呪術 | ナノ
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「許さん…絶対に、許さん。絶対に、だ」

じゃかじゃかじゃかじゃか。とラジオのオープニング音楽をバックに、最後の「だ」にエコーがかかる。
珍しくオープニングトークらしいトークはなく、この夏油の一言だけ。
まあファンにしてみれば「また五条がなんかしたな」程度で2人のわちゃわちゃしたトークが始まるのを待つ。

「うっせーな、お前には関係ねーじゃん」
「あるね、あるね、大ありだね!私の可愛い可愛いお気に入りの子をさ、聞いてくれないか皆」
「前世の嫁とお試し期間だけど結婚を前提に付き合う事になったーイエー!」
「うわ言ったよ、言っちゃったよコイツ!公共放送だよ」
「別に良くね?前から前世の嫁嫁嫁言ってたし」
「考えなおしてくれないか…」
「やっと懐に入ったんだから離さねーよ。このまま結婚までこぎつける!イチャラブ生活送るんだよ」
「彼女の懐は深すぎるんだよ…」

一瞬にしてざわつく界隈。
「五条ついに」「五条前世の嫁」「五条結婚秒読み」と「五条」「五条」「5条」とトレンドワードと化していく。
そして夏油の「私のお気に入りの子」という引っ掛かるワードには夏油ファンのみならず食いつき、「夏油お気に入り…?」「夏油が気に入る子…?」「祓本解散の危機じゃね?」と違う意味でざわついている。

「本当、あの子には考え直してほしい…」
「めちゃくちゃ考えた上でのお付き合いだわ。頷かせるのに苦労したんだよ馬鹿」
「君のやり方は汚いんだよ」
「あ?汚くねーし」

夏油に汚いって言われるって…とまたしてもざわつく。
やばい方と(まじで)やばい方。と揶揄されている祓ったれ本舗の2人。やばい方は五条、(まじで)やばい方夏油。ニコニコと人当たりの良い風で言動はかなりきつかったりサラリと酷いことを言う。ちなみに五条は普通に酷い。

「お前の方が泣かしたじゃん」
「あれ私悪くないし。でも泣かしせてしまったのは…悪かったな。でも泣き顔可愛かったなあ…」
「うわ」

前世の嫁=夏油のお気に入り。
やばい構図だとざわざわするSNS。適当にトークを終わらせ、コーナーが始まるも質問がポコポコ湧いてきてコーナーよりもそっちが気になる!という声が止まらない。
そして「泣かせる…?」とざわつく。
言えば公共の放送で「女性を泣かせた事実」が放送されたわけだ。

「あ、番組へのメッセージで私が女の子泣かせたの最低ですね。だって」
「俺は泣かせてないし」
「困らせてるけどな。あー、もう!なんで悟……なんで、悟……」
「俺の嫁」
「違う!」
「になる予定だしー?イチャラブして、お試しを経て結婚を前提にお付き合いしてー、結婚するのお」
「キッショ」
「好きに言えよ。結婚式はどんなのが良いと思う?前は白無垢だったから、ウエディングドレス着せたいんだよ」
「結婚できると思うなよ…?悟の本性を…知ってるな、ドン引きもしないか。女性遍歴でも教えてあげよ!私親切だから!!」
「あー、言えば?つーか前から俺のそういうの知ってっから、ドン引きも何もないよ?普通に『あ、うん…知ってるよ?』って反応されたし」
「もうしてたのか君」
「いや、あっちから『まあ五条さんの女遊び激しかったの知ってるし…』って、言わ…れた…………性欲凄いから愛人作ってとか、前言われたんだよ……そんなこと普通言う?凄くなるのは嫁だからなんだけど?」

ぶふう!!!と素だろう、夏油が吹き出してゲラゲラと大笑いしている。
これが深夜枠だから成立するだろう下ネタ。これ絶対怒られるやつ、とリスナーも一緒に笑い出した。
確かにあの体格を見れば想像は出来る。しかし妻に言われたともうネタだろう。

「そういうの言うの止めな」
「あ?」
「彼女に関しての下ネタ禁止、わかった?」
「…………おう」
「では、次のコーナー」

あまりの切り替わりの速さに五条でさえもビビったのだろう。
元気のない声で返事をして、夏油はさっさと次のコーナーへ。
五条の前世の嫁に関するメールやメッセージは夏油が即座に判断してペイペイと読まないBOXに投げ込まれていく。いつもであれば面白半分に読み上げるが、今回はそんなことはぜったいにしないという強い意志を感じる。

