呪術 | ナノ
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「いいよな恵は」
「……なんですか」
「問答無用で名前さんに応援されて」
「五条さん俳優転向したらいいじゃないですか」
「それな」
「名前さんが担当になるかは知りませんが」
「…………かわいくねー」

名前さんに頼まれたから。と伏黒がジムでトレーニングをしているとドンと前に立ちはだかるようにして現れた五条。
前世からの付き合いで、言えば気心知れる間柄と言われるかもしれないが好きかどうかと聞かれれば「好き」ではない。
しかし一応は前世では教師という立場柄、指導もわるくはないはずだがスタート地点が明らかに違うので指導が指導にならない。
元から筋肉質でいい体格の五条と鍛えているとはいえ細身の伏黒。ベースが違いすぎて五条のトレーニングについて行くのがやっとだった。

「つーか、お前あの父親でなんでまたそんな細身なわけ?」
「知りませんよ」
「伏黒甚爾、元格闘家。現一般人のフリしたゲーノージン、カッコ仮。自分ん家のジム使って親父にトレーニング見てもらえよ」
「嫌です」
「まああの男の事だから何かと馬鹿にしてくるだろうしな」
「五条さんと一緒ですね」
「あ?」
「俺は別にいいですけど、五条さんこそいいんですか?俺に忍者最終ステージまで行かせて名前さんに応援してもらうんですよね?邪魔するなら帰ってください、名前さんにもそのように話しておくので」
「…かわいくねえ」
「五条さんに可愛いとか思ってもらわなくていいんで」

取引、というにはそんな仰々しいものではないが名前とは約束してある。
そもそもアイドル上がりの伏黒が最終ステージまで行くこと自体無理、とは言わないが望みが薄いのも事実。父親がアレで一時期そっちの方面に行くのではと噂されたこともあったが本人のみならず父親まで「ない」と明言していた。
父親曰く「才能がないからな、アレ」らしい。父親が強すぎるのだ。

「あれ、悟早速トレーニング付き合ってるんだ。健気だねえ」
「うっせ!」
「君もう少し名前ちゃんの前みたく猫被りなよ、受けが良くなるよ。や、伏黒くん」
「ども」
「後で七海と灰原も来るみたいだよ、よければ彼らにも相談したらどうかな。悟よりいいコーチになるよ」
「夏油さんは教えてくれないんですか?どちらかと言えば夏油さんの体型に憧れがあって」
「恵!?」
「ごめんね、私君にはなんにも思う所はないんだけど、君の父親大嫌いなんだ」


あっはは。笑う夏油ではあるが目は笑っていない。
以前番組の企画で元格闘家と夏油が戦うというもので、メッタメタに負けたのが伏黒甚爾相手だった。それ以降リベンジ!と冠して何回か企画があったが勝てたためしがなく、最近ではもう企画自体が起きなくなったわけだ。言えば「え?また夏油くん負けちゃうでしょ?」とお偉いさんが面と向かって言ってしまったのでその後が大変だったと伊地知が遠い目をして言っていた。

「あ、そういえば親父が忍者でるって言ってましたね」
「「は!?」」
「一般参加で」
「お前の様な一般人がいるか!!」
「な、なんで!?」
「賞金目当てらしいです。おふくろが洗濯機と冷蔵庫買い換えたいって言っていたらしくて」
「んなことしなくてもお前ん家金あるじゃん…」
「……そうか、ありがとう伏黒くん。私余計頑張らないとね……」
「情報提供したので報酬を」
「……いい性格してるね、君。まあ私も通年通りでは駄目だとわかったから、それはお礼を言うよ。まあ、私の助言なんて助言にもならないと思うけど、バランスだよ」
「バランス?」
「一部強化型よりバランスよく鍛えな。勿論体力も、食事に睡眠も。基礎だろ。共うかもしれないけどこの業界だと結構難しいだろ?まして当日風邪だ熱だなんて言ったら元も子もない。こういう時彼女か誰かいると楽だけど、そういう事に特化した人を雇うのも手だね。まあ今更って部分もあるけど」
「次回参加する時参考にします。五条さんよりマシなアドバイスありがとうございます」
「ははは、悟は名前ちゃんの事に思考が偏ってるからね。自分と同じベースで考えるのはやめた方が良いよ。名前ちゃんに“ありがとう”って言ってもらいたいなら。じゃあ私はこれで」

うっす。と軽く頭を下げて挨拶をする。
本当に伏黒恵自身は嫌いではないのだろう、夏油はひらひらと手を振って自分が使いたい機材に脚を向けていた。
しかしその反対に五条はギリギリと面白くなさそうに奥歯で音を立てている。「面白くない」と顔に出ているのだから面白くなさそう、ではなく面白くないのだろう。

「恵、この忍者はチーム戦じゃない」
「なんですかいきなり」
「個人戦だ」
「そうですね」
「だから俺はお前に指導するんだからな」
「いや、それならもういいです。まったく参考にならないので。まだ夏油さんの方がマシです本当」
「はあ!?」
「そもそも名前さんだって期待してないですよ、五条さんに」
「…それ、マジ?」
「名前さんだって言えば前世の記憶持ちですよ?五条さんがどんな人間かなんて知ってるじゃないですか」

うぐ。と声を詰まらせる五条。
確かにそうである。しかしながら応援してもらえるのならば、教えるのが苦手だがやるしかないと思ってこうしているのも事実。期待されていないから、と諦めるにはあまりに惜しい、気がする。とトレーニングを再開する伏黒の隣でうんうん悩み始めた。
名前の目論見は五条だってわかっている。しかし伏黒に面と向かって「名前さんは五条さんに期待していない」と言われるのは想定外だ。
まあ名前の事なので「まあ、五条さんですから。気にしてません」と言われるのも想像できる。
しかし名前は約束したのだ。応援する、と。そうしてもらうには最終ステージの前まではクリアしてもらわないと、そこまでの応援は欲しい。最終ステージに残れなくても、そこまでは名前は会場に居るのだ。

「やだ!」
「は?」
「やだ!恵、お前ちゃんと最終ステージまで残れ!そうしないと応援してもらえないじゃん!」
「個人戦なので、俺は俺なりに努力して今トレーニングしています。邪魔しないでください」
「可愛くない!」

大体恵は下半身もっと鍛えろよ、今回のパターンだと下半身強化した方がいい障害多いからな!!と怒って一度姿を消したが、再度戻ってきて「一緒のトレーニングしろ」と詰め寄った。

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