呪術 | ナノ
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「ってことで、夏油名前さんだよ!」
「……げ、夏油名前、です」
「はい拍手!」

一人ニコニコとして虎杖が拍手をする。
昨夜は弟の傑の家に行き、そこには自分と同じくらいの女の子が二人。
「名前さん!どうしたの!!」とスピーカーの様に聞こえた台詞は後から聞けば双子だから重なっていたのだと気が付いた。
それから外食で夕飯とし、それから着替えが必要だからと服を買いに行き、戻った時には何故か女の子三人で狭いバスルームでお風呂に入った。そして双子と同じ部屋で寝て、起きて。家に置いていかれるのかと思えば「行くよ」と高専に連れてこられて、こうだ。

「名前さんの為に席も用意したから、そこね」
「は、はい…」
「あっと、その前に。虎杖悠仁、釘崎野薔薇、伏黒恵ね」
「よろしく、お願いします…」
「ちょっと。女子は女子同士席隣にしてよ」
「え?」
「わかってないわね!こういう時は同性の方が頼りやすいのよ!!虎杖、その席私の隣にして」
「え、俺?」
「アンタが原因でしょ」
「うす…」

釘崎に言われるがままに席の移動をはじめ、名前が指定された席を釘崎の隣に持ってくる。
「名前さん、ここよ、ここ」と机を叩き、名前は言われるままにそこに着く。

「よ、よろしくね、くぎ」
「野薔薇。野薔薇でいいわ」
「野薔薇、ちゃん?」
「そ。」
「五条先生」
「はい恵」
「なんで後ろに夏油先生がいるんですか」

そうなのである。
五条と名前が教室に入る前から何故か教室の後ろで立っている夏油傑。
虎杖がいつもの調子で「夏油先生なんでいるの?」と聞けば「秘密」とニコリと笑ってはぐらかしていた。
1年は昨日の件を虎杖から聞いてたので「まああの先生なら連れてきかねない」と思っていたのが夏油が居たことによってほぼ確定だと思っていたのだが。

「よし、傑今すぐ出て。ここ僕の教室だから」
「授業参観だから」
「実地してませんけど?3年の教室行けよ、誰もいないけど」
「姉さんが心配で」
「私大丈夫だよ?」
「名前さん大丈夫でしょ」
「名前に心配な要素あります?」
「名前さんには私が居るから平気ですよ」
「そうそう!俺達いるし」
「アンタ原因じゃない」
「そ、そうだけど……」

きゃうん。と縮こまる虎杖。
そもそもこの高専で生徒やその関係者に危害を加える輩はいないだろう。ここに来るには色々面倒なのだ、言えば変質者がポッとこれるところではない。ついでに呪詛師だって気軽に来れる程ここのセキュリティは低くもない。
現時点で名前の能力がいくら低くても高専の敷地から出なければ然程問題がない。
ついでに言えば中学までは一般的な生活をしていたのだから問題があるとしたら心配し過ぎている弟だけだろう。

「傑、お仕事して」
「そうだぞ傑。お仕事して」
「うわキモ」
「名前さんはキモくないぞ」
「名前さんじゃないわ」
「……姉さんに言われたら仕方がない、護衛置いていくから」
「要らないよ。高専の人そんなに信用無いの?」
「悟が」
「僕かよ。いいから早く行けよ、これから授業するんだからさ」

渋々出て行った夏油を見送り、五条はやっと行った言わんばかりに大きな溜息をつく。
夏油姉弟は仲が良いのは高専生でも良く知っている。仲が良いというか、弟の傑がよく姉に付いてくる、という印象ではあるが。
夏油姉弟は比較的他人にも友好的で攻撃的ではないし、何より話が出来るあたり五条悟という規格外より話やすいというだけではあるのだが。弟の方は五条悟と同じく特級で扱いが少し難しい。それに比べて姉の名前の方は1級で一般に寄ってはいるが、所詮呪術師である。少しだけずれてはいるが、まあ扱いづらいまではいかない。

「やっと行った」
「すみません…」
「名前さんが悪いワケじゃないしね。じゃあ授業始めるよー」

授業が始まり、午前中は座学だというので名前は野薔薇から教科書を見せてもらいながら授業を受ける。
正直なところ、今の部分は既に終わっている。しかし今名前の状態が異常だという事も説明を受けているので現役の学生たちの勉学に水を差さないように黙って受けていた。そもそも名前が授業を受ける必要はないのだ、長くて一週間の呪い。自宅で休むか寮での経過観察、弟の特級の家に身を寄せる程度十分である。
ただ一人の我儘でこうなってしまったのだが。

「名前さん、お昼行くわよ」
「あ、うん。あのね、傑がお弁当作ってくれて」
「夏油先生料理できるんだ」
「美々子ちゃんと菜々子ちゃんの分もあるからって」
「へー。中庭で真希さんと一緒に食べましょ」
「マキさん?」
「2年の先輩。真希さんも名前さんに会いたいってさ」
「う、うん」
「午後は機能訓練だから着替えないとだけど、着替えある?」
「傑に機能訓練は駄目って言われて…今年の1年は能力が高いから私にはついて行けないって」
「あー…規格外がいるからな」

お弁当を持ち、釘崎に手を引かれて中庭に向かう。
同性の同級生が居なかった名前には、少しだけ新鮮な気持ちになった。

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