呪術 | ナノ
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「あ、苗字さん」
「え、あ!ホントだ!!なんで七海と一緒なの」
「どったの。あ、ナナミン」
「知ってる呪術師の人がいる」
「へー?あ、女性呪術師?ちょっと紹介しなさいよ」

補助監督とカウンターを挟んで会話している人。
黒いスーツが補助監督の制服であるなら、そうでない人間は部外者か呪術師。
タブレットをもって会話しているあたり任務についての事なのだろう。最近やっとそういったものが導入され始め、紙の資料が削減されてきている。

「名前っ」
「では15分後に出発で」
「は、はい…では車準備してお待ちしています…」
「うるさいですよ五条さん」
「可愛くねーな。なに?2人で任務?」
「そうです。邪魔だからどいて」
「お疲れ様です」
「あ、お疲れ様。と、いうことは、学生引率?」
「戻ったトコ。褒めて褒めて」
「苗字さん、七海さん、同級生の虎杖と釘崎です。苗字さんと七海さん、一級の呪術師」

はじめまして!と2人の声が揃い、1級2人も「はじめまして」と挨拶を返す。
こういう場では通常教師の方がするものなのだが、五条が五条なのでそんなことを言っても「ふーん?」で終わるだろう。五条だから。

「苗字さんは五条先生の彼女なん?」
「やめてください」
「苗字さんに失礼ですよ」
「そーよそーよ。」
「えー、皆酷くない??僕泣いちゃう」

酷くない。と五条と虎杖以外の声が揃う。
五条の彼女だなんて不名誉もいいところだろう。迷惑極まりない。それは初対面である釘崎にも十分わかることなのだろう。釘崎も一応は祖母が呪術師なのだから五条家という存在については虎杖以上に知っているし、本人を見ているので「ありえない、無理」というのは理解している。このくらいの女子はそういうのには男子よりも敏感なのだ。
伏黒も幼い頃から名前を知っているし、五条という人間も知っている。その2人が?名前がまず可哀想。という考えになるのは当然と言える。

「先生、彼女でもない人に褒めてほしいの?」
「ちっちっち。悠仁、甘い、めっちゃ甘いよ甘ちゃんだよ。名前のブラッシングテクは凄いんだから」
「え、先生混ざってんの」
「うん。名前には学生の時からブラッシングしてもらってるんだけど、凄いの…」
「なんか誤解を生みそうな発言やめてくれないかな…」
「ってことは、苗字さん混ざってないんですか?呪術師なのに」
「そ。同期で唯一混ざってなかったの名前だけなんだよねー?」
「最初は馬鹿にしてたのに後々立場逆転したのは笑えるよねー。ブラッシングしてほしくて私の後ろついてまわったくらいにしてさー」
「それは言わないでっ。あの時はさ、ブラッシングの良さとかさ」
「ついでに火傷も負わされたんだよねー」
「任務で?」
「いや、私が持ってるカップ麺取り上げて、そのお湯がかかって」

最低ね。
最低ですね。
最低。
それはないわ、ないない。
と否定の嵐。確かに普通の感覚からすれば人に怪我をさせるなんて言語道断だ。
まして男子から女子への。
こうして軽く言ってしまえる程度には許してはいる、と五条は思っているが名前がどう思っているかまでは聞いたことはない。

「同期で唯一の混ざってない人間。1人いればブラッシング戦争が起こらないはずもなく…」
「伏黒と釘崎って混ざってんの?俺混ざってない」
「私混ざってる」
「俺も。虎杖、お前混ざってなくてあの身体能力なのか…?」
「お。じゃあ悠仁がブラッシング?」
「私真希さんにしてもらうし。なんで虎杖にしてもらわないとなのよ」
「俺は興味ないので」
「ナナミンは?」
「………混ざっています」
「ナナミンも苗字さんにブラッシングしてもらうの?」
「もらいません」

五条くん、学生さんに無視されてる。と思いつつ会話を聞く名前。
名前や五条が学生の時はそんな風に「混ざっている」「混ざっていない」を大っぴらに話すことはあまりしていなかったが、最近はかなりオープンにしている。
隠すほどの事ではないが、まあ聞くほどの事でもない。という事もあった。最近はそれがかなり個性としての意味合いが強くなり、耳や尾を出している芸能人もいる。

