呪術 | ナノ
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「野薔薇ちゃん、よろしくね」
「え?名前さん?だって補助監督は新田ちゃんでしょ?」
「私この度、この現場をもって呪術師に復帰になりましたー」

あは。と笑う名前。
格好は相変わらず補助監督と同じスーツで一見補助監督が二人に見える。
しかし名前は元補助監督というだけで現呪術師として現場に向かうために居る。
この呪詛師との対決の為に。

「え、なに意味がわからない」
「名前さん元呪術師なんすよね。復帰か…」
「え!そうなの!?え、何級何級?」
「実は私1級なの」
「えー!嘘マジ?なんで補助監督に?」
「それはまた今度ね。新田さん車よろしく」
「うっす!」

ちゃんとカギ持って来てますよ!と鍵を見せてくる新田。
今回の班は釘崎野薔薇と補助監督の新田明、そして夏油名前というメンバーだ。
名前は数か月のブランクがあるので学生と共に少し離れた場所からの戦闘要員となった。

「あれ?釘崎補助監督二人もいるの?すげービップじゃん」
「んなわけないでしょ」
「虎杖お前知らないんだったな、名前さん元呪術師だぞ」
「え!?マジで!?ナナミン知ってた!?」
「ええ。名前さんは私の先輩なので」
「七海くんの所猪野くん虎杖くん恵くんなの?大所帯だね」
「虎杖くんは別です。名前さんは久々ですが大丈夫なんですか」
「中心地から距離あるかし、まあ大丈夫でしょ。野薔薇ちゃんもいるし」
「え、名前さん…あたしは?」
「新田さんは…補助監督だから、うん」
「新田ちゃんは私が守るから」
「きゃー野薔薇様ー」
「じゃあそろそろ行こうね。みんなにまた会えるのを願って」

ばいばい。と手を振る名前。
名前自身こんな戦争のような事は初めてだ。呪詛師との戦闘経験はあるが呪詛師界が呪術師界にケンカを売ってきたのは聞いた事が無い。お互いの均衡を崩したいのか、いい加減我慢ならなくなったのか。
どちらにせよ下の人間としてはいい迷惑なのは変わりない。今まで通りに小競り合いをしていれば「面倒くさい」で終わったはずなのだが。

「姉さん」
「傑?」
「君たちが姉さんと同じ班かな?」
「っす」
「え、名前さんて夏油先生のお姉さんなの」
「そうなの。野薔薇ちゃん知らなかった?」
「知らなかった!え、新田ちゃんは!?」
「知ってました。めちゃ驚いた」
「で?どうしたの。特級なんだからここ居ちゃ不味いんじゃない?」
「すぐ行くよ。姉さんブランクあるから護衛をつけようかと思って」

ニコッと笑う傑と大きな溜息をつく名前。
それを見たこともないような顔で見る二人。
夏油傑の呪霊操術。呪霊を取り込んで式神の様に使うその術式は呪霊を取り込んだ分だけ強くなる。もちろん取り込める数は無限とは言えないだろうが、大量に取り込んでいる夏油傑は特級呪術師として申し分ない実力を持っている。

「いいよ、自分に使って」
「可愛いのするからさ」
「いらないってば。そんな特別扱いは不要です」
「姉さん」
「いい?心配してくれるのは有難いけど、そういうのは結構です、いりません」
「夏油先生、それまだ続きます?私達距離あるんで早くしてほしいんですけど」
「ああ、すまないね。姉さんにブランクがなければ心配もないんだけど」
「護衛はいらない。黙って付けてきたら怒るからね」
「それは恐いな」
「思ってないくせに。じゃあね、特級様」

あしらうように名前は歩き出す。それに習う様に二人も名前について行く。
用意された車は普段名前が補助監督で使う車からみるとなんと小さい事か。
言えば軽自動車である。他の呪術師を運ぶ車は普通車なのに、これ見よがしに軽である。
コレを見た名前は軽く笑い、少し狭い後部座席に乗り込む。
後部座席に乗り込むのは久しい。懐かしいな、と思うには少々狭いがこれも仕方ない事だろう。

「狭!なんで軽なのよ!」
「多分私が原因かな、ごめんね二人とも」
「え?なんで名前さん?」
「ほら、私復帰じゃない?死ぬかもしれない人間に普通車であっても使わせねえって事かな。まあ、そこまでされちゃあ、ねえ?」
「…っすね」

名前の特に意味のない言葉が何故か二人のやる気に火をつけたらしく、野薔薇は野薔薇で「やってやろうじゃないのよ!」と息巻いているし新田は新田で「こっちもやってやるよ!」とハンドルを力強く握っている。
名前が「安全運転で行こうね」と言えば「うっす!」と元気よくエンジンをふかす。
安全運転にエンジンふかす意味は?と思ったがやる気が出ている人間に余計な事は言わないでおこうと名前は黙っていることにした。

「夏油先生ってシスコンなの?」
「あ、補助監督内ではそんな噂っすね。実際どうなんすか」
「んー、シスコン…心配性?家族が私と傑以外全員事故で死んでてさ、それもあると思う。シスコンかって聞かれると…わかんないな」
「あー…そいういう事情で」
『心配なだけだよ、二人とも』
「え」
「げ」
「あ」

スイーッと小さな子猫、子犬のような呪霊が車内を漂う。
その声は夏油傑そのもので、一瞬にして夏油傑が得意の心配というワードを使ってここまで呪霊を使って来たのだ。

『というか、私補助監督の間でシスコンになっているんだ』
「あ、いや」
『あながち間違ってない、かな。お互いこの世界に入るまで呪霊が見えていたのは二人きりだったからね』
「傑」
『なんだい?』
「約束破ったわね」
『私は約束はしてないよ』
「そ。じゃあ消すから」
『え、これでも姉さんの好みに合わせたつもりだし、なにより一応これ1級相当だよ』
「私も一応は1級なんですけど?問題ある?」

小さな足をバタつかせて可愛らしさをアピールしている呪霊。
しかし見た目が可愛くても呪霊は呪霊。
ふわりふわりと浮くそれを名前は目で追い、助手席に隠れようとするそれを手でつまむような仕草をする。仕草だけで掴んでいないのに呪霊は移動をぴたりとやめ、バタバタと暴れはじめた。

『姉さん、私は』
「任務に集中しなさい、傑」

キュッと名前が手を握れば小さな、傑が言っていた通りならば1級の呪霊は潰されて消滅する。

「電話使えっての」
「………え、これ、名前さんの、」
「そ。まあ久しぶりだし手ならしだよね」

これが1級呪術師。
握られた手は既に解かれ、名前はスマホを取り出して画面を眺めていた。

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