呪術 | ナノ
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「ララ!」

校庭で1年の虎杖とララが走り回り、釘崎と伏黒がそれを眺めて数分経った頃に不意に虎のララの名前を呼ぶ声。
その声に反応したララが明らかに「うわ」という反応を示す。
3人がその声の方を見れば、高身長、長髪、袈裟姿の男性が1人。にこやかにララに向かって手を振っている姿が。

「夏油さん、来てたんですね」
「やあ伏黒くん。1年だっけ?悟のお守りは大変だろ?君は…釘崎さん?かな?悟から聞いてるよ、いい術式だ」
「どうも…」
「ララ!おいで!!」

ララ、呼んでんよ。と虎杖がララの肩を叩けばララは嫌がって隠れ切れない虎杖の後ろに隠れる。
その行動で虎杖はあの男性が「スグル」だとわかったらしく、「挨拶くらいしないと駄目だよ」と促す。
釘崎も同時に「ああ、ララが好きくない言ってた男か」と納得した。
確かに釘崎から見ても好感はヨロシクない。五条とは違った方向に好感が持てないというのだろうか、まあ五条の親友というあたりでクズ確定ではある。

「傑だ…どうしたの、まさみちに会いに来たの?悟なら任務で居ないと思うよ」
「ララ。久しぶりだね、元気だった?そうだ、お土産の羊羹があるよ、食べる?」
「今いい…悠仁と遊んでたの、どうしたの」
「ユウジ?」
「初めまして!虎杖悠仁です!」
「ああ、最近まで猿だった、宿儺の器くんか。悟から聞いてるよ、君衛生観念大丈夫?ララに変な病気移さないでよ?」
「ララ呪骸だから病気しないよ。悠仁に意地悪なこと言わないで!」

あのララが。と釘崎と虎杖は顔を見合わせる。
今まであれだけ人懐っこくしていた虎が夏油傑という人間を前に苛立ちを表に出しているのだから驚いた。
五条でさえちょっと小馬鹿にした様なところはあったが、それでも懐いていた。

「別に意地悪したわけじゃないよ。事実さ」
「悠仁は変なの食べたけど!ララのお友達だもん!一緒に遊んでくれるの!意地悪しる傑嫌い!あっち行って!」
「ごめんよララ、機嫌なおして」
「ララ、俺別に気にせんよ?」
「ララが嫌なの!」
「やーい嫌われてやんの」

けけけけ。と悪い笑い声とともにやってきた五条。
夏油が「任務は」と聞けば「即終わったんだよ」と軽い答え。まあ万年人手不足である呪術界において特級であっても低い任務にあたるこもある、という事だったのだろう。

「悟!」
「なーに?」
「傑羊羹持ってる!」
「まっじで?寄越せよ傑」
「ララに持ってきたの。君のはないよ」
「じゃあララそれ貰ったらみんなで食べるからもう帰って」

貰うものは貰うんだ。と全員が思う。
しかし当のララは相変わらず虎杖に隠れきれていないところからグルルと唸るような声を上げている。

「あ、そうだ。夏油傑、特級。僕の親友でカルト教団の教祖。恵とララは知ってるよね。コイツさ、ララを構いまくって嫌われてんの」
「嫌われてないよ」
「ララ、傑の事好き?」
「……ララ、好きくない」
「ほら」
「嫌われてない。好きじゃないとは言われたけど嫌いとは言われてないし」
「ララ、傑好きくないけど嫌いじゃないよ。悟よりは好きくないけど」
「えっ」
「美々子と菜々子好きよ?」

だからいいじゃん?良いわけあるか。という声が聞こえてきそうである。
伏黒を見れば動じていないあたり、これが通常なのだろう。
まあ実際ララ自身から「傑は苦手」と言っていたので不思議ではない。まあどうして苦手なのかという疑問がはあったが、構いすぎるという事で苦手意識が生まれたのもわかった。
確かにララも遊んでほしい、遊んでくれた、もういい。という具合があるのだから仕方がない。誰しもしつこくされれば嫌なものだ。

「でも悠仁に意地悪する傑嫌い」
「やーい」
「ララ、この際だから言っておくけど猿と戯れるのはやめなさい」
「悠仁は猿じゃねーわ」

「なに?猿って」
「夏油さん、筋金入りの非呪術師嫌いなんだよ。だから呪術師じゃない人間は猿なんだと」

「ララと悠仁は仲間なの。悠仁の名字にはね、虎がいるの!」
「あっそ。さあララ、私のところにおいで。最近遊べていなかっただろ?遊ぼうか」
「変態かよ。ララ、ほら変態って言いな」
「へんたい!まさみちに言いつけてやる!」
「悟も一緒に行ってあげる!傑が意地悪したって」
「うわキモ。ララ、もう虎杖とあっち行ってなさい。私も行くから」
「行く!悠仁、野薔薇行こ!恵はどうする?」
「……じゃあ、行く」
「玉犬だして!ララ、悠仁と玉犬と競争する!」
「ララ…」

