」
「実家じゃん。名前さんだってここの方が安全だって」
「高専もここも変わんない!なら名前さんが僕の面倒見てくれたらいいんだよ」
「名前さん絶対嫌だって言ってたじゃん…」

確かにこの駄々の捏ね方は名前でなくとも絶対に相手にしたくはないなと虎杖は思った。虎杖の知る1級の七海だって「時間外労働はクソ」といって電話を即切られていたをの横で聞いていたわけだが。
名前に知らせる前に実は七海に連絡済みであったが、二人ともそれに関しては言わなかっただけ。相談も何もする前に切られている。こうして相手をしてくれるだけ名前は実はとても優しい。

「騒ぎすぎ。大旦那様の部屋まで声聞こえてたよ五条くん」
「やーだー!!なんで名前さん僕の面倒みてくれないのさー!」
「最強の面倒なんてみたら私の命がひとつじゃたりないからだよ。ひとつくらい五条くんにあげても良いけど、それなくなると私五条くんの為にお仕事できないの」
「……名前さぁん…」
「悟さま、お迎えに上がりました。参りましょう」
「あ、この人は五条くんのばあやさん。彼が虎杖悠仁くんです」
「この度は悟さまの護衛感謝したします」
「あ、いや…」
「こちらにお荷物かと思いましたが」

こちらを。と差し出された小包。
どうやらこれでもう帰れという意思表示らしい。名前はそれを受けとり、次に虎杖に「五条くんをばあやさんに」という。
しかし五条は五条で必死の抵抗、ではあるが虎杖には今勝つことは愚か暴れるしかできない。
すんなりとばあやに渡されるが、五条も黙っても大人しくもなっていない。
「悟さま!!」と一喝されると驚いたように大人しくなってしまったが、まあ言えば驚かされて頭の処理が出来ていないのだろう。

「では玄関までお送りいたします」
「あ、大丈夫です。五条くんの事お願いします、私は彼を高専まで送らないとなので」
「ではこちらにて失礼いたします。本日は悟さまの護衛をしていただき、誠にありがとうございました」





「で、先生置いて来たけどいいの?」
「いいのいいの、言ったとおり五条くんを守れるのなって本家くらいだから」
「名前さんでも、駄目なん?」
「他の1級がいたら話は別だけど、私が居たくらいじゃあ、ね」
「でも先生最強じゃん」
「あの背格好じゃ、強いって言っても程度がわかるからね。それに懸賞金だって掛けられてておかしくないし、当主守る方が私達よりやる気がまず違うから」

名前が運転する車中、最後まで騒いでいた五条。
最後の最後はばあやの一括で強制的に黙らせられていたが。それでも少しは同情した虎杖。嫌がるだけの理由はあるだろうし、でも名前の言うのもわかる。
たぶん、名前の言うとおり五条悟は五条家に居る方が安全なのだ。名前が強くても数で押される可能性だってゼロではないし、名前が苦手とする相手だって絶対に居る。
名前は五条を助けてくれたが他の人はそうではなかった。それが言えば色んな答えなんだろう。
うーん。と唸る虎杖に名前が笑っていると名前のスマホが鳴る。

「あ、ごめん虎杖くん、スピーカーで出てくれる?」
「うっす。あ、ナナミンからだ」
『もしもし、名前さん』
「はいはーい。今運転中で雑音入るけどごめんね」
『そうですか。昨日五条さんの件聞きましたか』
「五条先生なら今本家だよナナミン」
『虎杖くん、ですか?』
「今虎杖くんと本家に五条くん投げてきた所。虎杖くんは五条くん捕獲要員」
『……そうですか。まあ名前さんがそう判断されたのならそれでいいのではないでしょうか』
「ところでさ、もしかして七海くん、知ってた?五条くんが子供になった件」
『ええ、断りましたけど』
「虎杖くん?」
「名前さんが知る前に先生がナナミンに電話してたんだよ…」

ほーん?と名前は少し不満げではあったが、それ以上何も言わなかった。


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