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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「夏油くんがいるから大丈夫だよ」

だって夏油くん特級だもん。と名前はなんの根拠もなしに頷いた。
特級とはいえ夏油は学生である。特級とはいえ未成年なのだ。
それでも名前は「大丈夫、夏油くんは特級だから」と意味もなくただ「大丈夫」とだけ言う。そもそも名前の言葉にはなんの信頼性もない、ただの言葉でしかない。
精神がフラフラの状態での今の目の前の状況。
名前がどんなに良い先輩であっても、どんなに強くてもこの状況は変わらない。

「ではその双子を高専で保護します。それでこの村は助かるんですよね?」

どうして、そうなるんだ。と夏油は名前に問いただしたかった。
双子の小さな姉妹は檻に入れられて虐待。呪いはこの双子のせいじゃないのに、全部全部双子のせいにされて、元を断ったというのにまだ子供のせいにしている。

「だが…」
「その双子が居るから村が呪われるのなら、その双子さえここに居なければいいのです。高専で保護します。また呪いが発生するのであれば双子は関係がないでしょう?それにまた高専に依頼したらいいじゃないですか。厄払いができてそちらも助かるはずです」
「せんぱ…」
「大丈夫」

こんな村を壊滅させれば早いじゃないか。と口から出かけたことに夏油は気づいて口をつぐむ。それに気づいたように名前が夏油の汗ばんだ手を握ってまた「大丈夫」と再度呟く。
何が、とは言わない。それでも大丈夫とだけ。

「未成年のくせに、なにができるんだ」
「その未成年にこんなことをしていてる貴方がたはどうなんですか」
「……、」

少し時間が欲しい。と名前の思った以上の振る舞いに村の人間は少したじろいだ。
可笑しな話である。
名前を未成年のくせに糾弾したかと思えば名前が言い返せば何も言えないのだ。
そそくさと逃げ出る村人に監視目的に呪霊に追わせて、村人が出て行ったのを確認する。

「ごめんね、恐かったね。酷い事言ってごめんね」
「あ……」
「すぐ出してもらおうね。ここを出たらご飯食べようか、何が好きかな」
「…………、」

檻に近付いて膝を折って名前が問いかける。
しかし今までの仕打ちと、今の口論を見て双子は怯えている。
今まで自分たちより大きい人間には酷い事をされていたのだ。まして初めて見る人間が恐くないわけがない。双子はお互いを庇うように小さくなって震えている。

「……だいじょうぶだよ、先輩が、だいじょうぶだって言うから」
「夏油くん?」
「私は夏油傑、こちらは先輩なんだ。君たちを助けたいんだ、協力してくれる?」
「………」
「恐い事はしないよ、だいじょうぶ。先輩がいるからね、ここから一緒に出ていこう?」

夏油が優しく言うと双子はお互いを見てから小さく頷く。
それを見た名前が「子供にも通用するイケメン…」と引いた感じで呟いた。





「と、いうことで保護しました」

はいいい!!??という補助監督の叫び声に名前は少し誇らしげに、夏油は苦笑いをし、双子はビクビクとしていた。
補助監督は捲し立てる様に「何を考えているんですか!」「保護!?は?!保護ですか!!??」「手続きにどれだけ時間と費用が掛かると思っているんですか!」「勝手な行動は止めてください!」「学生がなに勝手な…」と今思い当たる問題をこれでもかと名前にぶつけてくる。
それには夏油も同じ思いだし、名前も同じだろう。
でも、それでもこの双子をここに置いておいてはいけないと思って名前は行動に移したのだ。

「……これ依頼者からクレームものでは」
「クレームで人に命がふたつ助かったのなら、いいじゃありませんか」
「はあ…まさかこんなことする子だったとは思いませんでした」
「私もそう思います、先輩案外大胆ですね」
「へへへ…」
「褒めてませんからね!子供服買って銭湯かどこかに行って食事して戻りますよ。あー報告書どうしたらいいだ…夜蛾さん、いや、学長?」

ああああああ。と文句を言いながら補助監督は「早く車に乗りなさい」と4人をせっついてエンジンをかけた。
いくら小さいとはいえ後部座席に4人はキツイので夏油が助手席に乗り、残りが後部座席に。小さい身体には見合わないシートベルトはとても可愛いのだが、双子の顔は暗い。
状況が飲みこめないのだろう。仕方がないといえば仕方がないが、あそこに居るよりも何十倍もマシである。
でもそんなことなどあの双子は知らないのだ。

そして夏油はなんとなくではあるが名前が「大丈夫だよ、夏油くんがいるから」という意味がわからなくもあって、わかるような気がした。
もしかしたら名前は夏油本人ではなく、その向こうに居る五条悟を頼っていたのかもしれない、と。

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