呪術 | ナノ
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※お付き合いをするときの話


「どうする…?」
「どうしましょうか…」
「……七海は、どうしたい?」
「…ここで私たちが勝手に話をしても埒があきません。苗字さんを交えて話をしましょう、そうでないと進みません」

2人で話し合い、名前に連絡を取る。
『本日任務終わって用事がなければ私と灰原と以前話していた個室の居酒屋行きませんか』と名前にメッセージを送る。
すると名前からすぐにメッセージで「OK」と可愛らしいキャラクターがニコニコした画像が送られてきた。
すぐに店の住所と時間を送り、予約を取る。
名前の性格からして任務で時間が圧せば連絡をくれるし、基本時間に遅れることはない。またすぐに『たのしみ!』と書いてある可愛いキャラクターがニコニコしている画像。

「苗字さんに連絡しました」
「う、うん…」
「苗字さんは悪い人ではないし、大丈夫でしょう」
「断られても、大丈夫だよね」
「私も、大丈夫だと思います」

任務が終わり、先に店に着いた2人。
部屋に通され適当に名前が好きそうなものを頼み、今から酒を飲んでは本題に入れないからとソフトドリンクで2人で誤魔化して、適当な食事をする。
すると七海のスマホにポコンとメッセージの受信音がなり、見れば名前から『着いたよ』とメッセージが来ている。

「お疲れー」
「お疲れ様です」
「お疲れ様!苗字さん何飲みます?」
「2人は何飲んでる?あれ?ウーロンハイ?珍しいね」
「いえ、ウーロン茶です」
「え?なんで?これから任務…じゃ、ない、よね?」
「実は!苗字さんに話があるんです」
「…灰原くんが?」
「いえ、私たち2人から」
「………じゃあ、私もお酒、まだの方がいいね。ちょっと食べてからでもいい?お腹空いて」
「飲み物は?注文しましょ!話している最中に店員さん来たら、ちょっとアレなんで」
「う、うん…」

じゃあ。とドリンクメニューを見て、他にフードメニューを眺めて、テーブルに並んでいる物だけで良いと思ったのかドリンクだけを注文した。

「…食べて、いい?」
「はい!」
「2人も、食べよう?なんか、意味もなく私も緊張しちゃう」
「で、では…食べますか。私たち既に少し頂いていますが、いただきます」
「そ、そうだね…いただきます!」

料理を3人でちびちび食べていると店員が入ってきて名前のドリンクを1杯置いて出て行く。
それをスタートとして室内がシンと静まり、テーブルをはさみ名前、灰原と七海という対面が始まる。

「そ、それでお話とは…もしや、2人して呪術師を辞める?とか?」
「辞めません。復帰した私に嫌味ですか」
「ごめん…え、でも何だろう……あ、結婚するとか!?」
「違うんですよー」
「えー…んー、なんだろう…五条くんと夏油くんにイジメられた?それは学長に相談した方がいいし…」
「あの、私たちの話聞いてもらっても?」

名前は背筋を伸ばし、両手を脚の上に置き、まるで面接のような格好になる。
名前には本当の面接の経験はないが、一応マナーで習ったり潜入のためにマネはしたことがあるのだろう。
緊張は名前だけではない、2人にも緊張が走る。

「…実は、七海とも話したんですけど」
「私たち、苗字さんが好きなんです」
「…はい?」
「それで、苗字さんにお話しっていうのがですね…どっちかを選んでもらうか、どっちも振ってもらうか、でして…」
「へ?」
「ちなみに私たちは2人で話し合って、2人で苗字さんにこういった場で伝えて、お互いスッキリさせましょうという事なんです。勿論他人に口外することはありません。何より苗字さんであれば…困らせてしまうかもしれませんが、勝手に、すみません」
「え、ちょ…待って?えっと、灰原くんと七海くん、私が、好きって、こと?」
「はい」
「そうです」
「んーと、それは、えっと、恋愛、的、な?先輩後輩?」
「男女の方です」
「恋愛です」

えー…?と首をかしげて名前は瞬きを何回も何回もする。
言えばキャパオーバー、頭をフル回転しても今の状況が飲み込みない状態。
とりあえず注文していたジュースをゴクゴクと飲むしかできない。

「話を整理しよう」
「はい」
「七海くんは私が好き」
「はい」
「灰原くんも、私が好き」
「はいっ」
「それで、2人は私と、付き合いたい?」
「ええ、まあ…はい」
「まあ…あ!苗字さんを困らせたいんじゃないですよ!」
「うん……うん、うん」

