呪術 | ナノ
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『私、五条悟は以前より交際していた女性とこの度結婚いたしました』
という文面から始まった祓ったれ本舗五条悟の所属する事務所から送られてきたメール。
最後にはこの写真を使ってね。という一文に添付ファイルを見れば正装をした五条悟にウエディングドレスを着た夏油傑のツーショット。
勿論報道各所は一瞬ざわついたが、この写真はネタで事務所からきた連絡で結婚は本当だと証明された。
一斉にネットニュースを皮切りに「祓本五条結婚」というニュースが国内を飛び交い、SNSのトレンドもそれに関して一気に盛り上がる。
『五条ロス』
『前世の嫁ちゃん今世でも嫁』
『ウエディング夏油』
『祓本2人が結婚したのかと思った』
『明日会社休みます』『明日職場ガラガラだろうな』
人気が高い男性芸能人、職場や学校でも話題になるのだから周りのファンではない人間たちは明日の心配をするしかない。俳優アイドルが結婚や交際がわかると寝込む人間が一定数いるのは今に始まったことではないし、誰しも自分がなりえるからだ。

『いやー、本当ビックリしましたね』
『そうですね!本当におめでとうございます』

女子アナ涙目じゃん。わかる、わかるぞ…。
なかーま。
五条にマジ宣言してたあの女性俳優今どうなってんの?あれは設定?
朝の芸能ニュースでも取り上げられ、使われる写真。
正装の五条にウエディングドレスを着た夏油。夏油の身体は女性の物なので顔だけ夏油が使われているという事だ。
すでにSNSではその画像が玩具にされているが、まあ想定内だろう祓本にとっては。その顔が変にモザイクでもないのはネタでもあり、そのインパクトを強めることによってその画像を使った変な加工をすぐわからせることに意味があるのだ。
例えば個人で楽しむ分にはいいが変にネットにあげて自分があたかも花嫁だと言わんばかりの画像とか。


暫くは公の場に出れば「五条さんご結婚おめでとうございます」という定例文が並び、同時に五条も定例文のお礼を繰り返す。

「あの写真はどうされたんですか?」
「アレは嫁の案で、自分の顔を傑にしたいって言ってきて」
「え!」
「傑も傑で乗り気でさー、最初は報告用に傑もドレス着ての撮影予定が時間合わなくて。それで合成ってなった」
「げ、夏油さんがドレスに…?」
「男でデカいから全然合うのなくて、特注作るか?ってまで行ったんだよね」

ゲラゲラと笑う五条に司会は呆気にとられる。
祓ったれ本舗の2人が仲が良いのは有名な話で、ラジオで夏油が五条の前世の嫁を引くほど可愛がっているのも有名な話。特にラジオで「考え直せ」と何度言った事だろう。
リスナーも五条の前世の嫁を直接は知らないが五条に溺愛され、夏油にも可愛がれているのは知っている。その夏油がまあそんな事をするもんだ、とも思う。
ただあの夏油が可愛がっていて「考え直せ」まで言っている子と相方の結婚を喜んだのか?という事。勿論結婚は当人同士の事柄なので親しくても他人にあたる夏油にはどうしようもできないもの事実。そんな男が喜んでそんな案に乗るとは思えない。


「はいはいオメデトおめでと」
「なんだよその言い方」

じゃっじゃじゃーん。とラジオのオープニング曲が流れて祓本のラジオが始まる。
相変わらずメールやハッシュタグが多く来ており、五条の結婚についての内容がほとんど。

「皆さんご存じの通り私の相方、五条悟が結婚しましたとさ、おしまい」
「お終いにすんな阿呆。いえーい、結婚しました。嫁マジ可愛い、超かわいい」
「当たり前だろ!!お前誰だと思ってんだ」
「俺の嫁!!!」
「くっそ!!!」

夏油ご乱心
五条結婚おめ!
五条の会話いい嫁は夏油のお気に入り
リスナーが騒ぎ出す。ラジオ内ではおなじみの五条の前世の嫁が今世でも嫁になったので「五条の嫁」になったわけだ。
五条と夏油の話しぶりから相当可愛い子、というのはわかる。あの日本人離れした五条が可愛い可愛いと溺愛し、映画やドラマCMで共演した女性芸能人には全く見向きもしないあの五条が、だ。映画の公開記念のイベントでは女性芸能人がくっついてきて超迷惑だった、と言って現場を冷えあがらせたあの五条が。

「話題のあの写真なんだけど、どうして皆私が引き受けたか疑問に思っているだろうなーと思って答えます」
「俺の嫁にお願いされて断れなかったから〜。オマエ本当俺の嫁に弱いな」
「お前のじゃない!!」
「俺のだわ。いや、家の?俺の奥さん、妻!」
「こんな男のどこが良いんだ……」

地を這うような声、とはこのこと。ラジオから夏油の歯ぎしりが聞こえてきそうなほどの恨み節。これがネタじゃないとわかるのがリスナーに何割いるだろう。
しかりリスナーからすれば夏油の言い分も十分わかる。この2人は基本クズ。どうして結婚した女性は結婚してしまったのか。まあ前世からの知り合い、リスナーからすれば怪しい話だが、まあ付き合いが長いのだと思えばまあクズさもわかるのかもしれない。

「絶対私の方がいいって。アンケートとろう、私と悟、どっちがいいか」
「俺もう結婚したんだけど?」
「関係ない」
「まあ結婚してるし関係ないけど」
「はやく不倫でもして離婚しろ!!私がもらうから!!!」
「しねーわ馬鹿!!新婚に向かってなんてことを言うんだオマエ」

五条が正論を
五条正論
明日は雪
夏油ついに壊れる

「今ラジオ公式アカウントでアンケ作ったから。皆、私と悟どっちが彼女にふさわしいか票入れて」
「もう籍いれてるんだってば」
「うるさい!」
「うるさくねえよ事実だわ」

時間は放送10分前までだからね猿共!!と一旦切り上げ、コーナーに入る。
しかしコーナーに入る度に「五条結婚おめ!」「ご結婚おめでとうございます」「嫁泣かすなよ」などとくるわくるわお祝いのメッセージ。その度に夏油がギリギリと音を立てるので「地を這う夏油」だの「これまた愛憎ドラマか映画くるわ」とか、ガチ勢からは「愛の重い傑最高」という変なメッセージが届く。
順調でもなく、自由にコーナーが進み、放送が終わる10分前に宣言通りにアンケートの結果を覗く。

「は…はああ!!?なんで悟と私が50:50の引き分けなの!?」
「マジで?ウケる」
「何も面白くないが!?」
「ま、実際結婚したのは俺なんだし?余裕余裕」
「私のだもんんんんん」
「ちげーわ。あ、でも俺の事“お義兄さん”て呼ぶなら、ちょっと俺の嫁に甘えてもいいが?」
「ぜってーいわねえ!!」
「口調変わってっぞ傑。まあ俺達ラブラブなのでー?こーんなしょうもないアンケートなんて全然気にもならんがな」
「お前を殺して私が結婚する…」
「急に不穏な事言うなよ…」

こわ。とガチでビビる五条の声。
その後ドロドロドラマやサイコパス的な役に抜擢され、俳優としてかなりブレイクすることになるだが、それはまた後の話なのである。

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