呪術 | ナノ
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「名前さん」
「へ……え、あ、もしかして」

恵くん?と小さな声で名前が言えば、目の前の青年はこくんと頷いた。
現在伏黒恵は当時同級生だった3人でアイドルユニットを組んでマルチに活動をしている。
3人の特色をよく理解しているマネージャーがいるのか、人気が出るであろう分野で各々が活動しつつもしっかりとユニットとしての活動もしている。メインターゲットはティーンとしているので、特に子供からの人気が高い。
中でも伏黒恵はモデルを中心に活動しており、女性人気が高く、女性誌のモデルも務めている。いわば女性憧れの男性像でもある。

「社長に言われて迎えに来ました」

『明日13:00に△〇駅の南口改札で待ってて。迎え行かせるから』
『どういうこと?』
『社長…学長っていうと、名前さんわかるでしょ?バレちゃって、連れて来いって言われたんだけど、僕その日収録があってさ。代わりの人間行かせるから社長に会ってくれない?』
『なんで?』
『今の事務所、知ってる通り前呪術師してた人間の集まりでさ。記憶があるなら連れて来いって』
『□□駅じゃダメ?』
『どうかしたの?』
『バイトの近くがそこの駅なの』
『そういう事、了解』
というやり取りが昨夜。明日は講義がない日で午前中はバイトの日だった。
知り合って思い出したのも何かの縁だし、仕方がないと諦めが付いたときにきた相談に名前は思わず笑って五条とやり取りをしていた。
しかし今回に限ってはまさか芸能人をパシリに使うとは思っておらず、名前は驚いた。

「有名人なのに、大丈夫?」
「大丈夫です。名前さん、若いですね」
「わ……恵くんは大人だね」
「今21です」
「私今18だよ。恵く…恵さん?伏黒さん?」
「前と同じでいいです。このICカード使ってください、交通費は事務所持ちなので」

はい。と渡された交通系のICカードを渡されて「ついてきてください」と言われるままカードをタッチしてついて行く。
今日はお休み?私講義がお休みでバイト行ってたの。と軽く話せば「俺は今日休みだったんですが名前さんがいるって聞いてきました」とさらりと言う。
確かに彼はそういう子だった。
雑談しつつ電車で移動し、改札をぬけ、ついて行けば大きなビル。
名前は社員証などはないので伏黒が手続きをしてくれて「来客」と抱えれたネームタグをひっかけてついて行く。

「社長、名前さんです」
「入れ」

ビルのとある階のとある部屋。
ドアには社長室と書かれたプレートがあって伏黒はそのドアをノックして名前を連れて入る。
そこには昔懐かしい夜蛾正道の姿がある。相変わらず厳つい見た目にサングラスで素性を知らなければ怖い人だ。

「久しぶりだな名前」
「は、はい。がく…しゃ、ちょう?さん?」
「気軽に夜蛾さんとでも呼ぶと言い。所属しているわけではないんだ」
「社長、虎杖とか釘崎に連絡してもいいですか」
「ああ連絡してやってくれ。悪いがついでに名前の飲み物でも出してくれるように頼んでくれ」

少し失礼します。と伏黒が退室して夜蛾にソファに座るように促される。
座ったソファは座り心地がよく、名前でもいいものだというのが分かる品だ。艶も厭らしさがなく、上品で触り心地も合皮とは比べ物にならない。

「悟から聞いた。まったく、記憶があるなら言えと言ってあったんだが」
「どういうことですか?」
「所属している面々を見ればわかるだろうが以前呪術師として活動していた者ばかりだ。まあ傑は今の時点では記憶はないが悟にはある。他の人間はほぼ記憶があるのが今の事務所の状態だ。悟が名前を探しているのは知っていたし、ラジオなどでも公言していたし私も黙認していた。ただ、記憶があるなら言えとは言っていた」
「大事なことなので2回…」
「そうだ。今何歳だ」
「18です」
「就職は決まっているか?」
「大学生なので…あ、でも今バイトしています」
「名前が嫌でなければここで芸能活動をしてもいい」
「へ」
「勿論その他の業務もある。就職に困ったら連絡をしなさい」

言えば居場所のない人間を受け入れよう、ではないが前世の縁がある人間を受け入れてくれる所なのだ。それこそ裏舞台にいた人間を表舞台の華やかな世界に、という思いがあるのかもしれない。
あとこれは名前の個人的見解だが、名前の知る呪術師の大半は顔がいいのでそれもあるのかも。と勝手に思っていた。

「あ、あの、バイトって、募集していますか?」
「バイト?」
「はい。今のところ悪くはないんですけど、お客さんの層があまり良くなくて…お店の人は良くしてくれるんですけど…変なお客さんに、ちょっと目をつけられたみたいで」
「わかった。大学生のバイトという事も考慮すると時間が限られるから期待の金額がだせるかは相談してみよう。バイトよりも芸能界はどうだ?そちらの方がいいんじゃないか?問題児コンビ以外は俳優もしているぞ」
「私はそういうのは……」
「無理強いはしない。ここで茶でも飲んだら自由に見学すればいい、伏黒は本来休みだったが名前のために来てくれた。彼と一緒なら大丈夫だろう。伊地知にも会うと良い」

ノック音がして伏黒がお茶を持ってきたので、今度は3人で少し話す。
最初は小さな事務所だったが祓ったれ本舗や七海などがテレビに出始めると次々と人が集まり始めたらしい。その話では七海も初期から居る人間だというのに名前が意外だった。確かに名前がファンで写真集も出るくらいなのだから前から居る人間といえばそうなのだが。

「そういえば名前は七海のファンだそうだな」
「え!」
「五条さんが七海さんに写真集にサインさせてましたね」
「え!?」
「名前さんにあげるって猫被ってましたよ、自分の事僕とか言って」

そ、そうなの?と名前は驚くしかできない。
まあ確かに、名前は五条との電話でその事を言った記憶はある。
中学の時からファンで、少ないお小遣いをためて写真集を買ったし出ていたドラマは出来る範囲で観ていた。役どころとしては若い女性に人気が出るような甘い立ち位置ではなく、それこそティーンに向けた恋愛もののわき役でしかないが、それでも好きで観ていた。どちらかと言えば可愛らしい顔立ちの灰原の方が主役で、彼のファンの友人と恋愛映画を観に行ったこともあった。

「今思えば、ここの事務所関係者のでるドラマとかよく観てた。前の影響だー」
「名前は七海を可愛がっていたからな。伏黒、名前を少し案内してやれ」
「はい。勧誘は済みましたか?」
「本人の意思が大切だからな、就職に困ったらおいでとは言ってある。ああ、それとバイト希望があるらしい」
「バイト希望…!今度俺ら写真集出すので、その手伝いとか」
「えっ」
「悟が写真集出したいとか言っていたのは名前の影響か…前も話があったが『俺ら別に顔で売ってるわけじゃないんで』と言っていてな」
「まあ五条さんも夏油さんも顔は良いですからね」
「……でも、祓ったれ本舗人気なのに、私どうして知らないんだろう。というか、興味ないんだろ」
「「…………」」

言えば人気のあるお笑いコンビだ。お笑いコンテストでも優勝しているし女性誌のモデルもしているしCMにも出ている。
それに対しての答えが2人には思い当たるが、名前本人に言っていいものか黙るしかなかった。

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