呪術 | ナノ
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「えー五条くんなんだ」

確かに似ているといえば似ている。
白い髪に青い眼。整った顔に生意気そうな雰囲気。すべてがそうだと言わんばかりだ。
名前が高専に任務の関係で来た時に虎杖に見つかり、「面白いから来て」と呼ばれてきた「面白い」がこれである。
子供服を着ているあたり誰かが用意してくれたのだろう。

「そ。どう?可愛い?」
「んー、凄く生意気そう」
「僕可愛いでしょ?ね?」
「見た目だけね。じゃあ私任務あるからバイバイ」

僕、という事は記憶がバリバリあるのだろう。どうせトンチキな呪いにワザとかかったに違いないと名前は判断して早々に立ち去る事にする。面白い事は好きだが面倒は好きではない。出来る限り遠慮したい。
しかしそうはさせまいと名前の手をぎゅっと握ってくる感覚に、名前は振り返ると虎杖が困った顔でニコニコと笑っている。
ああ、これは厄介事に巻き込まれそうな気配がする。と名前の顔は固くなる。

「あ、あのさ」
「ごめんね」
「何も言ってない!」
「厄介事には首を突っ込みたくないしかすりたくもないし関わりたくない」
「酷い!僕と名前さんの仲じゃん!悠仁だって困ってるよ」
「困らせてるの間違いでは?」
「うぐ!」
「なんで悠仁がダメージ受けるの」
「正解だからでしょ」

虎杖に握られた手をそっと放してもらうにと手を添える。
虎杖も虎杖で相手が名前というこもあり、それには従うが「あー…名前さーん…」と助けを縋るように小さい声で名前を呼ぶ。
名前自身、虎杖はとても可愛い後輩である。困っていたら助けてあげたいし、お腹を空かせていればごはんだって食べさせてやりたい。
しかしそれに五条が絡むなら別だ。名前自身五条には大きな借りがあるが、今はそれとこれとは別である。まったくの別過ぎて笑えるくらい別である。
あの五条がかかる呪いなどふざけている以外にないのだから。

「ごめんね、虎杖くん。私はこの件にはノータッチで行かせていただきます」
「何も言ってないじゃん!」
「名前さん、抱っこして」
「断る。じゃ、私任務あるから。あと七海くんには相談しない事、可哀想だから」
「え、僕は」
「自業自得って知ってる?それでしょ」

話だけでも!と言われたが生憎任務がある事は変わりがないというか、任務があるから高専に来ているのであって暇で遊びに来ているのではない。
聞き分けの良い虎杖ではあるが、名前直々に「七海に迷惑をかけるな」と言われては誰を頼ればいいのだろうかと唸り始めた。頼りの綱だった名前は任務があるし、当の本人である五条はお気楽そうに名前にまとわりつくいている。

「本当放して、伊地知くんが待ってるから」
「伊地知なんて待たせておけばいいじゃん。それに伊地知僕がこうなってるの知ってるし」
「それとこれとは別です。虎杖くん、五条くんお願いね」
「う、うっす」
「一応任務終ったらまた来るから、それまで頑張って」
「うっす!」

結局はこうなるのだ。
いくら五条悟だといっても、一応は五条家に恩があって五条悟本人にも恩があって五条悟は一応は後輩でもあるし、虎杖悠仁はとても可愛い後輩だから。
出来れば関わりたくはないが、関わってしまった以上仕方がない。こうなれば他の後輩に迷惑をかける前に付き合うしかない。
名前も我ながら人が良いというか、流されやすいというか。と大きな溜息をついた。しかしそうしたからと言って任務がなくなるわけではない。
手を離してもらって補助監督の伊地知が待つ車まで向かう。
車中で伊地知に名前が「五条くん、あれ自業自得?」と聞けば黙って頷く伊地知。
あえて口にしないのは、まあ関わりたくない表れだろう。
伊地知が小さな声で「ご存じで…?」と言うので名前は普通の声で「虎杖くんに捕まった」と言えば大きなため息が聞こえた。





