呪術 | ナノ
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「猫、付いてくっけど」
「昨日の夏油くんのアレから、全然離れなくて…」
「トイレ行く時もついてきてたな」

寮から学校に行く3人。本日は珍しく3人での登校になった。本来であればここに夏油もいるはずなのだが、昨日のヘマのせいで夜蛾の元にいる。それを聞いた名前は「まあ、夜蛾先生なら安心だよね」とちょっと違った意味で安心していた。
猫は名前の後ろをちょこちょこと歩き、付かず離れず。いつもの通り家入や五条に対してはシレっとした態度ではあるが、威嚇をする様子はない。
昇降口に入れば名前は持っていたウエットティッシュで猫の足を拭き、付いてくるなとも言わずに好きにさせている。普段でも猫は学校も寮も好き勝手に入ってはウロウロしているので足をわざわざ拭かなくてもいいのではないかと思うが、目の前でそうしているので名前はなんとなく吹いたらしい。

「おい、スグル。夏油の席座れよ」
「お!いいなそれ!猫!こっちこっち」
「えー…夏油くん困るよ、そんなことされたら」
「いいんだよ、どうせヤガセンのとこに居るんだし」

名前の足元にちょこんと座っている猫を雑に抱き上げて夏油の席の椅子を引いてそこに座らせる。
ちょうど黒い猫なので本当に夏油の様だと五条がゲラゲラ笑い、家入が携帯で写真を撮る。
猫も猫でまんざらでもないのか、好きなようにされている。いや、昨日の疲れがあるのだろう。ふわー…と欠伸をしているのだから間違いない。

「欠伸してやんの」
「昨日物音がする度に起きてたからね…」
「忠犬ならぬ忠猫じゃん。お前人間だったらかなりモテてただろうな」

ケケケと家入が笑っていると、猫のうとうととした顔から警戒している顔つきになる。
ううー。と低い唸り声。耳は些細な音も取りこぼさないという意思を感じる。
「あ」という五条の声。

「ヤガセンと傑くるわ」
「え!じゃあ優のこの警戒は…」
「夏油じゃね?ウケる」

ガラっと教室の戸を開けて入ってきた夜蛾と足元の黒猫。
それを見るなりシャー!!と威嚇しながら名前と夜蛾の足元にいる猫、すなわち夏油に向かって唸り声をあげている。

「す、すぐる!こら、ダメだって!」
「センセー、傑来るとこっちのスグルがめっちゃ怒るんですけどー」
「名前、猫を寮に置いてきなさい。遅刻にはしないから」
「ついて来たんです…あああ、こら、優。落ち着いてよ」
「夏油を呪霊と認識してて、猫のスグルは名前を守ってるんだと思いまーす」
「じゃあ傑、お前は呪術師の使う休憩室に行け」
「な”!?」
「必死に守っている猫の方が可哀想だろ、数日どうせ動けないんだ。後で補習を受ればいい。ついでに他の呪術師も事情は知っているから追い出されないだろう」

これには名前を含めた全員が驚き、家入と五条はゲラゲラと笑いだした。
しかし名前はそれどころではない。確かに地元にいた時の低級であれば追い払えただろうが、相手は人間で特級なのだ。猫の優が人間相手、まして特級にたてついて無事で済むはずがない。
普段の夏油は「名前の猫だからね」と特にちょっかいを掛けるでもなく、言えば傍観していた。しかし今は猫同士。歳であれば優の方が上だが、歳でどうにかできるものではない。

「優!あの猫ちゃん夏油くんだから!先生と仲良し!!」
「「ぎゃはははは!!」」
「は?」
「ね!先生夏油くんと仲良しですよね!!撫でて抱っこしてください!」
「「ぎゃははははははは!!」」

机をたたいて笑う悪童2人。
反対に名前は大真面目だし、ついでに名前に気圧されて「こ、こうか?」と夏油の頭を撫でる夜蛾。撫でられている夏油も夏油で「い、いったい何が…起きている??」と言わんばかりの顔。
優は優で「あの人間が、撫でている…?敵では、ない?」と少し訝し気にして唸っている。

「硝子だって撫でられるんだよ!!」
「はあ!?」
「ね!硝子!!!撫でられるよね!!」
「ぎゃははははは!!!」

名前の強い要望、というよりも気迫に家入も気圧され、嫌々ながら夏油の頭を撫でる。
すると猫の優も「あの女が?」という顔をするのが余計面白くて五条は腹を抱えて笑っている。
夜蛾に至っては、あまりにゲラゲラ笑う五条に鉄槌を下したいところだが猫の手前それができないでいる。せっかく大人しくなりかけているのだ、ここで無駄に驚かせては意味がない。

「五条くんも仲良しだから!撫でるよ!!ね!!!」
「あ!?」
「そうだぞ五条、お前も夏油なでろよ、な!」
「ああそうだな。悟、お前も傑を撫でろ」
「ほらー!優、五条くんと猫の夏油くんだよ!2人は親友だから仲良しだよー?優も夏油くんにおやつ貰った事あるでしょ?怖くないよ、呪霊じゃないよー?」

ほらほらほら!!と3人の圧。ギロリと睨む夏油。いや、猫なので睨んでいる自覚はないかもしれないが五条からみれば十分に睨まれている。
渋々、いや恐る恐る夏油の頭を撫でる。そもそも猫自体に関わる事がなかったのが理由だ。
名前の猫である優は近づかなければ近づくこともないし、飼い主である名前にちょっかいをかけていると猫が来ることはある。しかしそれ以上はない。

「こ、こう?か?」
「ほら!あの猫ちゃん皆と仲良しだから怖くないよ!ね、優」
「……もういいか」
「え」
「もう傑の頭からはなれていいか」
「あ、うん。いいよ」
「スグル静かになったじゃん」
「うん!もう大丈夫だね、おいで優」

じっと夏油を睨んでから名前に呼ばれたからと言わんばかりに大きく溜息をついて名前の元に行き、足元に落ち着く優。どうやら夏油は猫に許されたらしい。
これでまだ猫が唸るようなら撫でられ損だろう。3人から嫌々撫でられたのだ。まあまだ抱っこされていない分マシではある。家入ならまだしも、夜蛾や五条に抱き上げられるのは屈辱的だろう。
夏油の席の椅子が引かれ、そこに「よいしょ」と飛び乗る。ちょこんと黒い頭が机から飛び出しているのが可愛いが、それは夏油だ。

「似合ってるぞ夏油。さっきスグルがしてたけど」
「二番煎じはインパクトねえな」
「優寝るの?部屋戻りな?」

名前の足元で落ち着いていたかと思えば、名前の足にもたれて眠り始めた猫に教室は和んだが、夜蛾の「では本日の日程だが」という言葉に日常に戻った。

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