呪術 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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その日を嫌でも覚えている。
悟が禪院の血を引く子供を引き取って、先輩が引き取って世話をしていた双子に会わせた日だ。
子どもが4人集まってどたばたと騒いで、お昼にしようかをテレビをなんとなくつけたままにしていた時に流れた速報。
ああ、通り魔だって、恐いね。と会話をして美々子が「とおりまって、なあに?」と聞くから、ざっくりとした説明をした。そう、ここの誰にも関係の無い話だと思っていたから。
昼食をとっていれば急に番組が切り替わり、さっきの通り魔の事件を慌ただしく報道し始めている。
これは食事時、まして子供のいる前で流すものではないと悟に言ってリモコンで電源を切ろうとした時だった。

『被害者の10代女性と20代男性の身元が判明しました』

アナウンサーが告げた名前はよく知っていた人と同じだった。
先輩と、今日先輩と一緒に任務に出た補助監督の名前だ。
その名前を聞いて美々子と菜々子がテレビをみて「名前おねえちゃんとおなじなまえ…」と声を揃えて呟く。
すかさず悟が電源を切って「飯を食え!」と誤魔化す様に言うが、私の方が持っていた箸を落としてしまった。
それを見た悟が引き取った津美紀が「だいじょうぶ?」と声をかけてくれたが、上手く答える事ができたかは覚えていない。

「ごめん、ちょっと電話かけてくる」
「おう……」

震える手で携帯を持って、部屋をでる。
電話の先は高専。多分、間違いであると思うがあのニュースだ、安否確認をしても問題はないだろう。先輩の番号は知っているけど先輩は任務中、補助監督は知り合いだけど連絡先は知らない。

「も、もしもし。4年の夏油傑です…あの、今ニュースで」
『傑か。こっちも今状況を確認している最中だ、名前と連絡はとれていないか』
「今任務中だと思って、高専に、かけたんですけど…先輩と連絡とれないんですか」
『二人の任務先があの現場だ。帳も確認できない状態だ、今補助監督が向かっている。悟と一緒か?一緒ならそこで待機してくれ。わかり次第連絡する。間違っても勝手な行動はとるな、良いな』

「おい傑、なにしてんだよ。早く飯食えよ」
「え、あ…あ、ああ…」
「高専なんだって?どうせ先輩無事なんだろ」
「わからないって…任務地が、そこで、連絡、とれない、らしい。今他の補助監督向かわせて確認、するって…私と、悟は、待機してろって……」
「飯、食えるか。無理なら少し横になれ。ガキ4人は外に連れて行くから」
「待機だって、」
「近くの公園行くだけだよ、その酷い顔ガキの前は無理だろ」

しばらく風呂場でも籠ってろよ。と悟に肩を叩かれた。
悟らしくもなく私に気を使ったのだ。言われるままに風呂場、まではいかないが洗面所に籠ると確かに酷い顔だった。この顔じゃ子供の前にでたら子供ながらに気を使うだろう。
あの双子は特に。初対面である津美紀と恵だって驚いて気を使うだろう、津美紀はあれで気配りが子供ながらに上手くて驚いたのだ。
人の気配が消えたのを確認して携帯を握りしめて横になる。
好きに使っていいからね、と小さなリビングの隅に置いてある大きな薄手のブランケットを頭から被り連絡をまつ。
まだこない。
まだこない。
まだこない。
時間の経過がこんなに遅いのは何故だろう、任務だとすぐに終わるのに。
先輩にメールを打ってみる。返信はない。だって任務中なのだ、当たり前、そう、当たり前なのだ。先輩は真面目な人だから任務中に不用意に携帯をいじらない。メールが合っても返信しないは常だ。
ピピピピピピ!と携帯が鳴って誰かも確認しないで出る、確認する余裕などとうになかったのだ。

「もしもし!」
『傑か、あれからニュースは見たか』
「見てないです、先輩は」
『………いいか、落ち着いて聞けよ。まだあの双子には言うな』

窓や任務で近くに居た呪術師、および補助監督の情報によればあのニュースは名前と同行の補助監督で間違いない。

「う、そだ…」
『詳しい状況はわからないが間違いはない。病院に補助監督が向かった』
「先輩、だって、接近戦だって、」
『呪霊と人間では違うんだ傑。まだ待機だ、双子が今頼れるのはお前だぞ』
「でも、」
『これから私も向かう、まだ待機だ。不安なのはわかるが待っていてくれ』

数分後戻ってきた悟に電話の内容を話す。
悟は小さく「そうか、でも、いや、なんでもない」と子供たちに「手洗えよー」と保護者らしく言っている。
様子がおかしい私に気付いた菜々子が「どうしたの?」と聞いてくるが「なんでもないよ」という私の言葉には信憑性がないだろう。それでも菜々子は頷いて美々子と津美紀の所へ行く。
それから数時間後、悟は二人を連れて帰り、私は双子と先輩の帰りを待つ。
いつもであれば作り置きやら双子のお風呂、食事、翌日の準備までするのだが携帯が気になって何も手が付かなかった。テレビは恐くて見れない。双子がアニメを観たいと言っても「お昼の事件で、アニメは今日はお休みだよ」と適当な事を言ってしのいだ。
さいわい明日も休みだ、今日は勝手だけど泊まらせてもらおうと色々と借りて双子を寝かせた後にリビングで一人横になった。

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