呪術 | ナノ
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「とりあえず五条さんに見つかると面倒です、家入さんをここまで呼んで来ます。新田さんは名前さんの万一の為の着替えを。そうですね、男性用でLL位でしょうか…一応下着も一式お願いします」

とんだトンチキな呪いもあったものだと七海は大きな溜息をひっそりとついた。
任務が一緒だった名前が悪質な呪いによって体を変化させれてしまったのだ。
元が女性だった名前は今現在男性の体へと変化させられ、身長も伸び、声だって変化している。何が厄介かと言えば、そう、弟の夏油傑によく似ているのだ。
背格好は元より、血の繋がりがあるが故に似ている。そっくりとまではいかないが似ている。あの男を知る人間であれば所見で間違える程に、だ。もし名前が男で兄としていれば、似ているのだと改めて目のあたりにさせらている。逆に夏油傑が女であれば姉である名前と似ていたのだろう。
話を戻すが、その男性化してしまった名前は今まで女性物を着ていたのでかなりキツイのだ。物理的にも視界的にも。言えば男性が女性物をギッチギチの状態で着ている状態である。
任務が終わったもののその呪いは解けず、補助監督として同行していた新田は名前の姿に悲鳴をあげた。
靴だってサイズが違うので脱いで裸足状態、上も下もサイズが合わずに上を脱いで腰に巻き、パンツのジッパーは下がっているのをそれで隠していたくらいだ。
流石に上の下着はおさまりが悪いと外していた様ではあるが。

「…うっわ、マジか」
「硝子ぉ…」
「声まで似てるとかウケる」
「笑い事じゃないよー」
「いや、マジそっくりじゃん」

新田が来るよりも早く家入の方が早かった。
高専の一室を借りて家入を呼び、中で待機していた名前を見た瞬間の家入の表情はなんとも複雑、その一言だった。
離反した同級生の姉、仲は良好。その人が男性化してみれば同級生にそっくりとくれば、もう、笑う他ないだろう。それ以外にどうしたらいいのだろうか。

「パッツパツじゃん」
「だってサイズ無いんだもん」
「その声と格好と顔で『もん』とかキッショ」
「硝子がいじめる!」
「家入さん、名前さんご本人ですよ」
「つーか、マジで夏油っぽくて笑える」
「笑い事じゃないよ」
「でもさ、今診て戻ると上裸だけどいいの?」
「七海くんが出ればいいと思う」
「あ、それもそうか。じゃあ七海出て」
「はい」

言われて七海は部屋の外で待機する。
姉の名前は弟の傑は血縁だけあって似てはいるが、男女の差というのだろうか。それがあってそっくりとまではいかないが血の繋がりを感じる程度には似ている。
それが男性化することによって本当に似てしまうのだから男女の差と言うのはかなり大きいのだとわかってしまった。
何が不味いかと言えば、弟の傑は離反している。そして死んでいる。
そして特級の五条悟と親友だった、という事だろう。
五条悟自身は名前を慕っていたし、弟の離反に置いて名前を庇護した本人でもある。

「七海さん!」
「…新田さん」
「これ、言われた物一式です。名前さんどんな感じですか」
「今家入さんが診ています」
「とりあえずパンツはボクサータイプにしたんですけど、いいですかね」
「それは個人の好みなので…」

新田に頼んだ一式。
家入に診せればすぐに戻るとは思うが、万が一という事もある。また解除不可能、という可能性は考えたくはないが時限性という可能性も無きにしも非ず状態である。
呪いというものは全く面倒である、体をどうにかしたり、精神に影響をおよぼしたりと様々で。

「おい、」
「…はい」
「名前さんの着替えある?男モン」
「新田さんに頼んで用意してもらいました」
「これっす!男性モノって……名前さん、男性のままなんすか」
「まるっと組み替えられててね、こっちの術式がまるで通用しない。暫く様子見の研究対象って感じ。じゃあコレ貰うよ」
「うっす」

紙袋に入った一式を家入が受け取り、中に居る名前が受け取ったのだろう。
暫くして家入と男性化した名前が出てきた。見れば足だけは裸足のままである。

「七海、お前靴名前さんにちょっと貸せ。サイズみるから」
「ごめんね七海くん」
「いえ、お気になさらず」
「ひゃー、名前さん改めてみると大きいっすね」
「目線が高いの慣れないよ…ちょっとつま先が当たるかも」
「では私のワンサイズ上でしょうか。服や下着に不都合はないですか」
「服は平気。新田さんありがとう、助かりました」
「やべー!良い男!」
「え」
「まあ夏油もモテてたからなクズだけど」
「では靴は私が用意しましょう」
「いつ戻るかわからないしサンダルでよくない?」
「任務はどうするんです」
「この格好で出来ないでしょ。そもそも五条くんに見つかったら殺されるかもしれないし、何より2年生に見つかったら……」

あー。と家入と七海は声をあげる。
去年の夏油傑の襲撃で一番の被害を受けたのは現在の高専2年生の学生達である。
事情を話して理解してもらったとしても、心情はなかなか変わらないだろう。どこまで行っても名前にとって傑は弟であるように、2年にとって夏油傑は憎い。

「まあ名前さんのスケジュールやなんやらは新田、何とかしろ」
「え、私ですか」
「この件担当だろ。難しいなら伊地知に相談したらいい」
「うっす…」
「で、名前さん今の部屋帰れる?」
「帰れない事はないけど…ご近所さんに怪しまれると思う…住民じゃなくて男が来るしんだし」
「では私の家でよければ。幸い部屋も余っていますので」
「ごめんね七海くん…」
「断らないんだ」
「ご近所さんに怪しまれるより断然いい…隣のお姉さんとか絶対警戒されるし…2、3回くらいなら兄やら弟で誤魔化せるけどさ」

あー…。と消えそうな声をあげる名前。
すると不意に名前のスマホが着信を告げる。

「うげ」
「誰っすか」
「ごじょうくん…どうしよ…」

地獄。と家入が笑うが、まさに地獄だなと他の3人も思った。

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