呪術 | ナノ
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「冥さんと庵先輩戻ってないの?」

嘘でしょ?と言わんばかりに名前は驚いた。
確か二人が任務で出かけたのは名前が実習で数日空ける前の日。任務内容だってあの二人で難しいとは言えないもので、戻ってきたら一緒にレンタルした映画を観ようねと話していた程度のはず。
ましてあの冥冥が一緒なのだから名前が驚くのも無理はない。

「そうなんです、それで私達が行くことになって」
「大変だね…」
「おい傑、早く行くぞ。んな先輩構ってんじゃねえよ」
「硝子ちゃんは?」
「先に補助監督のとこに。じゃあ先輩、また後で」
「頑張ってねー」

ひらりひらりと手を振る名前。
名前のひとつ下の学年の3人。他人に反転術式を使える家入硝子、学生ながら特級を持つ五条悟と夏油傑。
言えば問題児の学年である。
名前は五条以外とはまあ普通の人間関係だと言っていいだろう。五条は性格に難があるのでできれば関わりたくはない。言えば自分、そして自分と同じ特級である夏油以外を見下しているのだ。
名前だって何度嫌味や嫌がらせを受けたかはわからない。先輩である庵歌姫なんて名前以上にその被害を受けている。彼女も彼女で五条と関わらないようにしたらいいのに、良いように構われては酷く怒っているのだから、まあもしかしたら楽しんでいるのかもしれない。
見送って数時間後、無事に救出された庵を連れたあの三人が寮に戻ってきた。
どうやら無事らしい。

「庵先輩!」
「名前…」
「庵先輩遅いから映画借りてきちゃいましたよ。後で一緒に観ましょうね、硝子ちゃんも」
「何借りたんですか」
「3人で面白そうって言って観に行けてなかったヤツ!レンタル開始してたの」
「うっわ、そんなん観んの?面白くねー」
「うっさいわね!アンタの趣味なんてどうでもいいのよ!」
「あーそれ。私も気になってたんですよ」
「男子禁制に決まってんだろ。女子寮で観るに決まってるでしょ」

じゃじゃーん。と読み上げた少し前に話題になった映画の題名。
疲れていた表情をしていた庵がニコッと笑い、その顔を見た家入も安心した表情になる。
女性の呪術師はかなり数としては少なく、また男性呪術師から酷く扱われることがある男性社会である。なので女性同士の呪術師はそれ故に結束はかなりある。
名前も入学したての時はかなり上級生であった庵や冥には世話になっているので、その関係もあり、女性たちはお互いをかなり気にかけているのだ。

「お菓子もジュースも用意済みです!色々終わったら部屋行きましょ」
「うー名前…なんていい子なの…よし!お風呂入って報告書の下書き終わらせたら部屋行くから!」
「はーい」
「じゃあ私も風呂はいってきますね」
「うん。硝子ちゃんもお疲れさま」
「なー、せんぱーい」
「ないでーす」
「なんも言ってねえだろ」
「どうぜ五条くんはお菓子たかるつもりでしょ。残念、しょっぱい系だけでーす」
「んだよ、後輩いたわれよ」
「先輩敬ってくれたら考える」
「はぁ?意味わかんね」

あいにく、いやわかっていて名前は共同スペースにはお菓子を持って来てはいない。あの五条といえど、さすがに女子寮の方までは入ってこない事を知っているからだ。
前になんだったかの時にバレて夜蛾先生にしこたま怒られていた事が効いているらしく、それ以降は庵が女子寮に逃げ込むとそれ以上に追ってくることはない。小学生か、と言われそうだが実際そうなのである。
名前の言葉に盛大に舌打ちをした五条は「あー疲れた!どっかの先輩がヘマした知り拭い疲れたー」とワザと大声をあげながら男子寮に向かう。

「夏油くんは部屋行かないの?」
「喉乾いたので冷蔵庫でお茶持って行こうと思って」
「夏油くんもお疲れ様だったね」
「そうですね。先輩実習はどうでした?」
「うん?いつもの通りだよ」
「優秀じゃないですか」
「はははは、特級の後輩に褒められた」

言えば名前は普通の学生である。
それに対して特級である後輩は異例も良いところだろう。名前がおかしいのではなく、後輩の2人が異例中の異例なのだ。
過去にも特級の学生は居ただろうが、2人も揃うなんてことはなかったはずである。
そうでなければ名前が1年ころ、次の学年についてあんなにも教員たちが会議だ会議だと騒がなかったはずである。
1番の問題はあの五条だとは思うが。五条家出身の六眼持ちという事を庵に教わり、名前の感覚としては「へー、すごーい」でしかなかったが、実際を見てわかった。色々と企画外なのだという事が。

「その映画、明日私も一緒に観たいんですけど」
「明日?」
「ここで観ません?明日私オフなんです、先輩もオフでしょ?返すのは私行きますから」
「んー…まあ、いいけど…夏油くん、こういう映画好きなの?」
「まあ、ちょっと興味ありまして」
「ふーん…なんか意外」
「そうですか?」
「うん。」

じゃあ明日一緒に観ようか。と言えば夏油は「はい」と頷いた。

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