呪術 | ナノ
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「やっべー!!名前さんめっちゃかっこいい!!」
「うーん、複雑」

翌朝スマホが鳴り、ディスプレイには伊地知潔高の名前。
名前が出れば「学長からも許可でたので本日から任務再開してください」とのこと。
まあ休んでいてもやる事がないし、調度良い。そう思ってその事を五条に言えば「そんな時くらい休めばいいのに…真面目だね」と若干呆れられた。
事情は新田が報告してくれているから服も用意してある、来たら学長室へと言われて五条と共に高専に行き、名前は学長室へ。
学長には少しばかり嫌な顔をされたが心中お察しという事でお互い謝って終わり、である。
そして任務ではあるが、その姿では少々問題がある…という事で五条の補佐という名の使い走りとなったワケだ。そしてその使い走りの仕事、学生の実習に付き合う監督に任命された。

「すげー!名前さんなの?マジ?」
「マジマジ。中身は名前さんというか、名前さんが男性化した」
「名前さん、凄く背が高いんですね…女性のままでも身長あったけど」
「名前さんの男性化…また厄介な呪いですね」
「ま、この背格好で名前さんの口調というか、女性の言葉使いだけど我慢してね!」
「うるさいな!悪かったな女口調で!!元が女だから仕方ないでしょ」
「オネエとかとはまた違った感じ」

服装は教師と同じもので、サイズもまあまああっている。靴もあるから本格的に教師の服装になっている。
しかしまあ中身は名前だといえ、外見がそうではないから名前を知る人間には違和感しかないだろう。

「名前さんなら補助監督でもいけそうじゃね?」
「確かに!スーツ姿とか絶対似合うわ」
「それね、考えたんだけど免許証が…」
「本人確認がとれない、と?」
「うん…」
「まあ…性別がもう違うの致命的ね…」
「この顔でスーツなんて完全堅気じゃないよね!」
「白髪目隠し男に言われたくない…」

それな。と1年生の声が揃う。
流石に車の運転時には目隠しはとってサングラスではあったが、日本人離れしている事には変わりない。絶対にないとは思うが、その五条が補助監督でスーツとなれば名前を笑っていられないくらいに堅気ではない雰囲気がこれでもかとでる事だろう。
もし名前が元に戻って、もし仮に五条が補助監督になれば絶対にその車には乗りたくない。色んな意味で。七海も絶対にお断りだろう。

「で、名前さんは何すんの?授業?」
「私は五条くんの使い走り。今日は野薔薇ちゃんの実習監督でーす」
「私の?虎杖とか伏黒じゃなくて?」
「恵は単独任務、悠仁は僕と機能訓練。野薔薇は他の呪術師のサポートだんたんだけど、名前さんの任務をそっちに回して野薔薇は実習訓練になりました」
「私のせいでごめんね」
「全然!嬉しい!」
「いいなー釘崎。俺も名前さんと実習訓練がいい」
「僕じゃ嫌なの?悠仁」
「名前さんめっちゃ褒めてくれるから嬉しい」

でも今男だよ。という五条の言葉に学生は「関係ない」とすっぱりと切り捨てた。
伏黒とは長い付き合いで言えばプライベートな部分も知っているからやりやすい、という部分もあるだろう。釘崎は同性の呪術師が少ないから、という部分。虎杖はただ褒めてくれるという部分だろう、七海よりも褒めてくれるし五条より駄目だしが少ない。

「…褒めたっけ?」
「めっちゃ良い子って言われた」
「メイク褒めてくれる、可愛いって言ってくれる」
「正直先生より頼れる、安心する、相談できる」
「どういうこと!僕の生徒たぶらかして!」
「いや、これ全部五条くんだってできるやつ」
「僕も褒めて!」
「そっちかー」
「名前さん、実習行きましょ。クズの相手より私の相手して」
「きいー!サトコ負けない!」
「勝負にもならんでしょ。俺も任務行くわ」
「応!先生、訓練しよ」
「え、みんな僕を無視するの?酷くない?」

釘崎は名前の手を引いて歩きだし、伏黒も任務に向かうために歩き出す。
残った虎杖は五条の周りを早く早くとはやし立てるように騒いで急かす。




「はい、お疲れさま」
「お疲れ様でーす」
「じゃあ野薔薇ちゃんは今回の報告書の制作。終わったら五条くんに提出してね」

実習訓練が終わって高専に戻り、いつもの調子で報告書を書いて提出するのを伝える。
いちいち言わなくても良い事だが、監督という立場上仕方がない。名前も学生の時はいちいちうるさいなと思ったいてが、呪術師として活動しているとその一言一言が有難かった事に気付いた。
少し年配の補助監督は何とも複雑そうな顔をして実習に付き合って、早々に車を引き揚げてしまった。
実習監督というからには監督した報告書がいるわけだ。
それをさっさと書いて出してしまえば名前の今日の任務は終わりである。普段より楽なのだが、この格好は全く楽じゃない。
高専の空いている部屋で報告用紙に書き込み始める。普段の報告書であればパソコンなのだが生憎実習監督自体回数が少ないので手書きをしている。男の手は自分の物である、というのを何度名前の頭で考えても視覚と脳が一致しなくて驚くことは何回目だろうか。名前は大きく溜息をついた。

「あ、新田さん」
「うお!……って名前さんか」
「あ、なんかゴメン…驚かせたみたいで」
「いやいやいや…どうかしたんすか」
「報告書の提出と、昨日の件を新田さんに」
「へ?私っすか」
「この体の件、大変だったでしょ?ごめんね」
「な、なんてことないっすよ!へ、へへへ」

報告書の提出を早々に終わらせて、補助監督が居る部屋を覗いて昨日担当だった新田を見つけて声をかける。
昨日からではあるが、少し彼女の様子がおかしい。

「これ、お詫び」
「え!いいいいい良いんすか」
「まあ、自販機の、ラテですが……」
「ありがとうございます!!」
「元気いいね、どうしたの」
「へ!?な、なんでも!?」

うん?と名前が頭を傾げれば「なんでもないです!失礼します!」と走り去ってしまった。

「えー…なに?」
「大方照れているのでは」
「わ。七海くん」
「夏油さんは色男でしたからね」
「傑?」
「ええ。それに似てる今の名前さんがそうなっても不思議じゃありません」

えー。と声をあげるが、七海が嘘を言うとは思えない。
ただそれに頷くほどのプライドは名前にはない。
確かに名前が覚えている限り弟の傑はモテていた。

「任務終り?」
「いえ、これからです」
「一人?」
「猪野くんがサポートで入ります」
「猪野くん、私見たら驚くかな」
「驚くでしょうね。いつ頃戻れそうですか」
「わからない。これから硝子の所行ってみるけど、昨日から連絡ないからかわってないんじゃない?」
「そうですか」
「この身長になったら七海くんの顔が近いね」
「何が言いたいんです」
「いい男の顔が近くて役得…、いや、違うな。眼福」
「………、早く戻れるといいですね」

本当に。とこればかりは名前は真面目に頷いた。

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