呪術 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「姉さん途中から戻ってたよね」
「バレた?」

12時のチャイムがなると同時に名前は悠仁に捕まった。
同時ってどうなるのかな。と二人で肩で息をしながら話していると「おーい」と遠くから五条が手を振っているのが見えた。
言われるままについて行くとダウンしている釘崎とうなだれている伏黒の姿。そしてその傍でニコニコとしている傑の姿があった。
お疲れ。と渡されたドリンクを飲んで一休みしていると言われた言葉。

「あの提案の時には戻ってよね、名前さん」
「へへへ。なーんか楽しくなってきてさ」
「じゃあ、名前さんもういつもの名前さん?」
「いつもの名前さんだよ」
「良かったー!戻ってくれて。俺がヘマしたから…」
「気にしない!おかげで楽しかったし!久しぶりに傑の家泊まったしね」
「今夏油先生の家に居たんだ」
「そ。美々菜々ちゃんとお年頃の話とか、すごーく楽しかった」
「私は要らない心配ばっかりだったけどね」
「それはすみませんでした」

体力バカの虎杖には及ばないが、名前も比較的もう涼しい顔をしている。
それに比べて釘崎はまだダウン、伏黒はまだ黙ったまま。貰っただろう缶の口が開いているので飲んでいるし意識もあるのだろう。まだ会話する元気だけが回復していないのだろう。

「名前さん脚はえーね。接近戦苦手だって言ってたからさ、驚いた」
「まあね。場合によってはそういうときもあるから」
「私が稽古付けるって言っても悟に頼むんだけど、どう思う?」
「あー…夏油先生名前さんに甘いからじゃない?」
「正解。五条くんの方がビシバシくるよ、ただし容赦はない。七海くんは低い声で『…は?』って言われて以来頼んでないけど」
「ナナミン女性に手あげなさそうだもんね」
「ちょ、悠仁!?それ僕が女性に手をあげる男ってこと!?」
「ナナミンは訓練でもしなさそうって思って」
「僕は名前さんに強くなってほしいだけなのに…!」

およよよ。と大げさ、かつ演技がかった嘘泣きを始める五条。それにはもう虎杖も慣れているのか「わー嘘くさーい」と棒読みである。
事実名前は五条に組手やらなんやらをしてもらってやっと接近戦が出来ている状態である。術式からして遠距離なので普段は近距離タイプのサポートが入るが、全部が全部ではない。場合によっては呪霊の予測不可能な動きで接近されることもある。
鍛えなくていい理由は名前にとってないのだ。

「は!」
「あ、野薔薇ちゃん起きた。身体大丈夫?」
「誰勝ちました!?」
「誰勝ち?」
「今回は名前さんと1年のダブルかな。終了と同時に悠仁が名前さん捕まえたから」
「まさか動きを鵺に遮られるとは思ってなかったから動き止まっちゃったよね」
「鵺のおかげで名前さん捕まえた」
「で、伏黒はなんで黙ってんの」
「たまたまだ。体力バカと同じように喋れると思うな」
「名前さんは体力バカじゃないぞ」
「比べる対象が違います」

確かに。と名前が笑う。
ただ名前が体力バカになると、その上を行く特級二人は大バカになり、そのまた上を行くだろう虎杖はどうなるのか。大大バカになるのだろうか。
言えば1級以上の接近戦やら戦う事がメインになる呪術師は嫌でも体力勝負になる場面がある。殺るか殺られるか二択しかないのだから殺るしかないだろう。
式神を使う呪術師は少なくはないが、どちらも行けるクチは少ないだろう。

「あー楽しかった」
「名前さん嘘つくの良くないと思う」
「虎杖くんは信じすぎ。傑と仲間の時点で敵だからね、私」
「なに?どうしたの」
「虎杖くんに追いかけっこ中に手伝うから放してって言ったら放してくれた」
「馬鹿!」
「お前なにしてんだよ!」
「えー…俺怒られるの…」
「あっははは!そりゃ怒るでしょ、悠仁のミスだ」
「虎杖くん、人を信じるのは君の長所だ。仮に会話が出来る呪霊が居て、それが『もう悪い事はしないから見逃して』って言ったら逃がすのかい?」
「う…」
「あー、傑が虎杖くんいじめてるー」
「教育だよ姉さん。私だって虎杖くんの善性は尊敬する、でもそれが誰かが犠牲になる可能性をわかっていない。現に今回そうだったわけだ」

夏油先生まで!と虎杖が悲鳴を上げる。
それ程責められるとは思っていなかったのだろう。わざわざ名前が言わなかったのに虎杖は自分から言ってしまったのだ。
名前自身それが彼の良いところではあるが、行き過ぎてしまえば弱点になる。
それを補えるだけの実力はまだ今の所彼にはない。可哀想だがそれが現実だ。まだ今は学生だからいいが、それが卒業後どうなるかはわかない。そもそも彼が卒業を迎えることができるのかも誰もわからない。死刑の執行があるかもしれない、任務で命を落とすかもしれない。数えきれない危険がある。

「虎杖!ジュース奢れよ」
「え!」
「口答えすんな!あんたがしっかり名前さん捕まえて逃げてれば私が夏油先生にやられることなかったんだよ!」
「俺だって釘崎と夏油先生抑えるのにわまれたんだよ」
「2対1になれたんだよ!どうしてくれんだよ!」
「名前さんが逃げるから!」
「虎杖くんが逃がしてくれるから。でも虎杖くんのそういうとこ好きだよ」
「え、なに?どういうこと?詳しく」

傑恐いよ。と名前が笑う。
名前が回復した事を後で家入に報告すると早速翌日から任務が入ってきた。
サポートに猪野が現れ、ひどく体調を心配されてしまった。あまりの心配具合にたまらず名前が事情を話すと信じられなさそうにしていたが、一応納得してくれた。

「名前さん、呪われてるときどうだった?」
「うん?案外面白かったよ。傑とか」
「性悪だね」
「私が五条くんを先生って呼んだ時の五条くんの顔より悪くないと思います」
「え、やだ…そんな顔してた?」
「傑に勝ち誇ってたね」
「他人の特権だね。傑にも先生って呼んでやれば?」
「えー…夏油先生?傑先生?」
「姉さん!そういうの止めてよ本当!!」

休憩所で五条と雑談していた名前の背後に居た夏油が声を荒げるので名前は持っていた缶コーヒーを落としそうになった。

/