呪術 | ナノ
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※すぐるとすぐる
※高専

「…どこの子?」

真っ黒な猫。
飼っているスグルによく似ているものの、飼っているからこそわかる猫の顔の違い。
体格も少しだけ違っていて、愛猫の優ではないのはわかる。
学生寮に向かう道すがら、その猫は困ったようにウロウロしていた。

「……野良、っぽくはないね」

毛艶がいい、痩せていない、声をかけても逃げて行かない。
名前を見て警戒をしてイカ耳になっているが唸りもしない。
少し考えた名前はそこにしゃがみ込み、ちちちちと舌を鳴らしてみる。するとその黒猫は遠慮気味に近づいて来た。

「どこから来たの?迷子?」

んにー。と愛猫よりも低い声で鳴く。
触ってみると優よりも筋肉質で、毛も少し長め。
抱っこ出来るかな?と思って抱いてみれば少し抵抗されたものの良い子に収まってくれるではないか。
これは飼い猫決定だな。と思って寮に連れていくことにした名前。
勿論飼うためではなく保護を目的とした行為のためだ。
愛猫を診てもらった動物病院に連絡をして、それから保健所?と色々と考えながら寮の玄関までくると五条が立っていた。

「あ」
「ん?」
「それ、どこから持ってきた」
「…猫?寮に戻ってくる途中」
「おーい!硝子ー!!傑いたー!!」
「あー?あ、名前じゃん、おつ」
「お、おつ…。」
「うっわ何お前名前に抱かれて満足そうにしてるわけ?」
「……ん?」
「つーか、オマエ本当呪力感知馬鹿だよな。それ、傑」
「優じゃない、よ?」
「そっちのスグルじゃなくて、夏油傑の方だよ名前。おい夏油、いつまで名前に抱かれてんだキッショ」
「え、うそ!夏油くんなの?えー?ご、ごめん、ね??降ろすね」

なにがどうして?という混乱で名前の頭には「???」の羅列が止まらない。
しかし同級生、しかも男子をこのまま抱っこしてるわけにもいかないので取り合ず降ろしてみる。
降ろせば降ろしたで「んいー」と少し不満そうな声で鳴く猫(夏油)。名前が2人を見れば呆れた顔をしている。

「…夏油くん、どうしたの?」
「呪霊取り込んで、こうなんだと」
「へ、へえ……」
「硝子に診せようと思ったら逃げた」
「ふ、ふうん…?」

なんで逃げる?と思って猫(夏油)を見れば、フイと目線をそらす。
まあとりあえず捕獲?確保ができたのならいいのかな?と思って「じゃあ私寮戻るね」とその場を切り上げようとするも、五条に「待て」と止められてしまった。

「な、なに?優にご飯あげたいんだけど…」
「オマエ、猫飼ってるなスグル」
「え、あ、うん?いる、ねえ猫」
「もし傑が数日猫だった場合」
「無理無理無理無理。優嫌がるもん!」
「今抱いてきたじゃん」
「保護だから!優いい子だからちゃんと言えばわかるから!」

んにー。という名前の愛猫である優がトトトトとやって来るや否や、「ううー!!!」という唸り声をあげて名前の足元にいる猫(夏油)に向かって威嚇をする。
あまりの突然の事に夏油も驚いて思わず身を低くして名前の後ろに隠れる。
普段の彼であればそのようなことはしないのだろうが、いかんせん今現在猫なのだ。言えば体は大きくても子供であって、対するもう一方は老齢とはいえ貫禄は十分すぎる。

「す、すぐる!落ち着いて。そんなに興奮したら体に悪いよ。あ、硝子、夏油くん捕まえといて」
「あ?おい夏油」
「すぐるー!大丈夫大丈夫、怖くないよー。びっくりしちゃったね、ごめんねー」

しっかりと家入に地面に押さえつけられた夏油を見逃すまいと猫の優はうなりをあげるのをやめず、大きく目を見開いている。
普段ゆったりとしていて、人を小馬鹿にしているような顔をしているあの猫が、だ。名前だけにはそれこそ猫を被る、猫なで声をだす。そんな猫。

