呪術 | ナノ
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「五条先生は傑の事知っていますか?」
「………知ってるよ。親友だからね」
「家入先生に聞いたんですけど、傑は今どこにいるんですか?いないって言われて」
「傑は僕が………」
「?」
「傑は、僕が押しつけた仕事で海外にいるよ!」

そうなんですか。と名前は素直に頷いた。
他の1年は任務に向かい、名前だけが残った。2年も居るが今は一応授業中である。
それ以外であれば2年の誰かが名前を誘って外で訓練したりする。
学生は任務ではあるが五条にはない。そして名前は高専をでる事が出来ない。
「じゃ、名前さんは僕をおしゃべりしよっか!」という事で教卓に肘をついてルンルン気分で名前に「何か知りたいことない?」と振った事だった。

「大人になった傑に会いたかったな」
「僕がいるじゃーん」
「でも、先生の事知らないし…知ってるの、夜蛾先生だけだし…」
「歌姫は?」
「庵先輩ですか?」
「そ。仲良かったじゃん?」
「庵先輩いるんですか?」
「居るよ。京都だけど、僕と一緒で教師してんの」
「写真、見たいです」
「歌姫僕に写真撮らせてくれないから無いんだ」
「そうですか…」

名前用に用意した机と椅子。そこに座って名前は五条の返答にしょぼんとして背を丸めた。
確かに名前が15歳の時の知り合いといえば学長の夜蛾と庵歌姫、冥冥あたりだろう。他の上級生は五条であっても思い出せない。
名前と五条や家入が出会うのはその次の年、七海や灰原はまた次の年だ。
名前が16か17、もしくは18くらいであれば七海や伊地知と一緒にいても心配はないが15では高専から出すには心配なのだ。
それが子供だからではなく、夏油傑の姉であるから、なのだが。

「じゃあ、傑の写真は、ありますか?」
「ない!」
「そうですか…じゃあ、何がありますか?」
「んー、桃鉄でもする?」
「そういうのは…いいです」
「えー?」
「五条先生は本当に先生ですか?」
「先生だよ!」

疑いの眼差し。
最初こそ「先生」と言っていたが今となってはそれも「本当に、先生なの?」という疑問が入っているのが五条でもわかる。
2年担任の日下部の方が先生って感じがするよね、と真希に言っていたことも知っている。真希にしてみれば「どっちもどっち。まあ確かに日下部の方がマシかもな、悟より」と笑っていた事も。

「………私、まだ戻らないんでしょうか」
「もう数日じゃない?呪い自体は弱いから。ま、ちょっと名前さんには相性が悪かったかな」
「私、弱いくせに呪術師していましたか?」
「いや?名前さんはちゃんと強くてしっかりした呪術師だよ」
「でも、弱い呪いにって」
「そーれーはー、名前さんが悠仁庇ったからね!悠仁も弱くないんだけど、名前さん優しいから」

上がっていた目線がまた下がる。
現時点で名前は呪術師としての能力は低い。言えばつい最近までごく一般的な家庭からスカウト出来た学生だ。
伏黒や釘崎の様に家系でもなければ虎杖の様に天性のものを持っていたわけでもない。
弟の傑と同じではあるが、そこには男女の差というものがある。体格だって筋力だって名前は傑に勝つ部分はない。

「名前さん、傑と仲良いよね」
「傑は…同じ世界が見えてた仲間だから。恐いのも痛いのも、傑だけがわかってくれた」
「ふーん」
「でも、傑とは術式が違うから、傑の辛いのはわかってあげられなくて。傑は強いからって、甘えてた」

ん?と頬杖をついて聞いていた頭を五条は持ち上げる。
この時点で名前は傑の苦悩は知らないはずである。もし仮に違う意味での苦悩であるなら別だが、五条の知る限りこの時点で傑の苦悩はない。

「気づいて、あげられなかった」
「名前さん」
「…?」
「戻ってきはじめてるね」
「もどって、ます?」
「多分記憶としては高専の上の学年辺りまで。まあ傑の事に関して、だけど」
「…そう、です?」
「七海。灰原は?」
「ななみさん、は昨日会いました。優しい人で…はいばら、くんは…」
「うん」
「死んじゃった……でも、私は、いなく、て?……あれ?」
「はーい!オッケー!よし、じゃあ今から僕と手合せタイム!着替えて道場に集合!」
「え」
「早く早く!そうじゃないと着替えられないぞ!」

パンパン!と手を叩いて名前を急かす。
運動着は家入が適当に用意したモノがあるから昨日も着ていたし、乾燥機もあるから問題はない。
名前は急いで教室を走り出して寮に行ったのだろう。名前の為のロッカーまでは用意していない。それを確認してから五条は教室を出て道場に向かう。
このままでもいいが一応は運動に適した服が良いだろう。
さて、目隠しはどうするか。うーんと悩むがとりあえずそのままにしておく。
道場について数分。女の子は準備に時間がかかるね、と思っているとバタバタと足音が聞こえ、ガラリとドアが開いた。

「遅いよー」
「す、すみません…急いだんですけど」
「まあいいや。組手やるよ」
「え、あの…私、そんな、無理です…」
「は?」
「できません、まだ指導してもらった事な…い?」
「んー。でもまあ、ほら、やったら思い出すだろうし」
「え…そんなのでいいんですか?」
「じゃ、始めるよー」
「うわあああ」

手加減は勿論の事。
しかしそれでも五条の動きに反応して避ける受けるは出来ている。悲鳴のような声をあげるのだけは理解はできないが。それでも名前は高専で居た時よりも上になっていると五条は思った。名前が高専時代はここまで動くのは難しい。
共に稽古をつける様になって名前の動きは飛躍したのを覚えているからだ。

「痛!」
「え、痛かった?」
「は、はい…」
「そっか…痛かったか」
「?」
「名前さん、高専卒業するあたりから痛覚が鈍くなっててさ、そっか、今痛いんだ」
「だって、傑が……どう、したんだっけ?」
「隙あり」
「うわあ!」

名前の頭を上から掴むように手を乗せた五条。
小さな声で「小さいね」と言えば「恐い事言わないでください!!」と何かを勘違いした名前が今にも泣きそうな声で叫んだ。

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