呪術 | ナノ
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「傑傑!見て、凄い腹筋!」

朝の話だ。
一番に起きた傑が朝食の準備をしていた時の事。
先日から滞在している姉の名前がパタパタと足音を珍しく立ててきたのだ。
振り返れば名前が寝間着として使っているティーシャツをめくって腹を出しているではないか。あまりの出来事に思わず吹き出した傑に名前は「大丈夫?」と腹をだして心配している。

「ね、姉さん…お腹、しまって」
「ね、凄くない?腹筋!傷跡もあるけど、腹筋凄くない?」
「凄い、凄いから。そんなお腹出しちゃダメだよ」
「大人の私凄く鍛えてたんだね!すごーい」
「………ってことは、身体は戻ったけど精神は15歳の姉さん?」
「ん?」
「あ、いや、なんでもない」

時計を見ればあの双子が起きてくるまで時間が少しある。だからと言って家入に電話を掛けるには早すぎる。
今の名前には最初来ていた服に着替える様に言って、スマホで家入にメッセージを入れる。「姉さんの身体が今に戻ったみたいだから朝一で向かうからよろしく」と。




「うん、名前さんの身体は今になったみたいだね。傷跡の照合もあってる」
「じゃあ後は精神?」
「そんなところ。名前さん、今日はどうするの?」
「今日…昨日は五条先生の教室で授業を受けました。今日も同じかと思っていましたけど…」
「だってさ。傑」
「そうだな…私が見ているよ」
「今日任務は」
「今のところはなし。どうせ秤いないしね」

医務室を出て職員室の前で名前を待たせる。
その間に傑は今日の予定の確認と五条に「今日から姉さんを授業で見なくていいよ」と決定事項を知らせるために。
五条悟は名前を親友の姉として好感を持っているが、それだけである。
確かに困って入れば助けるが、まあその程度だろう。特別どうこうということはない。
付き合いはそれこそ10年以上である。今回は面白半分というところだろう。あと傑に対しての軽い嫌がらせ。

「じゃあ名前さん身体だけ戻ったんだ」
「そういうこと」
「じゃあ今会うと大人の名前さんが子供の心で『五条先生』って呼んでくれるわけだ」
「悪趣味だぞ」
「お前だって同じじゃん。大人で子供の名前さんが『傑』って言うんだろ?」
「ぐ…」
「これ七海とか伊地知だったら混乱するだろうな、今のホワホワな名前さん」
「伊地知は知ってるだろ。七海は見ものだろうな…っと、じゃあ私は姉さんと一緒にいるから。何かあったら連絡して」
「特級の仕事なんてそうそうねえよ。あ、機能訓練付き合えよ」
「また今度ね」

適当にあしらってドアを開けると名前に詰め寄るように話しかけている男性と、困っている名前の姿がある。
確かどこかで見た事が呪術師だと考えていると名前が気づいて小さな声で「すぐる」と呼ばれた。

「すまないね、姉さんに何か用事かな」
「あ、…名前さん、具合悪いんすか?」
「えっと君は…」
「猪野琢真っす、2級です。名前さんいつもとなんか違うんで」
「確か七海のサポートによく入る。姉さん少し、ね。何か約束でもあったかな?」
「いや、ないんすけど…挨拶したらいつもと違ったんで、それで」
「私がいるから大丈夫だよ、心配かけて悪かったね」
「あ、いや。じゃあ、これで。お大事に」
「ああ」

こういう可能性もあったな、と考える。
名前は1級で特級のようなとっつきにくさもない。弟が高専で教師をしている関係もあってか、何故か五条から「名前さーん、生徒見てくれなーい?」と要請を受けて学生の面倒を見る時もある。それ故か若い呪術師とはそれなりの関係になっている。
先ほどの猪野琢真は傑が受け持っていないが故に少し曖昧な部分はあるが、顔と名前は知っている。それ以上に名前は後輩の面倒を見る機会がったのだ。そんな事は一言も言わないので傑は自分が知る以上に名前の交友関係が広いのだと感じた。

「ごめんね、ちょっと勢いに負けちゃった」
「彼、結構姉さんに懐いてるみたいだったね」
「私ちゃんと先輩してるのかな」
「してるよ。姉さんは立派だよ」
「悪いことしちゃった、さっきの人」
「戻ったら謝ればいいよ、きっと許してくれるよ」
「…うん」

そういえば。と思い出す。
名前という人間は比較的内向的だったのだ、と。比較的なので、全く持っての内向的ではなく、どちらかと言えば、程度の内向的である。
言えば虎杖悠仁ほどのコミュニケーション能力はないが、一般的なやり取りはできるが出来れば関わりたくはない。という性格だった。
確かに呪いが見えるのだから内向的にはなるだろう。
傑にとって幼い時の名前はヒーローであったが、それは一般人からは見えないお友達遊びに見えたに違いない。
そんな環境で居れば内向的にもなる。傑がそうはならなかったのは名前が居たからだろう、その姿を見ていれば無意識に学習してしまう。

「さて、これからどうしようか」
「考えがあるんじゃないんだ」
「普段姉さんは任務で忙しいからね、何かしたい事ある?」
「んー…高専からは出ちゃダメしょ?」
「そうだね、一応は」
「………傑のお仕事見たいかな」
「学生が不在なんだ」
「任務は?」
「今の所特級の仕事はないね」
「そっか…」
「したいことなくなっちゃった?」
「…うん」

どうしようね。と名前が困ったように笑うので傑も「どうしようか」と笑う事にした。

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