「はいではまた来週〜。あ、今後彼女に関してのメッセージは厳選するからね猿共」
「すぐるぅ!?」

じゃらっじゃー。このラジオの提供は、とエンディング曲とともに流れる提供名。
いつもの事だがエンジンは全開、ノンストップ、SNSのトレンドは祓本のラジオが大半を占めた。
ついでに「夏油が何かに目覚めた」だの「夏油VS五条」だの「前世の嫁、これやばば?」と好き勝手に書かれている。まあ通常運転といえば通常運転だ。
普通に聞いていれば五条に言い寄られている女の子を不憫に思って庇うのかと思えば、そういう雰囲気ではない。
そしてラストで突然の「猿」発言。
ファンにしてみれば「さ、さる?」「猿、とは?」と混迷を極めたが、相方とその他の関係者は「あの野郎…!」と顔を青くしたり怒りで赤くしたりと忙しい。

「じゃあお疲れっしたー」

とラジオのスタッフたちと別れ、お笑いとしてのマネージャーの伊地知の運転する車に乗り込むと伊地知が「あ、あの…」と困った声で2人に呼びかける。

「社長から、夏油さんに電話があると思います……」
「私?悟じゃなくて?」
「お前ラスト猿って言っただろ。それだよそれ」
「えー?そんなことで?悟の下ネタだろ、怒られるなら」
「名前さんに怒られても社長に怒られる筋合いないわ。通常運転だもん俺」
「だもん言うな」

ピリリリリと夏油の電話がなり、ディスプレイを見れば「夜蛾社長」と名前が表示されている。
前に遊び半分で「脳筋社長」と入れたら鉄拳が飛んできたので、遊びでもやめた方がいいと学んで普通の名前になっている。ちなみに夏油が名前の連絡先を聞いて最初は普通に「名前ちゃん」となっていたが今現在は「姉さん」になっている。

「うげー」
「さらっと怒られておけよ。出ないと後の方が面倒だしな」
「悟に言われると……はい、もしもし」

ぐぉらー!すぐるー!!と野太い声が聞こえる。
社長が怒るもの仕方がない。と前世からの関係者は誰もが思うだろう。そうやって非呪術師を見下して死んでいったのだ。
怒られている夏油を横目に五条もスマホを取り出し、名前に「ラジオ終わったよ」とメッセージを送ろうとみると既に名前からメッセージが来ている。ラジオが始まる前にはなかったから、ラジオ中に送ってくれたのだろう。

『ああいう話はラジオでしないで』
怒ったキャラクターの画像

可愛い。そしてラジオを聞いてくれたのだろう。
すると今度は家入と庵からもメッセージが届いた。

『クズ』
煙草を吸っているキャラクター

『最低だなお前。名前泣かすなや』
睨みをきかせるキャラクター

うん?と思い、名前に「今1人?」と送れば「歌姫さんと硝子さんと一緒」とぽこんとメッセージが届いた。
大方その3人で飲み会でもしていたのだろう、その延長で庵あたりが「アイツラのラジオ聞いてみましょ」とつけたに違いない。
試しに家入に「名前さんの写真送って、今の写真」と送れば、数十秒後にポコンと画像が添付されてきた。
珍しい。と思って開けば、なぜか赤くペディキュアをした足の写真。
「なにこれ?」と送れば「名前さんの足。新作コスメ歌姫さんがもらって、名前さんに塗ってやったの。これならいいよって名前さんがな」と来た。

「なんで青…じゃなくて水色じゃないの?僕の色じゃないじゃん…」
「何その写真。あ、姉さんだろ、これ。赤いの映えるね」
「赤じゃダメだろ」
「そう?似合ってるけど。それ私のにも送って」
「い や だ ね」
「ケチ。じゃあ硝子に強請ろ」
「なんで硝子だと思うんだよ」
「ここ見なよ、名前出てるだろ」

いつの間にか終わっていたお説教。夏油もいい大人なので終わらせた、に近いのだろう。
暫くすると夏油のスマホも音が鳴り、2人でのぞき込むと今度はお酒の缶で顔を隠して可愛い部屋着を着ている写真が送られてきた。

「え!?ちょ、これ……名前さんじゃないな、これ」
「え?」
「これ多分歌姫だよ。名前さん髪セットしないと此処の部分ウェーブするの、ないもん」
「……まって悟、なんで君そんなこと知ってんの?前の記憶でも姉さんそんな髪の癖なかったけど」
「今の名前さんの髪がそうなの」
「は?」
「あ?」
「君…姉さんと寝たのか?」
「髪乾かしてあげただけですー!そしたら本人が言ってたんですー!」
「伊地知、俳優の方のマネに連絡して。私と悟、殴り合いのあの映画2人で出るから」
「へ!?」
「何その話」

君は良いんだよ…映画でたっぷりと殴るから…となにも良くない話が勝手に進み始めた。

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