呪術 | ナノ
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目が覚めると同時に夢が終わったような感覚。
ああ、戻ってきた。「私」が。
ベッドの中でゆっくりと深呼吸をする。虚ろだった、靄がかかった脳内に酸素を廻す。
身体を起こすと違和感があるのは、まだ身体だけは呪いにかかったままだからだろう。
普段見慣れた体格ではなく、なんとも弱弱しい。
用意された制服を着こむか、ここに来た時に着ていた服を着るか。突然戻った時の為にいつも着ていた方を手にする。

「すじこ!」
「狗巻くん、おはよう」
「高菜?」
「身体はまだみたい。でも記憶は戻ったから」
「……明太子」
「めんたいこ……うーん、ごめん、わからないや」
「………」

着替えて共同スペースのテレビをつけてニュースを見ていると狗巻棘が制服姿ではない名前に声をかけてきたのだ。
付き合いははあそれなりにあるがパンダ程コミュニケーション能力が高いわけではないので名前は「うーん」と悩む。
何か言いたいことがあるのはわかる、しかし筆談か何かしないと名前には彼が何が言いたいのか十分理解はできない。

「お。名前と棘じゃん」
「おはようパンダちゃん」
「ん?パンダちゃん…戻ったのか?」
「そうだよ。狗巻くんになんか文句を言われた気がする」
「明太子」
「あー。せっかくだから制服がいいってさ。可愛いのに」
「狗巻くんだけだよ、そんな事言ってくれるの」
「おかか!」
「悟も喜びそうだな」
「ま、私は今記憶が戻ったのでこのままでいいです。制服は卒業」

雑談をしていれば次々と学生たちがスペースに入ってきて名前の服装が違う事に疑問を持って話しかけてきて名前はその度に名前は「記憶だけね」とその都度答えていく。
一番喜んだのは虎杖で「よかった!ホントよかった!!名前さんゴメンな、俺ちゃんと気を付けるから!」と手を握ってみたりハグをしては身体全体で喜びを表現する。その姿はまるで犬の様で、その騒がしさにイラついた釘崎に「うるさい!」と怒られていた。
朝食をとって名前も学生と同じ様に学校に向かう。

「記憶戻ったのに学校行くの?名前さん」
「とりあえずね。スマホないし、一応五条くんに報告しないとだし」
「別にいいんじゃないですか?先生に言わなくて家入さんにスマホ返してもらえば」
「んー、身体がまだ15歳辺りだから任務も満足に出来なさそう」
「じゃあ暫くは一緒に学校?」
「どうだろ。寮からは出ようと思ってるけど」
「え!やだ名前さんまだ寮にいて!女子トークしたい!」
「また今度ね」

席について机の中をさぐる。名前は学生ではないので入っているものと言えば使っていない現国の教科書が一冊。一般教養だからと一応は授業はあるが縁がないに等しい授業だ。それでも当時は読書が好きだったので暇をみては読んでいた記憶がある。
ぱらぱらとページをめくると懐かしい匂いがする気がする。

「おはよー!GLGだよ!今日は時間通りとか凄くない?」
「自分で言っちゃダメじゃない?」
「普通は時間に遅れないのよ」
「たまたま時間通りに来たからって調子に乗らないでください」
「皆朝から元気だね!良い事だ。ハイじゃあ出欠とりまーす。全員いまーす、はいお終い」
「……先生」
「はい名前さん」
「記憶が戻ったので硝子のところ行ってスマホ回収してきます」
「…………あ、ほんとに?本当だ……」

教室に入るなり自分のペースに持ち込む五条に名前はさっさと話を切り出した。
目隠しをくっとたくし上げ、片目だけで名前を確認する。わざわざ目を出す必要はないと思うが、名前にしてみれば納得してくれればそれでいい。

「え、じゃあ今先生って言ったのは、今の名前さん…?え、やだ、ドキドキする…」
「キモ」
「ということで。お世話になりましたー」
「あ、硝子今居ないよ。今日午後からだって」
「じゃあ一旦家帰るわ。伊地知くん時間あるかな」
「僕の授業受けてよ!」
「五条くん授業しないじゃん……」
「してるもん!僕ちゃんと先生してるもん!!」
「ではこの行動について学生の皆さんはどう思われていますか」
「クズ」
「名前さんの事考えてるんじゃ?」
「虎杖、アレはただの我儘だから自分の為だ。我儘は良くないと思います、特に名前さんに迷惑をかける行為は早々に止めてください」
「この件について五条くんはどう思われますか」
「まって、話し合おう」
「話し合う必要はない。私学長のところ行くから、お世話になりましたバイバイ」

名前が手を振ると学生たちは手を振って見送る。一人デカい成人男性が喚いているのが煩いが名前は無視して教室をでる。
硝子がいないのは痛手ではあるが別にスマホがなくとも生活はできる。まだこの身体では任務に就くことは出来ないが他の事はできる。

「おや、名前さん授業は」
「記憶戻ったから学長の所に行くの。おはよう伊地知くん」
「おはようございます。そうでしたか。今学長は学長室ではなく花壇に水あげていましたよ」
「ありがとう。伊地知くんこの後時間ある?家にいったん戻りたくて」
「すみません、任務が入っていまして」
「そっか。残念。ありがとう、任務気をつけてね」

頼ろうと思っていた伊地知にはフラれてしまったが、学長の居場所はわかった。
学長は顔に似合わず可愛い物が好きだが花もそれに含まれていただろうか。名前の記憶ではあまり印象には残っていないが名前が知らないだけという可能性もある。学生だった時からもう何年も経っているのだ、知らない事もあれば変わったこともある。
伊地知に言われた通りに花壇に向かえば学長が花に水をやっている。

「学長」
「どうした、授業中だろう」
「記憶が戻ったので。硝子に会おうと思ったら不在だときいて、それで」
「そうか、災難だったな。家入に預けていたスマホなら預かっている。学長室にあるから返すぞ」
「ありがとうございます。家に一度戻りたいと思うのですが」
「戻って大丈夫か?」
「家に戻っても一人なので何も問題はありません」
「道中だ。伊地知あたりに送らせようか」
「これから任務だそうです」
「任務は七海の補助だからいいだろう、七海の知っていると聞いている」
「……じゃあ、伊地知くんにもう一度掛け合ってみます」

一緒に学長室に行きスマホを返してもらう。充電はかなり減っているがとりあえずは使えそうである。画面にはびっしりと仕事の電話だろう、着信履歴が収まない程あるのがわかる。見れば名前が呪われた日とその翌日をピークに少なくなっている。家入が伊地知を使って手をまわしたのだろう、それに関しては感謝しかない。あとでお礼をしないとと思いながら他に何か連絡はないかとチェックするも、良いのか悪いのか何もなかった。
寮に戻る前に伊地知に電話をかけて学長に了解を得たから送ってほしいとお願いしてみれば「それであれば問題ありませんでお送りします」と快く受けてくれた。

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