呪術 | ナノ
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「あ」
「え」

五条くんなんでも出来て腹立つわー。なんて笑っていたら名前の目線がストンと落ちた。
いや、落ちたのではなく背が縮み、違う。縮んだのではない。元に戻ったのだ。
低い声はいつもの声に、高かった背はいつもの高さに、骨ばった節々は女性特有の丸みを帯びた。

「………、戻った?」
「戻った、ね…」

世話になって1週間以上経った頃。
今日は名前さんリクエストのご飯だよ。と五条が名前に手料理をいつもの様にふるまっていた最中の事だった。
名前がいつもの様に頬張り、「美味しいよ」と言って笑っていた時だ。
何の前触れもなく、名前の身体が戻った。

「まって、トイレ行ってくる。確認する」
「後でよくない?ご飯食べよ」
「ご飯も食べたいけど確認して硝子に連絡する!」
「お行儀悪いよ」
「五条くんにお行儀で説教されたくないです」

食卓をたって長いズボンを引きずって急いでトイレに駆け込む。
バンと音を立てて開閉したトイレのドア、いい笑顔で名前が駆けだして「戻った!!」と喜んでいる。

「おっぱいもあった!」
「あるねー。ノーブラだね」
「スケベ!」
「服どうする?明日でいい?」
「んー。とりあえず硝子に電話する。今日泊まっていい?」
「いいよー。ご飯名前さんの為に作ったし」

とりあえず着替えてくる。と名前は宛がわれていた部屋に戻って着替えを始める。
戻った時の為に七海と自宅に戻ったのは正解だった。そうでなければ他人の家で男物の下着からなにやらで過ごすことになっていたのだ。あの時の七海の提案を受けて本当に正解であった。後日礼を言わねばと名前は心に決め、七海は何が好きだったなと考えながら食卓に戻った。



「本当に戻ってる」
「やっとだよ」
「まあこれでこっちも居心地悪くなくていい。歌姫さんに言ったら嘆いてたよ」
「え、硝子言ったの?」
「電話のついでに。傑にそっくりだと言ったら酷い声で叫んでた」
「歌姫さん五条くんと傑かなり嫌ってたもんね…」
「ははは、よく『どうして名前がお姉ちゃんであんな弟できるの』って言ってましたね」

そうそう。と採血が終わった腕を抑える名前。
補助監督に言っておくねと五条が言ったのでそれに甘えて朝一で名前は家入がいる医務室に直行した。昨夜連絡していたので検査の準備は万全、「おはよう」の挨拶と同時に様々な検査が開始された。

「ま、後遺症もないみたいだし。今回は終わりかな」
「散々でした」
「新田からの連絡には驚かされました。七海も驚いたでしょ」
「私が被害者なんですけど。ま、二人には迷惑かけたけどさー」
「名前さんの任務も他に任せたりしましたね」
「その辺りは私の責任じゃないし。生きてるだけ感謝してほしい、死んだら任務なんて全部できなんだし」
「名前さん繊細なのか図太いんだか」
「時と場合によるの。だって私傑のお姉ちゃんだもん」

間違いない。と家入も笑う。
もう厄介な呪いなんて受けないでくださいよ。という余計なひと言を貰って名前は学長に戻った報告を終わらせて補助監督が居る部屋を覗く。
後輩である伊地知にも迷惑をかけたが、一応新田にも挨拶をした方がいいと思ったからである。

「おわー!名前さんじゃないっすか!マジで戻ってる!マジで!!」
「朝から元気だね…」
「さっき五条さんから聞いたんすよ!戻っちゃいましたね…」
「なんで残念そうなの?」
「だって…」
「あ、やっぱいい。言わなくて。戻ったよって言いに来ただけだから」
「今日から任務復帰っすね!」
「そうだね。伊地知くん探さなきゃ」

伊地知さんならあっちに居ますよ。と新田が軽く伝えてくれたので名前は言われた場所に向かう。
伊地知が補助監督で一番偉いわけではないが、後輩であり半分五条担当になりつつあるので、まあ補助監督の中でもある意味地位がある。ついでのあの世代で唯一の補助監督なのだから贔屓目に無しにしても優秀で無いはずがない。

「あれ!名前さん!?戻ったんですね」
「猪野くん、おはよう。昨日戻ったんだー、伊地知くん知らない?」
「はい、なんでしょう」
「伊地知くんおはよう。五条くんから聞いてると思うけど、戻りました!色々ごめんね」
「いえ、その分五条さん真面目に任務してくれましたので…こちらとしても、有難かったというか」
「おはようございます、戻れて良かったですね」
「あ、七海くんおはよう。昨日五条くんとご飯食べてたら戻ったんだ」
「………、そうですか」

そうなの。と名前はいつもの調子で返事を返す。
すこしの七海の間が気になるところではあるが、まあ前からこういう性格なので聞いたところで「いえ、別に」と適当にはぐらかされるのは目に見えている。
付き合いも10年くらいになれば嫌でもお互いのクセやらなんやらはわかるというものだ。

「あ、じゃあ飯行きましょうよ」
「いいねー。伊地知くんも一緒に行かない?猪野くんオススメのお好み焼き屋さん」
「ははは…嬉しい誘いではあるのですが、ちょっと難しいですね。またの機会に」
「そっか、残念」
「名前さんは今日から復帰ですよね、そんな余裕でいいんですか?」
「ばかすか任務だって入らないだろうし、大丈夫だよ」

名前の読みがあたり、任務はあるものの、言えば予定外の人手になったので任務は滞りなく終わり約束していた3人で食事を楽しんでいた。
いたのだが、名前のスマホが鳴り「名前さん!?今どこ?なんで帰ってこないの!?」と開口一番名前の耳に鳴り響いた。

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