呪術 | ナノ
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「姉さん、家から荷物届いてるよ」

寮に戻ると「おかえり」の言葉よりも早くその言葉が名前に投げかけられた。
その声に視線を向ければ、弟がヒラヒラと手を振っている。

「母さん?」
「そう、手紙も入ってた。部屋に荷物あるからあとで取ってくるよ」
「あ、夏油先輩お疲れ様です!」
「今日あれか、3年と1年の。お疲れ」
「はい。夏油先輩が脅かすのでどんな人かと思いました」
「傑私の事好き勝手言いすぎ」

気に入らない後輩は潰すだの後ろから襲撃するだの、名前には全く心当りのない風評被害もいい所だ。またそれを真に受けたのだろう、元気のいい灰原が「そこの所どうなんですか!」と直撃したのだ。それを見ていた七海は「うわコイツ本人に聞くか?」という顔で眺めていたのを名前は笑って見ていたのだが。

「実際姉さん後ろから体当たりとかするし」
「それは傑だけです。硝子ちゃんに五条くんにはしませーん」
「仲いいですね」
「ま、一応は可愛い?弟?ですし?」
「なんで疑問形なの」
「一般的に可愛いって部類じゃないでしょ?灰原くんは可愛い、七海くんは綺麗」
「ではそろそろ失礼します、報告書書かないとなので。行くぞ灰原」
「おう。名前先輩、後で報告書見てもらっていいですか?」
「うん、じゃあ後でね」

着替えてくるね。と名前が言えば傑も「じゃあ荷物取ってくるよ」と共同スペースから自室へと向かう。
寮なので共同スペースは男女使えるが女子寮、男子寮と別れている。そのためそこ以外の出入りは基本禁止されている。禁止といっても名目上なのでほとんど無視しているのだが。なので名前が傑の部屋に行ったり、またその逆もある。
それは名前が入学する前からそうだったので、恐らく昔からそうなのだろう。
生徒は生徒で「先生にバレなきゃいいんだよ」と名前は先輩から聞いたし名前もそんなものかと思っている。名前は後輩にそういった事を言った事はないが、上級生が下の学年に言っていたのを聞いている。その件については名前は下級生に言う事はないし、弟が部屋に来ても何も言わない事にしている。
誰が何を言ったとかいうくだらないトラブルに巻き込まれたくないからだ。それに弟くらいであればバレたところで言い訳は出来るとタカをくくっている。
着えて共同スペースに戻ると傑がダンボールを用意して待っていた。

「これ母さんから」
「母さんもマメだよね。二人に出すんだもん」
「ははは、姉さんだって家族に荷物送るのに一人一人に書いてたじゃん」
「去年の話ね、今はもう母さんだけだし」
「お、名前先輩帰ってたんだ」
「五条くん。そうそう、さっき1年生と戻ってきたんだ」
「あーあれ今日か。で、なにそれ」
「家族からの荷物。姉さん今まで長期任務で居なかったから私が持ってたんだよ」
「ふーん」
「ねえ傑、手紙にクッキーってあるけど知らない?無いんだけど」
「姉さんの分は私手を付けてないよ?……あれ、本当だ」
「限定の入れておいたからって」
「あったはずなんだけど…あれ?おかしな…悟、君何か知らないか?」

なんで五条くん?と名前が二人を見るとあからさまに目が泳いでいるのがわかる。
チンピラのようなサングラスをかけて目を隠しているが、挙動がおかしい。わかりやすすぎる。ポケットに手を突っ込み、ぴゅーぴゅーと口笛を吹くあたり怪しすぎる。
二人は親友で部屋を行き来しているのは名前も知っている。
たまに傑についてきて名前の部屋に入り浸ることもある。

「悟、もしかして食べた?」
「なななななんのことだよ」
「クッキーだよ。ミントグリーンのパッケージで猫の絵が描いているヤツ」
「知らねーよ!」
「ははーん、これはアレですわ、やってますね」
「姉さんもそう思う?」
「挙動不審、目を合わせない、無意味な口笛。これは黒だわ、絶対黒」
「………くってねーし」
「傑」
「なんだい姉さん」
「荷物はいつ届いた?」
「昨日夕方」
「昨日夕方から今朝にかけて五条くんの行動は」
「私の部屋に入り浸り。ゲームしてた」
「五条くんが部屋に戻ったのは」
「日付が変わってから」
「その間に傑が部屋から出たのは」
「風呂だね」
「クッキーを食べる時間は十分あるね、これは」
「ああ、あるね姉さん」

五条悟を中心に夏油姉弟が時計回りに歩いて回る。
片や女性であるが上級生、片や同級生ではあるが背が高くガラが悪い。五条もガラが悪いが同級生である夏油傑も負けずと悪い。

「ゴミ箱は?」
「私の知る限り自分の部屋にそのパッケージのごみはないかな」
「五条くんの部屋のゴミ箱の確認してきて」
「と言う事だから鍵を渡すんだ悟。姉さんは怒っているよ、謝るなら今だよ」
「な!傑って事もあるだろ!それに入れ忘れてるとか!なんだよ俺が犯人みたいじゃん」
「残念だが悟、私はそのクッキーを見ている。そして姉の物を弟はとらないんだ、世界とはそういうものなんだよ、悟は知らないかもしれないけど」
「そうそう。弟は姉の物をとらないんだよ。後が恐いからね、というより人の物をとると言う事自体悪い事なんだけどね。一応弟だから性格わかるし。あれ傑食べないんだよ」

それがとどめとなったのか小さな声で「スミマセンでした」と名前に謝った。

「言ってくれれば分けたのに。美味しかった?」
「まあまあ。傑のだと思ったら食ったのに名前先輩のかよ」
「まあまあか…うーん、残念。また来年販売してくれることを願うかな」
「なんで?また送ってもらえば?」
「悟、アレもう販売期間が終わってるんだよ。1日限定販売」
「げぇ、めんどくせ!」
「食べた本人反省ないな…」
「で、傑のトラウマってなに」
「それはご本人に聞いて。じゃあ五条くん、この埋め合わせ楽しみにしてるからね!」
「………げぇ」
「人の物勝手に食べておいてタダで済むと思うなよ?」
「……………はい」

後日高級スイーツ店の袋を名前に渡して名前が「え、こんな高いのは…ちょっと…」と言われて騒ぐ五条の姿が見えた。

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