呪術 | ナノ
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「あれ、言ってなかったっけ?」

はいお土産。とたまり場のようになった医務室で名前が沖縄旅行のお土産を配り始めた。
同期だから、という事もあって1人ずつ準備してくれるあたり優しい。

「硝子と夏油くんは泡盛!見て、シーサーの形してるの」
「大切なのは中身なんだよ」
「可愛いじゃん」
「名前の可愛いの基準て…」
「硝子のはカッコいいの、夏油くんのは双子ちゃんも見るかもしれないから可愛いの」
「あ、本当だ。こんなかわいいボトルあるんだ…」
「灰原くんが見つけてくれたの!硝子のは七海くん」
「名前、僕のは?あまーいお菓子でしょ?」
「ふっふー!五条くんは、これ!沖縄と言えば!!」

「「ちんすこう!」」と五条と夏油の声が被る。
しかし名前の手には紅芋タルトの箱。
名前が「へ」というと家入はゲラゲラと笑ってテーブルを叩く。
笑っている家入だが、家入も2人同様に「ちんすこう」を持ってくると思っていた。

「そっちが、よかった…?七海くんが絶対こっちがいいって」
「七海わかっているな。んふふふふふふ」
「七海下ネタ対策してきたね」
「あ、そういう!?だから七海くん絶対こっちって…言ったのか」

残念そうにしている特級2人を見て、名前は笑って納得した。
まさかこんな年になってまでそんな下ネタを仕掛けてくる人間なんていないと思っていたが、ここにいた。
だからこそいろんな味が入っている商品を手にしたら「五条さんにはこれにしましょう。こちらの方が絶対にいいです」と推してきたのだ。

「七海くんと灰原くんは補助監督さん達にお菓子置いてあるから、ひとつくらいは貰っていいと思うよ」
「こっちは名前持ちなの?」
「ううん、3人で出しあったよ。この年で割り勘っていうのも変な感じだけど」
「それが3人の決め事なんだろ?ルールには従うのが一番だよ」
「で。なんで3人で付き合ってんの?」
「私たちに黙ってまで」

あとここの同期で食べるクッキー!水族館で買ったの、可愛いでしょ。と缶に入ったクッキーを取り出して名前は特級達の問いにどうやって答えたものかと少し悩む。
黙っていたのは周りから「面倒だから黙っておけ」という大多数の忠告と「気づかないほうが馬鹿」という元も子もない一言。
いちいち付き合った別れただのは面倒だから一部の仲のいい人間にしか報告はしていない。報告の理由としては誰かが怪我をしたときにいち早く連絡をもらえるから、等の理由からだ。
実際特級には言っていなかったし、今までバレていなかった。馬鹿、ということだろう。

「まあ、黙ってたのは事実だけど、私的にはすぐバレると思ってたら、今まで何故バレなかった?的な?」
「こいつら他人に興味ないからな」
「ないわけじゃないけど、意外だったよ。どういう経緯?」
「あ、それは言わない。言っちゃ駄目って約束になってる」
「誰と?」
「普通に七海と灰原だろ。意地が悪いぞ」
「彼氏に怒られちゃう」
「そんな事で怒る彼氏なんて捨てちゃえ。僕が味方になるぞ」
「私も、硝子も」
「心強いな」

あはは。と笑いながら水族館に関係する生物の形をしたクッキーが消えていく。
シンボルのジンベエザメ、イルカ、ペンギン…。言えば女性ウケの商品でいてバターも香るのでまあまあ美味しい。
現に五条がバリバリ食べている。クッキーはバリバリ食べる物じゃないはずだが。

「上手くいってるから、まあ不満とか愚痴があるようなら相談しようかな」
「本当に?上手くいってんの?真面目に?」
「上手くいってなかったら旅行なんて行けないよ」
「いいな、私も旅行行きたい。温泉とか」
「お、いいねー!じゃあ同期で行っちゃう?」
「お前ら休み被らねえじゃん。それに名前は彼氏持ちだぞ?」
「やだ!名前ちゃんの彼氏束縛強いの!?さと子に言ってみなさい!」
「すぐ子にも教えて!」
「なんだそれ」

