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「名前、もう少し悟に優しくしてあげたら?」
「やさしく…?」

伏黒と式神と呪霊を使った自主練をするというのでその監督に名乗り出た夏油が休憩中に名前に言った。
言われた名前は名前で「や、やさしく…?やさ、しく?」と何度も繰り返し、一緒に訓練して休憩中の伏黒は「十分優しいともいますけど、もっとですか?」と夏油に聞き返している。

「悟が昨日嘆いていたんだよ、名前に嫌われてるって」
「嫌ってないです、好いてもないですけど」
「こざっぱりしてていいと思います」
「ありがとうございます」
「うーん、これが五条家」
「かなり遠縁ですけど。そうなると憂太くんも五条家になりますよ」
「あー…」

現在特級は4人。五条悟、夏油傑、乙骨憂太、九十九ユキ。うち2人は五条家の関係者なのだから、まあ五条家の能力は素晴らしいという事だろう。
呪霊操術という少ない術式も家系内で発現したわけだし、現世では高専に2人。それもまた凄い確率となるのだろう。だからこそ同じ術式の名前は夏油にとっても可愛い存在といってもいいくらいである。

「んー、そもそも、金で買った人間に好かれる必要あります?」
「うわー、そこいく?」
「根本的な問題ですね。俺はそうしないと津美紀が酷い目に合うって言われたからですけど、名前さん違いますもんね」
「愛玩ではなく能力を買われたので、私は能力を伸ばす事の意義があると思うんです。そこに好き嫌いの感情は不要では?」
「名前本当ドライだよね。こっちまでかさつく」
「感情なんて要らないんです。辛いだけだから。だって好きだからって頑張って、裏切られるんですもん、それなら最初から無い方がいい」

持たなければ失いませんから。と10代とは思えない発言である。
それには夏油も思わず苦笑いをしているし、伏黒は伏黒で「そんなもんですか」と言っている。
夏油も伏黒も名前の境遇は知っているので言及はしない。
名前がそこまで言う理由も十分に理解しているからだ。それが不幸かどうかは名前が決める事であって、名前は十分に足掻いている途中だろう。あの五条悟の義妹として周囲からは様々な目で見られ、姉妹校の加茂にも同じ御三家同士と勝手に親近感を持たれてしまっている。

「先生、交流会私参加ですか?」
「ああ、特に理由が無ければ。今唯一の3年だし」
「交流会?」
「伏黒は1年だから知らないか。京都の姉妹校とまあ、簡単に言えばケンカするんだよ」
「ボコるんですか」
「ボコるよ」
「先生、要点を絞りすぎです。ボコりますけど」
「2日間あって1日目は団体戦、2日目は個人戦みたいな感じかな。1日目は呪霊を祓った数を競って2日目は1対1の殴り合い」

間違ってはいないけど…と名前は思ったがあえて口にはしない。
伏黒は元ヤンなので、まあわかりやすい説明だと思ったからだ。元ヤンといっても名前が直接知るわけではないし、それによって害があった事もない。暴力を受けたわけでもないし、伏黒は名前に対して友好的という事もあるが。

「東堂くんあたりは憂太くんリベンジしそう。肝心の憂太くんいないけど」
「まだ海外ですもんね、乙骨先輩」
「特級の先生が国内で学生の特級が海外って可笑しな話だよね」
「おっと、それは私に対する批判かな?」
「どうでしょう。夏油先生は言えば師匠になるので海外に行かれると私が困ります」
「悟は?」
「まあ、別に。でも1年の担任が居なくなるのは困りますね、多分」
「出張で居ない事多いんで、別に困りませんよ」
「おっと伏黒まで悟に冷たいな」
「虎杖くらいですよ、五条先生に優しいの」
「悠仁くんは誰にでも優しいからね」

あははは。と笑う名前と伏黒。実際に五条悟に優しいのは虎杖だけといっても過言ではないだろう。釘崎も優しいとは到底言えないし、去年担任だった2年生たちも優しいとは言えないだろう。そもそも先生らしい事をしてもらった事がないのだ。
呪術師としては特級ではあるが、人間としてはどうかと言われればほぼ口をそろえて「クズ」という答えが返ってくる。
一般家庭出身の特級である夏油も「まあ…うん、一般的にはなかなかいない人だね」と口を濁すだろう。一応は良識の範囲内では、であるが。

「そういえば名前さん接近戦対策ってしてますか」
「一応。夏油先生に稽古付けてもらってる」
「式神使いを叩けって言われるくらいだからね。対策はしておいて損はないし、何よりこっちに接近戦仕掛けて勝ったって思ったヤツの鼻っ柱折るの楽しいよ」
「………」
「………」
「え、なに?」
「いや…」
「やっぱり五条先生の親友って感じだなって」
「え…ん、まあ?実際問題式神や呪霊だけではどうにもならない事もあるからね。対策は多い方がいい」

名前も最初に比べたら受け身も他も上達したしね。とちょっと焦る夏油。
五条が買ってきた当初に「この子傑と同じ術式だから色々教えてあげてよ。死なない程度に傑と同じくらいに」と言われて紹介されたわけだが。実際は普通の子で呪霊が見えて、同じ術式の子。言えば同じ術式と呪霊が見える以外は本当に普通の子だった。
なので鍛えたが、それはもう大変だった。体力もないし技術もない。投げれば受け身も取れないからすぐに骨折や怪我。すぐに泣く。
一応は優しく指導してみるものの、弱さはすぐに強さに変わる事はない。
いきなりこんな生活になって泣きたい気持ちはわかるが、それでも夏油に出来る事はそれだけだ。紹介した本人は「え、傑ならできるっしょ」と軽いのだから腹が立つを通り越してあきれてしまった。

「夏油先生には色々お世話になりました」
「え、なに?恐いな」
「うで、あし、ろっ骨、その他諸々の骨を折られ、首をやった時は『お、これは死ぬな』と思った事もありました。生きてるけど」
「あ、そ、それは……」
「家入先生に『またか』と何度言われた事か。庵先生には『京都校にくる?』と毎年言われ、日下部先生には同情の眼差しを貰い、夜蛾学長には怪我をするたび飴を貰いました」
「学長やけに可愛いですね」
「専門店の飴くれるの」
「悟は?」
「げらげら笑って終わりですね」
「ああ、納得した。それじゃあ名前だってドライになるね」

うん。と夏油は頷いた。


※うっかり交流会前のネタにしてしまいました。

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