呪術 | ナノ
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※高専


「今日の任務傑と一緒だ、久しぶりだね」
「そうだね、長い事姉さんとは一緒じゃなかったもんね」

学年が違えど一緒になる任務はある。
そもそも名前の弟の傑は特級という規格外の特別な等級であり、いち学生の名前が一緒にするような任務は言えばほぼない。
同じく特級である名前のひとつ下の学年の五条悟と傑は親友で、任務はいつも二人一組。そこに他の学生や呪術師が介入することはほぼなかった。

「でもなんでだろ。傑特級だし五条くんといつも一緒なのにね」
「さあ?でも姉さんと一緒でよかったよ。後輩とか先輩とか面倒だし」
「なにそれ。私だと気を使わなくていいってこと?傑ひどい」
「姉さんと一緒で嬉しいって事」
「嘘だー」
「嘘じゃないよ、姉さんには私がそんな嘘つくような男に見えるの?」
「うん」
「姉さんこそ酷いじゃないか」

あははは。と姉弟のじゃれ合いをしながら資料を持って補助監督が待つ車に乗り込む。
場所は車で小一時間。少々遠いとはいっても泊りがけにもならない、対して大変でもない任務のはず。
こういった事は名前には慣れたものだが傑は違う。特級ともなれば学生が受け持つような小さな任務なんてないはずである。

「資料にあるとおり、今回は少し厄介で」
「厄介?だから傑と一緒なんですか?」
「まあ、そんなところです。学生で対応できると上はいうのですが、住民がそんな学生ではという」
「あー。それで私と傑なんですね。傑なら学生だけど特級だし、一人だと煩いから二人」
「バランスだね」
「そんなところです。あちらも学生でも特級であれば、とのことで。一人だというと難癖を付けられそうで」
「じゃあ傑のお仕事だ。私はサポートです」
「一緒に任務やろうよ」

なんてことのない。
いえば二人は姉弟で、仲が良い。姉は姉で弟と可愛がっている。その年特有のお互いに距離をとる事もなければ、ケンカもない。補助監督の間でも夏油姉弟は仲が良くて見ていてなんだか癒される、などと言われるくらいである。
あの問題児とされる五条悟のブレーキになるのが夏油傑。夏油傑が姉を大切に扱うから五条悟も同じように夏油名前を扱うというのも高専では当たり前の様に周知されている。その二人が高専外にいるが、五条悟も珍しく一人で現在泊りがけで任務にでて不在である。
車に揺られて依頼された現場につき、資料にあったと通りにぐるりと辺りを一周する。
大きな大きな廃墟。以前ここは工場団地があってそこに勤めていた住民が住んでいた場所らしい。現在はその団地は壊されているのだが、ここの建物だけが取り残されている。理由は詳しくは書いていなかったが、いつの間にやら不良のたまり場や肝試しスポット、そして呪霊が出るようになった。いえば呪霊にとってとてもセオリーな場所となっている。

「では帳を降ろします」

ゆっくりと帳が降りる。太陽は消え、夜の領分。空気は重く、そしてまとわりつく。
呪霊がとても活発になる時間、そして空間。

「じゃあ行こうか姉さん」
「おー!でもさ、傑の呪霊が索敵したほうが早そう」
「でもこれ、人が入ってやっと出るみたいだし」
「呪霊なのに人恋しいのかな」
「さあ?でもまあ寂しいのかもね」
「人が住んでたんだもんね、寂しい気持ちも溜まっちゃうか」

終ったらコンビニでアイス買って食べようか。ともう帰る話をする名前。
実際特級がいるのだから早く終わるはずなのだ。いつも学生が四苦八苦してやっと終わらせる任務に年下ではあるが名前よりはるかに高い等級の弟がいる。
傑も傑で任務内容からして自分が居れば即終わると思っているので名前の提案に「それいいね」と賛同する。いつもつるんでいる悟ではなく姉の名前の提案だと言わんばかりに。

「今期間限定のアイスがあるの。この前硝子ちゃんから一口貰って、凄く美味しかったからそれ食べたいんだよね」
「へえ、硝子と」
「うん。それ、ふたつあるんだって」
「じゃあ私と半分子しようか」
「あ、いいねー。じゃあ決まりね」
「うん、決まり。そうと決まれば早く終わらせよう姉さん」
「さんせーい!傑、呪霊貸して。二手に分かれよ」
「一人で平気?」
「大丈夫。傑の呪霊いれば安心でしょ」
「私じゃなくて呪霊なの?」
「どっちも」

姉さんそういうとこあるよね。と名前にはわからない一言を言いながら呪霊を一体。それを貸してもらい名前は傑と別れて依頼の呪霊を探す。広い中でもたった一体の呪霊が依頼主を悩ませ、不良や肝試しといった面倒な事を集めてしまうのだから質が悪い。
されど一体、というのこの呪霊の悪い部分である。弱ければ群れをなすが一体という事はそれなりに強いのだろう。ただ同じ呪霊が群れていて、それが複数いても点在していたから一体だけという資料の可能性も捨てきれない。
だからこうして二手に分かれたのだが。



「うーん、一体だったね」
「案外大変だった。傑から呪霊借りてて良かったよ」
「そうだね。まあうっかり倒しちゃって取り込めないけど」
「一体くらいいいよ。美味しいの食べよ」
「まあ、一体くらい、いいか」
「うん。お姉ちゃんが特別に許しちゃう」
「ははは、じゃあその言葉に甘えようか」
「甘えちゃえ。傑は良い子でいつも頑張ってるから、特別なんだよ」

何気ない一言だった。名前からしてみれば何気なくて、当然傑からしても何気ない。
傑は良い子だから。何度言い慣れ、聞き慣れた言葉だろう。
その言葉に二人で笑い、帳が上がるのを確認して補助監督が待つ場所に向かう。
補助監督が二人を見つけると怪我はないか、他にトラブルはなかったかといつもの確認がはいる。それにいつもの様に答えて帰還する。
帰り道にコンビニに寄ってもらい、約束していたアイスを買って二人で食べる。勿論補助監督にもアイス、というわけにはいかないのでアイスコーヒーを差し入れにして。

「また姉さんと任務あるかな」
「どうだろうね、傑特級だからなー五条くんといつも一緒だし」
「私達最強だからね」
「あははは。そうだね、最強だもんね」

また姉さんと任務したいな。と傑が言えば、名前も「私もまた傑と一緒に任務あると嬉しい」と笑って返した。

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