今めちゃめちゃ困ってますけど。と言わんばかりの名前の雰囲気を察した。
しかしこうなったのは七海と灰原が発端である。
勿論2人とも名前が困るであろう、とは想定していた。実際かなり困っていて頭を抱えているのだから申し訳なく思う気持ちもある。しかし2人でそのまま秘めておくには呪術師という職業柄難しかった。今日明日とも死ぬかもしれないと思えば、2人で振られることくらい些細な事だと割り切った。

「……んー…、それってさ、どっちかとしか付き合えないのかな」
「え?」
「いや、何言ってんだって話なのはわかるんだけど」
「3人で付き合うってことですか?」
「お試しで?あ、ちゃんと真面目に提案してるからね?あの2人と違って2人とも真面目に言ってくれてるのわかってるからね!」

あの2人、というのは同期の特級の事。あれは何をしても悪ガキのまま成長している。
同期である名前をおちょくり、玩具にしている。まだ夏油の方は一般家庭出身という事もあってマシな部分はあるが、基本特級のあの2人はクズである。
そんな扱いを受けているので慣れている、というには少々悲しい部分がある名前。そうではないとしっかりと認識しているので、この場のこの話は本気なのは理解している。

「どっちかと、私が付き合ったら、気まずいでしょ?」
「え…んん、まあ、はい」
「そう…ですね」
「じゃあ、お試しで3人で付き合ってみようよ」
「正気ですか?」
「呪術師が正気じゃやってられないでしょ」
「あ、五条さんのヤツ!イカレてないとやってらんないってやつですね」
「呪術師の寿命は短いでしょ?それに時間も少ない。家系でしてるならまだしも、私たちは一般家庭出身。幸い皆1級だし?価値観も近い。まあこんな3人で付き合うのは?っていう女が嫌じゃなければ」
「………」
「………」
「あ、ここで辞退してもらっても私は構わない。ついでに3人で、ってなった場合は3人でルールを決めよう?線引き、ルールがあった上でのお付き合い」

特級と他人に反転術式を施せる人間に比べたら平凡だ。と人は苗字名前を評価する。実際能力としては平たん、結界と呪具で呪霊を祓っている。言えば結界術が得意で補助監督よりもいい帳を落とせるし強固な結界で盾のようにも使えるし、呪力があるもののトラップとしても使える。
まあ、今となってはさすがあの特級と反転術式の同期だ、ともいえるくらいの狂いっぷりだ。
2人は顔を見合わせて目で会話をする。意思は変わらない、という事だ。

「「よろしくお願いします」」
「……私が言うのも、アレだけど、2人とも狂ってるよね…」
「苗字さんが言い出したんじゃないですか」
「そうです。ですが、それも一つの案です。結婚は男女という縛りが今現在ありますが交際に関しての縛りはない、ですからね」
「じゃあ、ルール決めないと」
「っと、その前に。乾杯としましょうよ。お酒飲もうよ、お酒!祝杯だー!ビール?日本酒?私ビールがいいな」
「好きなのにしましょ!」
「ではここは苗字さんに合わせてビールをジョッキで3つ頼みますか?」
「ジョッキ!?」
「グラスでは格好がつかないですから。残したら私か灰原で飲むので」
「じゃあ、そうしよっかな!!ジョッキなんて初めてー!硝子みたい」

乾杯の後、簡素な基本ルールを作り、そこに各自で意見を出し合って肉付けをしていく。
一番最初に決めたのは誰に報告をするか、である。名前の希望としては家入には報告をしたいという。理由としては医療関係者で誰かの万が一を想定し、すぐに連絡をもらえるようにという事から。これには反対する理由がないので満場一致で可決された。

「夏油さんと五条さんはどうします?」
「言わないに一票。理由としてはクズなので。それ以上の説明要ります?」
「あー…あえて言わないけど、気づいたら?でいい?」
「そうであれば仕方がありませんからね。それでいいですか灰原」
「わかった!」
「夜のお話、する?」
「それはもう少し後でも」
「必要だからこれは絶対に話し合わないと、だね!」
「とりあえずお試し期間は3ヶ月っていう設定で、それ以上続くようなら考えようか」
「賛成!」
「私も」
「はい!呼び方はどうしますか!」
「お仕事関係の時は今まで通り、プライベートは名前呼びが良いと思います」
「切替だね。雄くん?建人くん?」
「わ!なんかいいですね!」

こんな些細な事で盛り上がれるのは、もしかしたら学生の時以上の青春かもしれない。
3人で酒を飲みつつ、あーだこーだとルールを決めていく。
送ることのできなかった青春を取り戻すかのように。

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