「オマエも名前にブラッシングしてもらえばいいのに」
「五条さんはソレ改めた方が良いですよ。そもそも私は名前さんとはそういう関係ではないので」
「前に名前にしてもらって腰砕けになったからか?」
「五条くん。それ七海くんイジメないで」
「本当の事じゃーん。七海のヤツ、名前にブラッシングしてもらってヘロヘロになってんの」
「撫でただけですけどっ」
「先生、そういうのって言わないのがマナーじゃね?」
「え?」
「そーだそーだ」
「五条くん、学生さんに言われて教師としてどうなの?」
「え??」
「で、七海くんナナミンなの?」
「…っ」
「可愛いね」
「僕の方が可愛いでしょ!?名前僕の耳も尻尾も可愛いって言ってたじゃん!!」

うわメンドクせ。という女性の声が重なる。
すると2人の目が合い、にこりと笑い合う。女性呪術師は少なく、基本的に結束は強いのだ。現東京呪術高専の女子学生は2人で、仲はとてもいい。

「クギサキさん?五条先生には色々大変な目に合わせられると思うけど、頑張ってね」
「困ったら苗字さんに相談させてもらいます!高専の所属ですよね?」
「ちょっとちょっと野薔薇名前にすり寄らないでっ」
「うっさいわね。女同士仲良くやろうってのに、人の交友邪魔すんな」
「そうだそうだ!女性呪術師は少ないんだぞ!仲良くするのは得なんだから」
「野薔薇が名前を狙ってる」
「狙ってねーわ!私には真希さんという素晴らしい人がいるので」
「本当に?真希?」
「私そろそろ行っていい?呪具の手入れ頼んでたの取りに行かないとだから」
「呪具使い?真希先輩みたいな感じ?」
「名前は結界術が得意なんだよ。呪霊を結界で足止めして呪具で叩くんだよ」
「そんな感じ。じゃあ私行くね」
「それでは失礼します」

お勉強頑張ってね。と手を振って歩いて行く2人。
学生から見ても女性の呪術はかなり少ない。なので女性同士で結束を深めるのは悪い事ではないし、性別関係なく助け合う、というのが理想的だろう。
何せ呪術師は混ざっている人間以上に少ないのだから。

「釘崎、あんまり苗字さんにつるむと五条先生がウザいぞ」
「はあ?」
「ガキの頃散々五条先生に牽制されたからな、俺」
「うっわ…」
「でも彼女でもないんでしょ?なんで?」
「ほら、僕五条家当主でしょ?あと僕の親友も硝子も、その他も名前のブラッシング技術には腰抜けにされてるからさー」
「そういう?」
「そういう」

「苗字さんに迷惑かけるから」という伏黒の言う意味が分かった2人。
混ざっていない虎杖も「あの人大変なんだな」という事は理解した。混ざっている釘崎も「大変なのね…」と察する。
通常であれば親しい人間にしかしてもらわないブラッシングも、ブラックな呪術師界隈では引く手あまたなのだろう。
確かに呪術師で混ざっていないほうが実際に珍しい。それは体を張る仕事だからともいえる。だからと言っていないわけではないが、身体能力的にはどうしても劣ってしまう。それが女性ならば尚更。

「前にさ、名前に結婚してっておフザケで言った事あるんだけどさ」
「ふざける度合いヤバくない?」
「名前ってば、僕と結婚するなら死んだ方がマシって言うの。本当に死なれたらこまるから適当に濁したんだけど」
「おい伏黒、苗字さんは?」
「まあ苗字さんも何かしらの理由がなければ五条先生と結婚するくらいならガチで死ぬの選ぶだろうな。他人と結婚しても相手殺されそうだし、なら1人で死ぬというか」
「先生嫌われ過ぎじゃない?何したの」
「嫌われてないよ!?結婚相手としてはアウトなだけで、友達だもん!」

友達は火傷させねえよ。と学生3人は思ったが、面倒なので言うのをやめた。
この状況でもっと面倒になるのは学生からしても避けたかったのだろう。
ただ「結婚相手がアウト」だと思っている時点で救いがないんだな、という共通の認識を持った。

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