んふふふふ。と思わず名前が笑う。急なオネエキャラになったのはやはりインパクトが強い。
そんな同性キャラ風になったからと言って名前がそう簡単に教えるわけではないが、面白い。
名前が思うに、知らなった腹いせではないが、疎外感が面白くないのだろう。根ほり葉ほり知りたいお年頃ではないが気にはなる。そんな感じなのだろう。

「失礼しまーす、七海、苗字さんいたよ」
「失礼します、ここに居たんですか」
「お、話題の2人じゃん」
「よう七海、まあこっち座れよ」
「灰原も、ほら」
「お前らここ医務室だぞ、誰か来たら消えろよクズ2人」

ちょいちょいと大きな男が2人を手招きする姿はなんだか怖い部分がある。
にやりとわらい、片方は目隠しをしているのだ。そんな怪しさ満点の2人とはまあ10年近い付き合いがあるからこそ怖くはないが、初見であれば怖いのは間違いない。
備品のパイプ椅子を引っ張って来て4人が囲んでいる簡易的なテーブルに2人も加わった。

「で?」
「はい?」
「僕ら君ら3人が付き合ってるの、旅行行ってるので知ったんだけどさ」
「え!そうなんですか?気づいているんだと思っていました!」
「今更なんですか?2年以上も前の話」
「あ、お茶いる?」
「お願いします!」
「では私も」
「おっけー」

カチャカチャと音を立ててお茶を淹れて、名前が戻れば家入は特に変化はないが特級2人がニヤニヤしている。
それを察した七海の嫌な顔をしているが、灰原は気づかないのか通常運転の顔。

「名前ってば彼女〜」
「だからやめとけって言ってたんだよクズ共。まあ気づかないとは思っていなかったがな」
「本当に気づかなかったんですか?五条さんはまだしも夏油さんまで」
「どういう意味かな灰原。返答次第でお前出張入れんぞ」
「クズクズどクズ」
「硝子は3人の味方なわけ?」
「当たり前だろ。私はあの2人が裏切っても名前の味方だ」
「硝子…」
「裏切りません!」
「裏切る必要がどこに?本当にお2人わからなかったんですね、今更ながら」
「私は仲が良いなとは思っていたけど、まさか3人で交際とは思わなかったかな」
「そーだよ、そこだよ」

ホントかよ。という家入の突っ込み。
察して言わないのと、知らなかったは別物だ。その的確な突っ込みに名前と七海は笑い、灰原は「え?」と頭を傾げた。
おそらく灰原の場合は「知らなった?まっさかー」という意味も含まれているのだろう。

「あ!もしかしてお2人とも苗字さんが好きなんですか!?」
「「そうはならんやろ」」
「違うんですか?苗字さん可愛いのに!」
「ありがとうね」
「はい!」
「良いコンビだよ、まったく」
「まあお2人が気になっているのはどういう経緯で3人での、と言う所でしょう」
「おう」
「気にしてどうするんですか。個人的な事でしょう?業務に支障がありますか?灰原ではありませんが苗字さんに恋慕しているわけでもないでしょう」
「気にするなお前たち、クズ共は自分が知らなかったから拗ねてるんだよ」
「寂しいんですね!大丈夫ですよ、苗字さんのこと大切にしてますから。ね、七海」
「そうですね」
「大切にしていただいています」

いえーい。と言わんばかりにどやる名前。
実際大切にしあっているのは見てわかる。名前自身も2人に懐いているし、2人も名前に懐いている。人間相手、まして成人している人間に対して“懐いている”と言う表現はアレかもしれないが、実際に“懐いている”という表現がふさわしいとも思える。イチャイチャ、と言うよりもじゃれあいが似合っているのだ。

「で、お前ら名前に用事だったのか?」
「連絡がつかなったので。名前さん家入さんの事好きですから」
「任務とか以外で姿見えないと家入さんのところですからね!あ、お土産貰いました?」
「貰ったよ」
「灰原がこれ見つけてくれたんだって?可愛いじゃないか」
「でしょ!これ絶対夏油さんにって思って!」
「で、七海は僕に紅芋タルトを推した、と」
「ええ。ネタ回避にもなってちょうどいいでしょう?」
「2人して声揃えて『ちんすこう!』って言うんだよ、笑っちゃった」

名前が笑うのに対して七海は冷静に2人を軽く睨み、灰原は「七海が思った通りになったね!」と七海を見ていた。

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