呪術 | ナノ
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「新田明です、よろしくっす」
「教育係の夏油名前です。他の人からは下の名前でよばれているので、下の名前で呼んでください」

新しい年度がやってきた。
名前が補助監督になって数か月。一番下だった名前にもようやく後輩が入り、名前は教育係という大任を任された。
以前伊地知が教えてくれたように仕事の内容、諸注意、そして気難しい術師についての対応。

「特に特級の二人の術師は色々面倒なので、説明します」
「はい!」
「五条悟特級術師は五泉家のひとつの当主であって、言えば大人子供です、マイルドに言うと」
「…はい?」
「俗にいうクズで扱いがまず面倒かつ難しいので、新田さんには多分回ってこないと思うけど私が教育係をしている期間には私が担当することが絶対あるので私の指示に従って面倒な事を起こさないよう注意してください」
「え…あ、は、はい」
「そして夏油傑特級術師。彼も少し性格に難はありますが五条特級術師程ではないし一般的な教養もマナーも兼ね備えているので警戒することはあまりないです。五条特級術師とくられべれば大抵普通、良い人に分類されます」
「………」
「そして学生の乙骨憂太特級術師は不在です。彼は五条特級術師の遠縁の呪術高専2年生です。彼はとても素直な良い子で話もしっかり聞いてくれて礼儀正しいので注意することはないでしょう」
「……あの、」
「はい」
「その、ゴジョウトッキュウジュツシって、かなりやばい人なんすか?」
「性格がね。でも扱いさえわかれば大丈夫」

ひえ。とビビる新田に名前は「大丈夫だよ、困った時は他の補助監督に相談してくれれば」とフォローを入れる。
実際ヘルプを出されてどれだけの補助監督が応える事ができるかは謎だが。
それから今日の予定を二人で確認してから任務にあたる。
新人だから名前につき、気になる事があれば確認してもらう。それが新田の暫く仕事になる。



「新人の新田明さんです」
「新田明です。よろしくお願いします」
「七海建人です」
「猪野琢真です。名前さんも先輩っすね」
「そうなの。後輩が出来て嬉しい」
「え、名前さんベテランじゃないんすか」
「補助監督しては新田さんとそれほど変わらないよ、ほんの数か月くらいだから」
「へー、意外」
「七海建人1級呪術師、猪野琢真2級呪術師。見た目は少し恐いけど、いい人だから安心してね」
「それ私の目の前でいう必要ありますか」
「あるある。私は二人を信頼していますってアピールに」
「仲良いんすね」
「付き合いは長いからね。では任務地までお送りします」

車に乗り込みエンジンを掛ける。新田を助手席に乗せて本日の任務内容の説明を任せる。
任せると言っても書いてある事を読み上げてもらうだけなので、言えば学生でもできる事をしてもらうだけだ。
しかし新田にはそういう事に慣れていなかったのだたどたどしい読み上げで最終的には何を言っているのかわからなくなっていた。

「……名前さん」
「ではここからは私が。新田さんが言ってくれた通りに目的地に着き次第私が帳を降ろします。呪霊は調査で1級相当と確認されていますので七海1級術師にお任せをし、その他の呪霊は猪野2級術師対応お願いします。何かありましたら外で待機していますので連絡を頂ければ応援の要請はすぐに」
「すみません…」
「平気平気。読みづらいものがあったから」
「先輩してますね、名前さん」
「先輩ですからー。最初が二人で良かったよ」
「そうですね、あの二人だったら最悪でしたね」
「絶対いじってくるし顔合わせる度に言ってくるのは確実だわ」

任務地に着くと名前が帳を降ろして二人の術師がその中へ姿を消す。
名前はタブレットで任務開始の報告をあげ、新田に向きなる。

「なんすか、これ」
「これは帳。一般の人から見えなくする…バリア、みたいな?次回新田さんにやってもらうから戻ったら練習しようね」
「うっす」
「新田さんは怪我人の処置や応急処置の経験はある?」
「転んだとか擦りむいたとかなら」
「私たちは術師や一般の人の応急処置をすることもあるから、それも戻ったら練習しようね。私達ではどうにもできない場合は家入硝子1級呪術師に連絡を取って処置してもらう必要があるから覚えておいてね」
「うっす」
「普段は周りに異常がないか見回るけど今回は車の備品について説明します」

車のトランクを開けて救護用品、食糧、車自体の備品の場所を見せる。
一番食いついたのは車の備品で「自分車好きなんすよ!」というのでその辺りの説明を省いた名前。好きな人間にそうでもない人間の説明は無粋だろう。
それが終わると術師が戻ってからの仕事と高専に戻ってからの仕事の話だ。
怪我の有無の確認をして高専に戻ったら報告書の作成や術師との連絡。備品を使ったのであれば減った分の申請や補充も必要となってくる。
繁忙期は術師の目も虚ろだが補助監督の目の虚ろさも負けてはいない。

「あ、とばりが」
「上がったという事は任務が終わったって事です。では二人が来るのを待ちます」
「うっす」

二人が戻ったのを確認してタブレットで任務終了の報告を入れる。
怪我はなく、問題なく終わったというのでまずは安心だろう。
新人が入った現場で大怪我されると色々と大変だ。逆に考えればそこで対応が経験できるが、まあ誰も怪我をしない事が一番であることには変わりない。
車に乗ってもらい途中にどこか寄るかを聞けば、そのまま高専で構わないというので車を走らせる。

「……新田さん」
「はい!」
「補助監督は出来そうですか」
「や、やります!」
「そうですか。良かったですね名前さん」
「可愛い後輩易々と逃がしてたまるか」
「え」
「まあ初日が二人だから心はまだ折れないよ。本番はアレだから」
「ああ、でもまああの人をどうにかできるのは名前さんくらいですから、名前さんが辞めなければ大丈夫でしょう」
「伊地知くんがいるから大丈夫、私の先輩伊地知くん。頼りになるぜ」
「伊地知くんは最初嘆いてましたけどね」
「俺も驚きました。名前さんが補助監督かって」
「名前さん前は何してたんです?」
「聞いて驚け?名前さん1級呪術師してだんだぜ?」
「え!?は!!??」
「わーい、良い反応」

あはは。と笑いながら運転する名前。助手席では新田が「え!?呪術師?マジっすか!え、なんで」と一人で混乱している。
後ろで七海が「落ち着きなさい新田さん。混乱するのも驚くのもまだ早いですよ」と恐ろしい事を口にしていたが新田本人の耳に届いていたかは不明である。

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