呪術 | ナノ
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「あ、えーっと、苗字さん!ちゃっす!!」

ピンクブラウンの短髪の男子がニコニコとして名前に手を振りながら近づいてくる。
君は確か…と名前が声に出せば「呪術高専1年の虎杖悠仁です!」と元気よく返ってきた。
確かに前に会った時は五条が連れていたので1年だろう。ついでに言えば編入した宿儺の器である、というのは名前も報告が来ているので知っている。
五条からも「底抜けに明るい子だよ」と言っていたのを思い出し、確かに明るいし人懐っこい子なのだろうと思った。

「1人?確か3人いたよね、1年生」
「うっす。今2人は任務で。伏黒は1人、釘崎はサポートで」
「お留守番?」
「ううん、五条先生が稽古してくれてんの。今休憩で自販機行くとこ」
「そうなんだ。じゃあ先輩がジュースをご馳走してあげましょう」
「先輩?」
「私も高専卒業生だから。ついでに五条くんがどんな先生してるか観察しようかな」
「暇なの?」
「大先輩に向かって暇かなんて、なんて悪い子だ」

さすが五条くんが担任なだけある。と名前が笑いながら手招きして自販機コーナーまで一緒に歩く。
「どれがいいの?」と聞けば少し遠慮した風にして可愛らしく指さして「これ、が…いいです」と言わんばかり。硬貨を入れてボタンを押して、取り出して手渡す。

「あざっす!」
「暇な先輩なので、五条先生の先生っぷりを少し見学しようかな」
「苗字さんて、五条先生と仲良いのか悪いのかわからんね」
「悪くはないと思うよ?まあ五条くん性格がアレだし、付かず離れず?」
「大人ってわからん」

五条くんが特別アレなんだよ。といえば「あーなんかわかるかも」といいながらジュース片手に一緒に歩いて鍛錬場まで行く。
ここも学生の時によく使った場所である。
医療系の家入も単位となれば頑張らねばならなかったし、名前も名前で戦闘にでるので鍛錬は必要だった。同級生だった五条と夏油にはケチョンケチョンにされ、呪霊よりもひどかったのでは?と思った事が多々あった。
人間であれば多少の油断もあるが、呪霊にそれはないので五条のやっているのは無駄ではないが名前にとってはかなりの負担だったのは事実。

「あれ?名前じゃん、どうしたの」
「さっき苗字さんに会って挨拶したらジュースごちになったんだ」
「お礼言った?」
「もち!俺そこまでガキじゃねえよ先生」
「わ、五条くんが先生してる」
「え?なに?名前も鍛錬してほしいって?仕方ないなー」
「絶対に嫌!!!近づくな!!」
「酷くない?」
「先生がそれだけ酷い事したんじゃね?」

まさにそうなのである。と思わず叫んだ名前。
特にああいう顔をしている時はろくなことがないのだ。学生の時は「雑魚雑魚ざーこ!!」と散々馬鹿にされ、足蹴にされ、と泣かされまくった。
五条からしたら稽古をつけてやった、かもしれないが名前からすればほぼ嫌がらせだ。まだ夏油の方が優しかった。

「…悠仁」
「ん?」
「僕ちょっと出てくるから、名前をこの鍛錬場から出さないよう引き留めて」
「?別に逃げないけど」
「後輩のトレーニングと思って名前は逃げてよ」
「……嫌です!!疲れるから」
「ババアかよ」
「昨日骨折しましたババアです」
「……それは…ちょっと大人しくしないと、だね……」
「大怪我じゃん、大丈夫なんすか?」
「硝子に、家入先生?に治してもらったら。まあ明後日あたりまで軽い任務にはなるけど」
「まあいいや。ちょっと外すけど待っててね」

うーっす。と2人が返事をする。
名前はふざけて、虎杖は通常なのだろう。わかって五条は何も言わずに鍛錬場から出て行く。
まあ名前も大人なので、学生に気を使わせては悪いと思って唯一の共通の話題である五条の話を振る。普段どうなのか、とか、酷い事はされていない?とか、無理な任務とか、そういうのはない?と。
すると虎杖は五条をめちゃくちゃいい先生だと褒めるではないか。名前からしたら何一つ良かったことはなかったように思う。しかし彼も28なので、まあまあ経験を積んで丸くなった、いや、人を育てる意味を分かった上で教師をしているのだろうなと思う。
10代と20代では確かに違うか、と納得した。

