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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「あー名前じゃん、おかえりー。僕も海外から戻って来たばかりなんだけどさ。あ、1年には挨拶した?今年の1年も可愛いでしょ?僕担任なんだけどさ。そうそう野薔薇は初めましてだから紹介するね、3年の五条名前。僕の妹。あ、妹と言っても直接的な血の繋がりはなくて、遠縁の子。僕が買ったんだけど」
「は!!??」
「え?」
「今聞こえちゃいけない事が聞こえた気がする」

がらがらがと荷物が乗った台車を押して五条悟が京都校の生徒と教師、そして東京校の1年と2年と戻ったばかりの3年の名前の姿を見て言いたいことを言っていた。
釘崎が反応したのは「僕が買った」という言葉だろう。あまりの流れにスルーしかけたがスルーしてはいけないと気付いて咄嗟に声を上げたのだ。なんだいきなり「僕が買った」とは。

「釘崎、買うなんてこの世界じゃよくある事だ。俺も先生に買われている」
「は!?」
「ねえねえ真希、あの子1年生?」
「おう、釘崎野薔薇。今年の1年。もう一人はもうあってるからいいな?で、あと一人いたけど死んだ」
「死んだ!?」
「はいそこ静かに!お土産配った後でサプラーズ!」

あ、でも名前のはないや!ごめーん。と全く悪くなど思っていない五条がはしゃぐ。
どうせ碌でもないことを名前は知っているし、名前以外も知っている。正直もらわなくて正解な気がする。
そんな名前の考えて言えることなど気にする様子もなく変な人形を配り、最後の仕上げと言わんばかりに台車の箱を開ける。

「イエー……あ、あれ…?」
「……ん?」

2年3年がポカンとしていると響く京都校の学長の怒号。
そこで名前は「ああ」と納得した。アレが宿儺の器の子なのだと。
まあそもそもあの学長は五条悟を嫌っているのを名前は身に染みている。去年末の百鬼夜行や交流試合でも無駄に嫌味を言われている。



「俺虎杖悠仁!えっと、五条先輩?」
「名前さん、もしくは名前先輩って呼べ。悟と同じ苗字で可哀想だと思わねえのかよ」
「だって先生の妹なんでしょ?先生が言ってたし」
「血繋がってないのは聞いてないのかお前」
「え。聞いてない…複雑な、関係?もしかして」
「別に複雑じゃないよ。先生とは遠縁で、私に術式があったから買われたの」
「十分複雑じゃあん!!」
「真希さん!それ、ちょ」
「えっと、釘崎さん?初めまして、五条名前です」
「か、買われ」
「両親お金必要でさ、売られちゃった☆」
「「ぎゃー!!!」」

この流れは久しぶりだと名前は笑う。確か最初は憂太の時だ、今は海外任務だと聞いているが元気かな、と関係ない事思う名前。
まあ呪術師の世界に居ればこういう事はよくある事なのだと聞いた。現に伏黒恵も名前と同じく五条悟に買われている。初めて会ったのが名前が中学くらいの時だったので、まあ3年以上は付き合いがある。同じく式神使いという事で共通点もあり、当時からそれなりに仲は良い方だろう。

「名前」
「はい」
「この!変態教師!クズ!」
「え、なに…僕そんな事言わる様なことしてないんだけど」
「胸に手を当てて考えてみろよ」
「虎杖生き返ったこと黙ってたの許してませんから」
「え、サプライズじゃん。で、名前。報告書」
「カバンに入っていて…後で提出に行きます」
「ん、わかった」
「こんぶ?」
「ん?今回の任務の報告書だよ」
「え、なに?今の会話なん?」

なにそれ。と言わんばかりの虎杖に少し考えた風の名前。
名前には彼、虎杖悠仁に見覚えがある。

「ねえ、いたどり、くん?」
「うん?」
「もしかして、仙台出身?」
「おう!よくわかったね」
「………、もしかして、小学生の時、短い間だけど2つくらい上の女の子、いなかった?近所に」
「居た!……もしかし、て、名前、ちゃん?」
「………久しぶり、だね…」

虎杖の手、いや指がしたからゆっくりと上がり、名前を指す。
そして名前はそれを肯定するように頷く。
名前の妹が良い病院に入れる。という情報を急いた両親があまりに急かしすぎてまだ転院自体決まっていないのに引っ越したごたごたの時期の話だ。
仮住まいだと言われて投げられたアパートの一室。
転校の手続きだけして名前は学校に通い、帰宅していた時に出会った近所の男の子だった。
お爺さんと二人暮らしで、お爺さんが偏屈で、彼自体はとてもいい子なのだが、それで近所づきあいから少し距離があった子だ。
そんな事をお互い知らないから、名前が引っ越してから数か月は二人で穏やかな関係が続いていたわけなのだが。
まさか名前も憂太以外で再会するとは思っていなかったし、宿儺の器が彼だとも思いもしなかった。
資料では見ていたが、写真もなければ名前だって当時は「ゆうじ」という事しか覚えていなかった。

「このパターンはもう憂太くんでやったよ!二番煎じ!」
「え、なに?どうしたの」
「2年の乙骨憂太って特級がいるんだが、それも知り合いでな。で、お前はその次出てきた名前さんの知り合いだ」
「名前の友達再会率すげーな!全員厄介で!」
「明太子…」
「別に名前を馬鹿になんてしてないぞ!」
「で、名前さんは交流試合には参加するんですか?そのために帰ってきたんですよね」
「そのつもりだったんだけど、昨日の任務で呪霊取り込んだから今日は休みなさいって。悠仁くん居るし、私の穴埋めできるでしょ」
「えー!名前さん不参加かよ」

ごめんね。と謝る名前。
一応はそれが目的で戻ってきたのだが、昨日の任務の関係で名前は休めと言われてしまった。名前の使う術式は少々厄介で体の負担が大きい。それ故に大事をとれと言われているのだ。万年人手不足ではあるが、そこで人間一人消費してしまうのも馬鹿らしいとの判断だ。

「で、名前ちゃ…ん?…先輩?」
「どっちでもいいよ」
「よくない。名前さんを『名前ちゃん』なんて呼ぶの生意気なんだよ」
「真希…恐いからやめよ?」
「真希さんがそういうんだから馴れ馴れしいんだよ虎杖」
「先輩で1級の人相手にそれはない」
「え、名前先輩1級なん!?ナナミンと一緒じゃん」

ナナミンて誰…。となったのは言うまでもない。

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