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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「って事で、親戚だった乙骨憂太だよ」
「は、はははははは」

夏油傑が主犯となって行った百鬼夜行。
2年生であった名前は京都の現場派遣となり、事後処理を終えて東京校へ戻った。
移動時間を考えれば疲れは溜まっているし正直もう時間が何時であろうと眠りたかった。
そんな少しグロッキーな状態で寮に入ろうとした時に書類上の兄が「あ、名前おかえりー!」と腹が立つほど明るい声色で友人である憂太を引っ張ってきたのだ。

「………え?」
「だーかーらー、家と遠縁だったの。だから名前とも遠い遠い親戚になるね」
「……あ、はい……」
「えー?それだけ?」
「大丈夫?名前ちゃん顔色悪いけど…」
「うん、少し、疲れて……」
「特級2体くらい取り込んだんだって?早く寝なさい」

いや、お前が呼び止めたんだろ。という言葉が口から出かけたが、名前にはもうそんな事をいう元気も、言っては駄目だという理性も消耗していた。
名前は「はい、そうします…」とふらつきながら寮に入って行った。




「あれ?なんで制服黒いの」
「五条先生から聞いてない?」
「憂太のヤツ里香を成仏させたから4級なんだよ」
「え、そうなの」
「こんぶ?」
「うん、聞いてない…」
「名前ちゃん疲れてたからね、先生気を使ったんじゃない?」

それはない。と憂太以外の声が揃う。
それに関しては絶対的な理由と、今までの経験からしてあの五条悟が誰を気遣うなんてことはまずあり合えないという強い意志を感じる。
そもそもあの男は家族であっても、それがどこかで野垂れ死んでも気にしないだろう。それが自分で買った名前であっても、必ずそうとは言わないが、死んだところで「げ、死んだの。ざーんねん」くらいで終わらせるだろう。そういう人間なのだ。

「そっか、里香ちゃん…」
「うん」
「結局里香ちゃんに会わずに行っちゃったか。残念」
「え?」
「引っ越す時もさ、里香ちゃん熱があって休んでてさ。最後までそういう感じだったんだなって」
「そう、だったっけ…」
「前の日さ、ちょっとした言い合いになって。結局謝れず終いになっちゃった」
「なんでそんな悲しい話すんだよー!!人間の心わかんない!パンダだから!!」
「おい憂太!お前名前さんい謝れよ!勝手に成仏させてすみませんでしたって土下座して地面舐めろよ!」
「なんでそんな過激な事言うの真希!狗巻くんは一緒に土下座しようって誘わないの!」

突込みが追いつかない!と言わんばかりに名前はあっちにこっちにそっちに!と焦る。
ああ、ここの皆は名前が好きなんだなとわかる憂太。色んな意味で名前は普通だったから、だからこそこうして皆を好きになり、好かれている。

「あ、そうだ。私疲れててちょっと記憶が曖昧なんだけど、憂太くん遠縁になるの?私と」
「うん、そうみたい。五条先生が言ってたから、名前ちゃんとも遠縁だね」
「そっか…五条家ヤバいね」
「ああ、ヤバいな」
「しゃけ」
「特級二人だもんな。まあ憂太4級に降格だけど、一時的にも特級二人抱えた家だもんな」
「憂太くんも弟にしちゃえばいいのに」
「はー?名前さんこんなもやしが弟に欲しいのか?」
「同じ境遇の人がいるだけで嬉しいから。世の中ある程度の事はお金で解決できるって知ってしまったからさ」
「こら!名前、そんな事言っちゃダメ!パンダ怒るよ!」

もう。と名前の顔を大きな手…前足で包み込んでムニムニと揉み解す。
獣が生意気だと真希がパンダに一撃を喰らわすとパンダは「動物愛護精神どこいったの!」と意味の分からないことを叫んで飛び上がる。

「高菜!明太子」
「うん?」
「なんだ棘、自分だけ仲間外れって何がだよ」
「ツナ、明太子!こんぶ」
「自分だけ苗字だから?あー…そうだね、狗巻くんだけ狗巻くんって呼んでたね」
「……ツナ」
「棘くん」
「しゃけ!」

確かに名前は真希は真希、パンダはパンダくん、憂太は憂太くん。狗巻だけ苗字であった。
真希は苗字で呼ぶなと言われていたので名前で呼んでいたし、パンダはパンダ。憂太は小さい時からの友人でそのまま。
名前に「棘くん」と呼ばれてご満悦の狗巻は名前の手を握ってぶんぶんと降る。

「そういや名前は暫く高専にいるのか?」
「え、あ、うん。秤くんはまだ戻れないみたいだけど、私特級取り込んで、その様子見もあるから」
「棘止め!名前、身体障ると悪いから」
「おかか…」
「もう大丈夫だから平気だよ」
「ねえ名前ちゃん、ハカリさん?って?」
「秤くんは私の同級生。任務がかなり出来る人だから、飛び回ってるんだ。学生なのに凄いね」
「へえ…」

いつか会える日が来るかな。と憂太が言えば名前以外に「楽しみにはしない方が良い」と言われてしまった。

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