「おっまたー!」
「やっほー名前」
「げえ」
「げえって何?げえって」
「げえって思ったから口に出ちゃった。げえ」

「誰?」
「悠仁は知らなかったね。夏油傑、僕の親友、特級呪術師。呪霊操術の使い手だよー。僕と同じく混ざってる人間で名前の虜」
「その紹介なに?私馬鹿にされてるの?」
「とある宗教団体の教祖様っていうのは入れないの?」
「カルトじゃん」
「カルトで間違いないじゃん?」
「カルトなの?」
「カルトなの」

カルトって言わないでよ…という夏油を見て笑う大人2人。
虎杖も察しが悪いわけではない。それに伏黒からも「五条先生と同じ特級の人がいる。今フリーで活動してるけど前は高専所属だった」という、その人なのだろう。
かなりの癖者、らしい。特に非呪術師を嫌っている人だから気を付けろ、と言われていたような気がする。元一般人だけど今は呪術師(仮)だぜ?と思ったが、その人はそうじゃない。と言われた。

「どうしたの?夏油くんが高専にいるなんて珍しい」
「学長に呼ばれたんだよ。あの脳筋学長まだ私を学生扱いするんだから嫌になるね」
「学長からしたら僕らなんてずーっと教え子だよ」
「私まだお菓子貰うんだけど」
「「まっじで!?」」
「たぶん、私パンダと同じ立ち位置なんだよね…あ、これ昨日学長から貰った飴、虎杖くんにあげる」
「え、あざっす」
「で、それ誰?」
「虎杖悠仁くん衛生観念が死んでる15歳!」
「ああ、例の?」
「え?なに?どゆこと?」
「宿儺の指を食べたってこと言ってるんじゃない?」
「で、君名前と近くない?どういう関係?」
「先輩後輩。ねー?」
「ね、ねー…??」
「あ、こいつも名前のブラッシング大好き人間だから。悠仁は混ざってないからライバルじゃないよ」
「…呪術師で?珍しい」
「お?ケンカか?買わずに学長にチクるぞ」
「違うよ、名前じゃないよ。名前は立派な呪術師で、私の大切な人」
「こうやって人を騙すんだよ、悪い人間だよね。虎杖くんは騙されちゃ駄目だよ。勿論だます方になっても駄目だからね」

う、うっす…。と名前を見てから夏油をチラリ。
虎杖も夏油がかなりの癖者であると肌で感じたのだろう。
最強と言う五条、その親友の夏油、同期で混ざっていない名前。
一般的な感覚は名前が一番近く、もしかしたら優しいのかもしれない。
ニコニコとしている名前とは反対に、夏油の顔が凄い事になっている。

「で、五条くん、そのブラシは」
「折角名前がいるんだからーするでしょブラッシング」
「あ、ズルい!私だって名前にブラッシングしてほしい!!」
「ブラシ持って来てんの」
「きてる」
「苗字さんゲトーさんと付き合ってんの?」
「やめてください。他人です」
「酷いな、あんなに私をトロトロにするっていうのに」
「勝手になってるだけじゃんね」
「僕もトロトロになるー!ゴロゴロも言ってる」
「あ。そうだ虎杖くん、夏油くんに体術見てもらいなよ」
「え、嫌だよ私猿と戯れる趣味はないんだ」
「面倒見てくれたらブラッシングしてあげる」
「宿儺の器くん、私が体術を見てあげよう。名前の頼みだからね、名前の」
「代わり身早っっ!!」
「ねーねー僕は?」

うるるん。と名前にすり寄る五条を名前は無視する。
そもそもお前教師じゃん。という五条以外の心情など知ったことか、という事なのだろう。
「あのね、君」と五条に詰め寄り、諭すのかと思えば「名前と同じ職場なんだから譲れよ」というではないか。これには虎杖も驚いた顔をして名前を見るが、いつもの事だからという顔をして「諦めて」と笑っている。

「ゲトーさん、でけえね」
「五条くんに負けないね」
「でもさ、あのお坊さんみたいな恰好で大丈夫なん?着替えんの?」
「悠仁、傑の事気にしてる場合じゃないよ?傑めっちゃ強いから体術」
「さて、さ…んんっ。器くん、さっさと私にやられてもらえるかな。時間が惜しいんだ」
「じゃあ、体術見てる間僕ブラッシングして?ね??だめ??」
「駄目ですね」

五条くん仕事中でしょ。というあまりにも無慈悲な正論に五条は「僕…正論嫌いなんだけど……?」と力なくつぶやいた。

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