呪術 | ナノ
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「あれ?君新しい子?珍しいね」
「初めまして。バイトで雑務をしています」
「そう、頑張ってね」
「オイ傑、お前…さ………」
「あ」
「え!?なんで!?なんでここにいんの!?」
「悟の知り合い?新しいバイトの子。雑用するんだって」
「僕聞いてない!!」
「ボク!?」
「社長から聞いてないの?昨日から来てるの」
「知らないー!!!え、うそ、まじ?」

うわー!と大きな男が蹲って喚く。
五条悟が「僕」と言って猫を被る相手は夏油傑の心当たりは一つだ。

「もしかして、夏油名前ちゃん?」
「え、あ、はい。夏油名前です。夏油さん?」
「同じ苗字同士だし、下の名前で呼んでいいかな」
「え、あ、は」
「駄目!!」
「いいですよ」
「駄目だよ!大体お前本人の了解なくもうすでに名前ちゃんとか言ってんじゃん!」
「駄目なの?どうして?」
「駄目だよ!だってコイツ女癖悪いもん!!」
「五条さんもそうでしょ?」
「違うし!!」
「違わないね。この前のアイドルの」
「あーーー!!!!てめえ傑嘘ついてんじゃねえよ!」
「私の事は気軽に傑さんとか、あ、傑お兄さんでもいいよ」
「むしろお前が僕の事義兄さんて呼べよ!!」
「あ?」
「このやり取りまだ続く?これ運び終わったら帰っていいって言われてるの」
「君マイペースだね」

名前の持つ段ボール箱には書類のファイルが数冊刺さっている。そのファイルには伏黒を筆頭とするユニットの名前が貼られた資料。
確かあのユニットは写真集の話がでていたからその打ち合わせの資料なのだろう。
これで終わり、というのだから彼女はそれまでここで色々と雑務に追われていたという事だ。

「君芸能人志望じゃないんだね、そういえば」
「私は別に。今学業を優先したいので」
「学生さん?」
「はい」
「悟、君学生に手出すとか…ないわ、ないない。このクズ」
「出してねーよ!出すわけないじゃん!!」
「困ったら私に相談しな?名前ちゃん」
「そうですね、傑お兄さん」
「あ、それいいね。お兄ちゃんって言って」
「お兄ちゃん。ですか?」
「あーいいね」
「傑の兄貴」
「それはちょっと違うかな」
「傑にい」
「や め て 。傑ばっかりズルい」
「悟兄さん」
「悟って呼んで!」
「じゃあこれ置いたら私帰るね。お疲れ様でした」
「おつかれ」
「やだー!!」

バイバイ。とにこやかにスルーする名前に思わず夏油は笑う。
夏油以上に五条の顔はいいし、夏油も「悟は顔が良いから」と思っている。
実際女性であれば五条の方に寄る方が多いし、性格さえ目をつぶれば最高だろう。日本人離れしたルックスにスタイル、性格はドが付くほどクズではあるが声も悪くない。
笑いかければ大抵の女はコロっといくだろう。
しかしこの子はそれがない。ない、というより興味自体がないと言っていいほどだ。
人気絶頂、というには少し謙遜をするが、それでも人気のあるお笑いコンビ。
女性誌にだってモデルとして表紙を飾ったこともある五条悟を「あはは」と笑うように躱すのだから。

「凄いね、前世の嫁」
「名前さーん…」
「君をこんな風にあしらうなんて。本当に嫁か?」
「うるせー!」
「でも可愛いね」
「だろ!!でもお前狙うなよ」
「狙わないよ。いくらなんでも年が離れてるし、私の可愛いというのは素直だねって意味」
「前は年上だったんだけどな。あー…社長黙ってたな」
「今度は年下か。捕まるなよ」
「んな事しねーよ!」

へえ。と夏油は意外そうに五条を見る。
少しバツの悪そうな顔をしているのはかなり珍しいし、あの五条悟が、とも思う。
女遊びはどちらが、ともいえないくらい激しい自覚はお互いある。言えば女が寄ってくるのだから相手をしていた、という言い訳ができそうなくらいには相手に困ったことはない。
しかしそれがいつしかパタリと止んだのはいつの頃だったか。今では夏油の方が言われる。ちなみに先ほどのは五条を揶揄っただけで、嘘だ。

「あっちは別にって感じだね、意外」
「あ?」
「君の方がお熱なんだなって」
「ラジオでも言ったじゃん」
「まさか僕とか言うとは思わなった。猫被りもほどほどにね」
「被ってねーよ」
「被ってるね。まあ私の知ったことじゃないけど」

素行が悪くて「問題コンビ!」と悪名が付いた時期もあったが、それもキャラクター性だと思えば。何事も設定は大切だという事だ。おかげで体をはる仕事も態度が悪くても「祓ったれだからな」という一言で済まされてしまう。
まあそのうちの1人が「前世の嫁」だの「見つかったから超大切にする」とか言い始めたらキャラクターがぶれてしまうのだが、まあそれも面白いとファンは喜んでいる、らしい。特に探している時には匂わせというか、自分がそうだと言わんばかりの投稿が多くてワンコーナー出来ていたわけだ。
まあ当の五条に関しては「ちげえ」「んなことしねえ」「下手くそ」と言っていたわけだが。まあ他にも五条を狙う女優などからはアピールが凄かった。

「あれ?まだいる。暇なの?」
「名前さん!」
「これあげる。お仕事頑張ってね」
「…うん!」
「げ…傑兄さんにも、どうぞ」
「ありがとう名前ちゃん」
「そのピアス、拡張ですか?」
「ん?ああ、そうだよ。ピアス興味あるの?」
「少し」
「ダメダメ。安定なかなかしないから、どうしてもって言うなら学校卒業してからにしな、僕が開けてあげるから」
「今回は大丈夫かもしれない」
「腫れて膿んで大変だったでしょ。駄目」
「保護者みたいだね」
「旦那ですー」
「元、ね。今は他人」
「え」
「あ、友達?知り合い?バイト先の人?」
「こ、こいびとがいい…な」
「えー、やだ。それでは失礼します、お疲れ様でした」
「お疲れー。気を付けて帰るんだよ」

はーい。と五条の上着のポケットを引っ張って飴を入れ、夏油には手渡し、小さく手を振って名前は2人に背を向けて歩き出し、廊下の角を曲がって姿が見えなくなった。
夏油の掌にある飴を五条は強奪し、自分の上着のポケットに突っ込む。
お前は子供か。と言いたげな目で五条を見た夏油だが、五条は五条で「お前甘いもん嫌いじゃん」という目で見ていた。

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