「虎杖くん、五条くん」
「あ、名前さんじゃーん。ちゃんと来てくれたんだ」
「そりゃあ虎杖くんと約束しましたからね」

はい。とわーいと寄ってきた小さな五条の上にコンビニの袋を乗せる。中身は新作のスイーツにオニギリ、そしてお菓子。
任務の終わりに伊地知に頼んで寄ってもらったのだ。
高専で飲食には困らないが、違うものが欲しくなるのが人間というもの。一応は二人が好きそうなものを選んだつもりだが、さすがに虎杖の好みまでは把握していないので男子高校生が好きそうなものを勝手に選んで買ってきた。

「他に知ってる人は?」
「一応学長に言ってあるし、皆知ってるけど来てくれたの名前さんだけ」
「え…なに、皆スルーなの…」
「ひどいよねー。僕が困ってるのにさー」
「日頃の行いかな?虎杖くん、おにぎり食べていいからね」
「え!いいの、やった!」
「僕のは」
「新作スイーツあるからお食べ」
「やったー」

二人で袋をがさがさとあさり、二人ははしゃぐ。
あれがどうだ、だの、これはどうだ、だの。名前の感覚では多かっただろうかと思ったが二人は「これがいい」「こっちがいい」と仲良く分けているので問題はなさそうである。

「あ、ミックスベリームースは私のだからね」
「え」
「名前さん、五条先生食べちゃった…」
「………じゃあいいや」
「ありがと!」
「他名前さんのない?食べて大丈夫?」
「あーいいよいいよ。気にしない気にしない。でも甘いの欲しい…」
「じゃあ俺プリンあるからそれ食べてよ」
「いいよ、虎杖くんお食べ」

流石に子供から食べ物を貰うところまで落ちぶれてはいない。
小腹は空いたが空腹ではない。まあ口さみしいというかなんというか。
二人がやいのやいの言いながら食べているのをなんとなく眺める。
虎杖悠仁は宿儺の件がなければ、本当に普通の男子高校生ですごしていただろう。
コレを災難と言わずになんというのか。これが運命であるなら、神はいないのだと胸を張って言えるくらいに不幸な事だろう。
彼はとてもいい子である。素直で優しく、思いやりもある。
伏黒恵が言う善人の象徴と言ってもいいだろう。それは名前も関わって良く分かっている、こんな子が呪術師だなんて、死刑が決まっているだなんて残酷もいいところだ。

「……私、帰っていいかな」
「駄目!名前さん帰らないで!」
「私いる意味なくない?どうして私いるの?ここ高専だし他の呪術師いるしいいのでは?」
「一応は俺の見張りとして先生だったんだけど、今先生こんなで…」
「大丈夫、虎杖くん良い子だから平気平気。こんな五条くんでも一応は最強でしょ」
「ざんねーん!僕今この体分の事しかできないから全然最強じゃないんだよね。他の1級の呪術師から逃げられちゃった」

きゃは。と言わんばかりの勢いで五条が言う。
おい待て聞いてないぞ、と今度は名前の顔色が変わる。もしかしたら任務前の時点でそうだったのではないだろうか。
いや、その時では「七海くんに迷惑かけちゃダメよ」と言ったのでそこで七海が除外されたと思っていいだろう。しかし、それにしても。

「一人で両面宿儺は無理でしょ…………」
「大丈夫!それは大丈夫、安心してほしい。主導権俺だから!まあ、名前さんが居なくなると困るのは本当だけど…」
「ねえ、冥さん。冥さんは?冥さんなら金だせば来てくれるでしょ?」
「今海外バカンス中。僕だって連絡したけど『今バカンスなんだ、憂憂でもちょっと距離がね』だって」
「タイミング悪すぎ。じゃあ五条くん、特別手当出しておいて」
「いくら?」
「日当10万でどうだ」
「わかった
「名前さんの日当。前から僕の事に関係するのはそうやってお願いしてたからね」
「ほら、仕事だと思えば乗り切れることってあるじゃない?それよ」

大人って大変なんだね…。と子供らしい事を言う虎杖はかわいいなと名前は思った。

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