呪術 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

※前回、前々回の続きではありません



「伊地知くん、持ってきたの…」
「へあ…?」
「残念でしたー」

伊地知が持ってきた書類と判子。五条に言われるままに持ってきたが、電話口の後ろの方で名前が騒いでいる声が聞こえたのも事実。
いきなり婚姻届と判子を持ってこいと言われて大人しく持って行くのもどうかと思ったが、言ってきた相手が五条である。持って行かないリスクの方が大きい、大きすぎるのだ。
持ってこいと言われた休憩所に急いでいけば、「名前さんの判子も」と言われた時点でわかってはいたが名前がその場にいて伊地知の顔を見て、名前は信じられないという顔で伊地知を見ている。

「じゃ、僕の名前と名前さんの名前書こ」
「書かねえよ!伊地知くんも伊地知くんだよ!!本当に持ってくるなんて」
「え、あの…?」
「って、これ離婚届じゃん!何してんのマジビンタもんだぞ」
「え!あ…本当だ…あの、お二人は…お付き合いを、していたのですか?」
「してないよ?」
「聞いてよ伊地知くん!五条くんお見合いが嫌だからって私と結婚して終わらせようって魂胆なんだよ!信じられる?」
「あ、あー…そういう……」

持っていた書類を五条が取り上げるも「欲しかったモノ違う」と丸めて捨てられた。
しかし伊地知はそれどころではなかった。
まさか二人が付き合っていたなんて!と叫びそうになったが名前の言葉で思い留まる。普通の人間であればそんな強引なやり方はしないが、相手が五条悟である。納得せざるを得ない。

「ああ、今度の日曜でしたっけ」
「伊地知まで知ってんの?」
「大奥様が手をまわしたからね。おかげで私まで付き合わされるんだからね」
「名前さんもお休みでしたね、そう言う事でしたか」
「酷いよね、私なんて五条くんの見張りなんだよ。私の休み返してほしい」

これには同情しかない。
あれだけの五条悟をある程度コントロールできるというだけで名前という人間は使われているのだ。だからと言って五条家が名前を嫁にとは考えることはない事も知っているし、仮にそうなったとしても名前が絶対にそれを受け入れない事もわかっている。
そもそもこの五条悟と人間と結婚したいという奇特な人間がこの世界に何人いるだろうか。
顔と体格と資産は申し分ないが、なにせ性格が性格である。知っている人間で深くは関わりたくないだろう。

「だから一石二鳥じゃん」
「全然。私に損しかないじゃん」
「家族が出来て金が手に入って、地位だって。一石三鳥か」
「全部要らねえよ、熨斗つけて返してやるわ」
「僕は名前さんでいいけど」
「お断りです。あ、そうだ伊地知くん」
「はい、なんでしょう」
「私と結婚を前提に付き合おうか」
「……は?」
「え!?ちょっと名前さん!?それ本気だったの!?」
「本気本気。そっちがその気ならこっちも本気で行かないと」

にっこり笑って何を言いだすかと思えば。
言われた伊地知はそのまま固まり、五条は「だめー!」と成人男性とは思えない大声をだして名前の肩をガクガクと前後に揺らしている。

「あはははは」
「伊地知!」
「は、はい!!」
「断って」
「え?」
「早く断れよ、僕絶対名前さんが伊地知と付き合うなんて許さないから」
「えー?五条くんには関係なくない?」
「ある!伊地知と付き合って結婚なんて言ったら僕、傑になんて言えばいいの…」
「そこ傑関係ないでしょ。つか、普通に私が結婚したよ。で良いじゃん」
「駄目!駄目駄目!!名前さんと結婚する男は強くないと駄目!」
「あ、あの」
「ん?」
「話が見えないのですが…?」

と伊地知が申し訳なさそうに言えば名前がざっくりと説明をしてくれる。
五条も五条であるが、名前も十分名前である。というのが伊地知の見解だ。本人たちには言わないが。
名前は五条に比べてまだ常識人ではあるが、呪術師であることと五条と関わっているせいでネジが飛んでいると言っても過言ではない。
事実五条が絡んでいなければ至極普通の人である。

「ほら!断れよ!!」
「す、すみません…」
「脅すな。ごめんね、巻き込んじゃって。次は誰が来るかなー」
「まだ言うつもり!?駄目だってば!!」
「じゃあ五条くん今度のお見合い成功させてくれれば私は諦めるよ」
「それはないね!僕と結婚できる女なんて少なすぎない?」
「言えてるー。まあ正直、私に迷惑かからない程度にしてくれればいいよ、本当」
「だって面倒くさいんだもん」
「いい年して『もん』とか言うなや」
「あの、私仕事が…」
「あ、ごめんね伊地知くん。いいよ、行って行って。あと私も任務入ってるから行くわ」
「誰と?」
「新田さんと二人」
「新田…ああ、あの人ね」

はなしてね。と肩にかかったままの手を降ろさせる名前。
いつもの風景と言えば風景である。
そして話の内容だって見合い以外はお遊びの範囲だというのも。
それだけ付き合いが長いということもあるが、巻き込まれる方にしてはいい迷惑である。
現に伊地知は他の仕事を一旦止めて役所に走ったわけだ。無視するのもいいかもしれないが、相手が相手である。無視をするにはリスクが高すぎる。

「はい、じゃあ伊地知くんは私と一緒に任務に戻ろうねー」
「え、ああ、はい…では失礼します」
「伊地知、わかってるよな」
「はい脅さない」

今度は名前が伊地知の肩に手を掛けてくるんと方向転換をして、そのまま名前は伊地知の背中をおしてその場から離れる様にと促してくる。
最後の脅しの意味は良く分からないが、とりあえず返事をしておく。
まさかと思うが五条は伊地知と名前が付きあうとか、そんな勘違いをしているのかと思ったがそれはありえないだろう。
伊地知から見た名前は五条が言う事を聞く先輩でしかない。
五条で困れば名前は「可愛い後輩のお願いだしね、任せてよ。出来ることはしてみる」と対応してくれる。

「ごめんね、伊地知くん。変な事に巻き込んで」
「いえ、名前さんも大変ですね」
「本当だよ!」

じゃあ、伊地知くんも気をつけてね。と名前は伊地知の背中を軽く叩いて方向を変えて歩き出した。

/