出てきた玉犬2匹が走り出すとララも一緒に走り出す。
入学前からこうやってララを遊ばせていたという伏黒。確かにララの体力と伏黒の体力、体格の差、純粋な力の差ではこれが一番だろう。一緒に走り回るとなると虎杖は平気だが普通の体力ではかなり難しい。
相手は疲れない呪骸なのだ。休息が不要となれば生きている方がかなり不利。それが利点でもあるが、この場合純粋に遊びたいララには面白くない。

「ララ最近どう?」
「前と変わらず普通だよ。スリープ中に幻覚見たって言ってたから、それ夢だよって教えたけど」
「呪骸が?へえ」
「名前の場合パンダと違って不完全だからね。想定外の事が起きても不思議じゃないんだろ」
「悟は良いよねそうやって相談受けて」
「じゃあ傑も教師やれば?非常勤でも僕は歓迎。」
「嫌だよ。猿が混じっているんだ、そいつらがいなくなったら考えてもいいけど」
「その猿相手に金巻き上げてるくせに」
「おや、いいじゃないか。人間のために猿が働いているだけだろ?褒美はやってるし?」
「うーわ。そういうとこじゃね?ララが嫌がんの」
「ララの前では私品行方正の青年だよ」
「アラサーじゃん」
「君より私若いんだけど」
「数カ月な」

夏油傑はララを可愛がる。
ララを形成する核の1つが同級生だったから、という事もあるが同じ任務について死んだ苗字名前だったからだ。
名前は地味で弱くて3人からすれば段違いに呪術師としては学生らしく一般的だった。一般家庭出身の女子。
でも3人とは違って普通だったが故に夏油の変化にごく普通に心配をしていた。
それが夏油からして嬉しかったわけではないし、弱いのに?というくらいにしか思っていなかった。でも、それでも同級生が自分の不注意で死んだのはかなりのショックだった。
いや、夏油の不注意でもなんでもない。ただ同じ任務について、夏油は夏油の、名前は名前の任務を遂行していただけ。運が悪かった、間が悪かった。それだけの事だ。

「名前って、無邪気だったのかなって思うんだ」
「他の魂のかもしれないのに?そもそも、3つの魂が必要なんだからララと名前とは断定できないだろ?名前の魂のコピーが入った呪骸だよ、ララは」
「それでも名前の可能性を願うのは自由だろ?」
「そーだな。名前の魂をコピーして呪骸を作ってくれなんてブッ飛んだ事いうのはオマエだったもんな」
「まあ先生のマネをしてララが私の名前を呼んでくれるのは良い傾向だ。悟は別に呼ばなくて良かったんだけど」
「僕の方がララといる時間長いしー?ほら僕、今ララの担任だし」
「よくよく考えると、君気持ち悪いね。元同級生の魂のコピー入った呪骸の担任だろ?ヤバイね、やはりララは私がもらえないか再度交渉しようかな…私がお願いして作ってもらった呪骸だし、権利はある」
「ねえよ馬鹿。名前のコピー情報があるだけの呪骸で僕の可愛い生徒だっての。それにララは学長にメンテされないとだろ」
「連れてくるし」
「友達と引き離すの?かわいそー」

そういわれた夏油はムッとした顔をする。
確かに学友の魂のコピーを持った呪骸であって、本人は死んでいる。頭部を失った瞬間を見た本人が夏油なのだ。
遠くで同級生と戯れる虎。1人憎い相手の息子、もう1人は元猿。残る女子はララと仲が良いのはほほえましい。
「あ」というようにララが小さく飛び跳ね、一目散に五条と夏油の居るところまで走ってくるのでどうしたのかと思えば。

「傑!羊羹ちょうだい!みんなで食べるから!ララ知ってるの、傑のくれるお菓子美味しいから皆嬉しいの。ジュース買って、あっちで食べるから」
「お、いいね僕も行こ。可愛い生徒とおやつタイムじゃん」
「えー悟来るの?じゃあ悟ジュース買って」
「ララ、私は羊羹だけの男なの?」
「うん、ララ羊羹だけあればいいよ。傑、悠仁に意地悪するから」

あまりに素直な言葉に五条はゲラゲラ大笑いし、夏油は意地になって「いや、私も一緒に行くから。絶対に、ぜーったいに一緒に行くからね」と低い声で唸るように言った。

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