呪術 | ナノ
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※夏油灰原生存IF
※夏油Not離反
※スピネル
※3人交際してる

ぽこん。と家入のスマホがメッセージの着信を伝える。
スマホを手に取り、ふふふと笑うので医務室で家入を中心に茶を飲んでいた特級2人がどうしたのかとそのスマホを凝視した。

「どうしたの硝子」
「硝子がスマホ見て笑うなんて珍しいね、誰から?」
「名前から」
「名前?休暇中でしょ、アイツ」
「今旅行に行ってんだよ、沖縄」
「沖縄?」
「そ。学生の時のリベンジだって」

ほれ。と名前から送られてきただろう写真を2人に見せる家入。その写真には名前の姿はなく、後輩である七海と灰原の姿。
七海は真顔でピースをし、灰原は正反対にいい笑顔でピースをしている。

「名前は?」
「なんで灰原と七海?仲良いのは知ってるけど、3人で旅行する仲なの?」
「名前は撮影者だからいないんだろ。つーかお前ら知らんのか?」
「何を」
「あいつら3人で付き合ってんぞ」

嘘!!?と思わず2人の声が揃う。
確かにあの3人は仲がいい。良く食事にも出かけていたのも特級2人は知っているし、どちらかがその3人の誰かを誘うと大抵「先約がある」と断られたことがある。
出張のお土産も大多数と個、という差があるのも知っている。特に五条が個に興味を持つと威嚇されるのだ。

「ま、まじ…?」
「知らなかった…硝子はいつ知ったの?」
「付き合うって報告受けたから」
「僕貰ってない」
「私も」
「お前らに言うわけないだろ、面倒になるだけだし」
「でも今硝子言ったじゃん」
「もう付き合って2年だしな、むしろ知らないお前らにウケるわ」

さっと見せていたスマホを白衣のポケットに突っ込み、コーヒーを飲む家入。
特級2人は自分の知らない同期の側面に驚愕している、と言うのだろうか。2人で「え…」「えー…?」「嘘」「え、え?」とまるで女子高生の様に2人で戸惑っている。こんな女子高生がいたら本当に嫌である。

「じゃ、じゃあ3ぴ…」
「下世話な話すんじゃねえよ五条」
「悟、付き合うといってもそういう事がない場合もある」
「ほー、お前女と付き合ってそういうことしないんだな。意外」
「するけど!!え、まって?名前大変じゃない?」
「知らねえよ。んな話しないからな。お前らそろそろ出て行ってくれないか、次の仕事があるんだよ」

ポイポイと投げ出されるように医務室から追いやられた2人。
時計を見ても次の任務も授業にもまだ少し時間がある。五条が私室化している部屋に入って、夏油は名前に電話を掛ける。

『もしもし?』
「やあ名前。今沖縄なんだって?」
『うん、これから水族館行くの』
「いいね、水族館。ちゅら海?」
『そう!大きい水槽見るの楽しみ。で、何の用事?』
「単刀直入に聞くけど、君七海と灰原と付き合ってるって本当?」
『うん、本当』

あちらの電話の近くで男性の声が聞こえる。近くにいるのだ。
どうしました?
夏油さん?
任務ですか?と2人の声がする。

『夏油くんが2人と付き合ってるのかって』
「あ、七海か灰原に代わってもらえる?」
『ん?いいけど…灰原くん』
『はーい灰原です。なんですか夏油さん』
「今沖縄なんだって?いいね、旅行」
『はい!高専の時のリベンジがしたいって計画しました!』

高専、沖縄。
言えば特級にとっては痛い思い出の場所。しかしこの3人には違うのだ、という現実が何ともいない。もやもや、というのだろうか。2人で顔を見合わせて笑っていいのか怒っていいのか。いや、苦い思い出の地なのは2人で3人は悪くない。

「そっか、楽しんでくるんだよ」
『はい!あ、七海に代わりますね!』
「え」
『…はい、七海です』
「や、やあ七海…元気?」
『?ええ、まあ、はい』
「お土産楽しみにしているよ」
『夏油さんが?』
「私が楽しみにしちゃ駄目なのかな」
『いえ…まあ家入さんと同じく酒でも買いますが……』
「ところで、君たち3人で付き合ってるらしいじゃないか」
『ええ。下世話な話なら切りますが?』
「言うじゃないか…名前泣かせるなよ」
『はあ?』

ブツン。と切れた接続。切り方は七海らしいが、七海が話の途中で切るとも思えない。
相手が五条であれば納得だが今回は夏油だ。
だからと言って名前が横から切るような性格でもない。では灰原?それもない。
ではやはり七海かもしれない、と夏油は切られたスマホを眺める。

「で?」
「3人の交際は本当らしい。否定してない」
「まあ聞こえたけど。お前コーヒー飲む?」
「さっき飲んだからいらないよ」
「そー言うと思ったから淹れてねえけど」
「あのね…」
「あいつらがねえ……」
「まあ名前の場合、1つ下の彼らと仲良かったしね」
「遠慮してたもんな。なんでかわかんないけど」
「硝子とは同性ってこともあって仲は良かったけどね。少ない女性呪術師の結束は今も強いよ」

がさがさと音がすると思って、その方向を見れば五条が菓子を頬張っている。
無下限やら六眼、反転術式で糖分が足りないとか言っている。夏油自身それが本当かどうかは怪しいと思うが、本人がそういうのだからそうなのだろう。
反転術式をオートで、という芸当は到底マネできるものではないし、なにより夏油は反転術式が使えないのだ。

「君まだ食べるの?」
「あー?んー、なんかあの3人が付き合ってるって聞いたら驚いて糖分欲しくなった」
「なにそれ」
「なんだろう、驚いて反転術式出たのかも」
「ショックなの?」
「かも?わかんねーけど」
「何にショックなの?3人が付き合ってること?名前が付き合ってる事?」

ニヤニヤして夏油が五条に聞く。
特別な学年だった。特級が2人の他人に他人に反転術式を使えるのが1人、平々凡々なのが1人。劣等感を持つのが普通だろう。まあ五条以外は名前にそう思っていただろう。それでも名前は努力していたし、卑屈であってもそれなりにふるまっていた。ついでに3人からはまあまあ可愛がれていた。
1つ下の2人は特級でもなければ他人に反転術式を使えない。いえば名前の仲間だった。
思えばとても単純明快。仲間意識があるからこそ、だ。

「でも黙ってたのは私も傷ついたな」
「へえ。傑の場合は『ふうん』で終わらせそうなのにな」
「私なりに名前のこと可愛がっていたつもりだし、灰原も七海もね」
「僕は?」
「悟は可愛くないだろ。190超えてる成人男性だろ君」
「うるせえゴリラ。名前は僕か傑と仲良くなると思ってたもんなー」
「どうして?」
「名前は1人ではいられないっぽいじゃん。だから、強い誰かに捕まってそうだなって」
「硝子は?」
「硝子は1人で勝手にしてそう。タバコ吸うし酒飲むし」
「名前だって酒飲むだろ?飲めないのは君だけ」
「うるせー」

しかし気になるのは3人交際、というところ。
イカレていなければ呪術師はやっていられない、五条が言う言葉だ。確かにそうでなければやっていられないだろうと夏油も、他の呪術師も思う。それは真理だ。こんなイカレた世界でやっていくにはそれに順応しなければいけない。だからこそ七海は一度折れてしまった。
特定の相手を持たないでもなく、ただ1人を相手にするのではなく、3人で。

「どうして3人なんだろうね」
「なー」

名前も普通な顔してイカれてんね。と五条が笑うので夏油もそれに笑って頷いた。

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