「…なんで猫、んな怒ってんだよ」
「えー、わかんない…地元いた時も猫保護したことあったけど、こんなに怒らなかったんだけど……わうわう言わないの。いい子だから」
「夏油に名前がとられると思ったか?」
「若い猫にとられるってか?」
「あ。もしかして…夏油くん、呪霊取り込んでそうなったんでしょ?その影響かな…いつもはこんな事になってないし」
「あー、確かに。その可能性はゼロじゃないな」
「怒り方が、ほーら落ち着いて、呪霊じゃないから。小さい頃に呪霊退治した時と同じなんだよね…大丈夫だからー呪霊じゃないんだよ、夏油くんだってば」

言えばこうか?と家入。
名前を守ってきた猫のスグルは呪霊の影響で猫になった夏油を呪霊だと思って名前を守ろうとしてるって事か?と言えば、名前も五条もなんとなく納得した。語源化して、理解できたともいう。
名前が幼い頃から一緒で、自分は名前を守っているんだという猫からすれば敵とみなされても仕方がないのかもしれない。

「猫のスグルの方が優秀じゃん。オマエ猫がいるから鈍くせーの?」
「じゃあ五条、お前特級のくせになんで名前より良い結界張れないんだよ」
「な…結界は向き不向きがあるじゃん」
「じゃあ名前も向き不向きで呪力感知苦手なんじゃねーの」
「…………」
「まあ当の本人は猫の方がうるさくてそれどころじゃないけどな」

うううーー!!!やうやうやう!!しゃー!!と威嚇のオンパレード。
大きく目を見開いて、興奮したように唸る。
名前曰くお爺ちゃんなのでそんなに興奮しては体に良くないのだろう。人間も血管がプチっといくこともあるのだから猫も油断ならない。

「優、お部屋戻ろうね。大丈夫だよー、怖くないよー、あれ夏油くんだって!呪霊じゃないよ、落ち着いて。ごめん、優部屋置いてくるね」
「おー」
「あの猫やべえな」
「低級でも呪霊祓ってたわけだし、それなりじゃね?名前が大好きなんだろ」
「で、傑反転術式で治んの?」
「これからだよ。ちゃっかり名前に抱っこされて登場とは良い度胸だ夏油」
「んにー…」

誤魔化されねえからな。と言わんばかりの家入。
バタバタと寮に駆け込んでいった名前を見送り、猫になった夏油の額を軽くデコピンして牽制する。
暫くして家入の携帯に名前から「優が落ち着かないからしばらく部屋出られない。夏油くんどう?」というメールが来たので「終わり次第連絡する」と送った。
医務室に五条と家入は猫になった夏油を連行し、家入がわちゃわちゃと触りまくる。

「うーん、数日、ってところか?」
「今日戻らねーの?」
「私の見立てだとな、本業の先生に診てもらえ」
「あいつ等硝子みたいに反転術式使えねーじゃん。診せてどうにかなるのかよ」
「場数がちげーだろ。まあ他の猫になった、なんて奴がいたかはわからねーけど」
「言えてる」

一通りゲラゲラと笑っていると医務室の主たる医者が戻ったので夏油を診せ、家入と同じ結論になった。
ただ違ったのは数日というのが3日程度、という具体的な日程が分かったこと。
医師曰く「程度、ということは早まることも遅くなることも含まれているから。私から夜蛾先生に伝えておくから先生からの指示を待ちなさい」という事。

「で、傑どうするよ」
「んに”」
「寮に戻るってなると、名前んとこの猫がな…さっき名前にメールしたら今落ち着いてるって来たけど」
「じゃあもういいんじゃね?あれ賢いんだろ?名前が説明したら黙るんじゃね?」
「さっきの怒りっぷりからすると難しいんじゃないか?ヤガセンのとこに夏油連れて行こう、面白そうだし」

にやあ。と笑う家入にゲラゲラ笑う五条。思わず固まる猫になった夏油。
わっせわっせと猫の夏油を職員室にいた夜蛾のところまで運び、もっともらしい「名前の猫が夏油見てパニック起こして、それでまた寮に連れて行ったら名前の猫が可哀想なので先生よろしく」と押し付けた。

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